愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

とってもたまらん郵便博物館

先日郵便ポスト巡りをした勢いで、ロンドンのポスタルミュージアムに行ってきたらすごく楽しかった。実は子供の時になりたい職業の一つが郵便屋さんだった。

誰かが紙に書いたメッセージが、どんなに遠くからでも届くというロマン、貼ってある切手の楽しさ。子供の頃は文通やら、もちろん切手収集もしていた。

そして何より小学校低学年の私がはまったのは、毎年100枚単位で父親に届く年賀状を、郵便番号、都道府県、名前やハガキの種類など、いろんなカテゴリー別に分類して統計を取るという作業…w

持っていた図鑑の中に、郵便列車というのがあって、中で電車に揺られながら郵便物の仕分けをする人たちの写真があり、なぜかそれにものすごく憧れたこともあった。流通物流運輸輸送全般が、どうも好きのようだ。

郵便博物館はキングスクロスまたはラッセルスクエアからちょっと歩いたところにある。隣には巨大な郵便局・配送センターもあって、巨大な郵便トレーラーが出入りしていて、こういうのが好きなお子様(大人も)にはたまらないロケーションでもある。

Mail Railに乗れてたまらん

この博物館の目玉は、ロンドンの地下を走っていた郵便用の地下鉄、Mail Railに乗れること。

今に限らずロンドンの渋滞は昔からすごかったので、郵便物を運ぶにもずいぶん時間がかかったらしい。そこで地下トンネルを作り、郵便物輸送専用の地下鉄を引いたのだそう。

1927年から2003年まで使われていたこの路線。今は運転手さんがいるが、当時は電気で走る無人列車だったそう。また郵便物や小包を載せる程度の大きさなので、列車はカプセルに乗ってるみたいにものすごく小さい。閉所恐怖症の人はかなり無理かもしれない(無理な人用に、別に様子を映像で見れるコーナーもちゃんと用意されている)。

パディントンからホワイトチャペルまで、地下路線は10キロちょっと。閉鎖後は、自転車専用道路にするとか、マッシュルーム栽培の場所にするなどの案もあったみたい。自転車の案はいいなと思ったけど、実際トンネルの中、防空壕並みに狭いし、何かあった時の非常口や通気口もないしちょっと無理かな〜残念。

電車に乗るのは正味15分ぐらい。実際にこの列車の運行に関わっていた人が解説してくれる音声ガイドがあり、途中集配所だったところなどに止まって、白い壁にプロジェクションする形で色々な説明があるのを、車内から見る。

ロンドンの博物館は、どこもプレゼンテーションが工夫されていていいなぁと思うのだが、ここもかなり良かった。

そして列車を降りた後にある展示も良い!!なんとこれ・・私が憧れていた郵便列車!!中に入ると実際の電車のようにガタガタと揺れる。揺れた状態で、実際に郵便物の仕分けをする。たまらん!!3回ぐらいやってしまった。

もちろん今はこういう仕事はバーコードだ何だで機械化されている。コンピューターが人間の仕事を奪う云々なんていうけれど、3回ぐらいやるのは楽しいが、やはりこういう仕事を人間が電車に揺られて一日中やってた時代があったのかと思うと、それもゲンナリである。

ふた昔前のウルトラマンとかに出てきそうな、レバーやスイッチを押して電車を操作する司令塔のシュミレーションなどもある。その時々の技術で、効率的に荷物を郵送することを考えたエンジニアリングの世界が色々垣間見れて、もうたまらん。

いろんなポストが見れてたまらん

ロンドンの道端に立っているとつい確認してしまうようになった郵便ポストだが、ここでもいろんな異形・レアなポストを見ることができる。

郵便制度が始まったのはビクトリア時代。最初のポストは赤ではなく緑だったらしい。見つけづらかったり何だったりで、のちに赤に塗り替えられたんだそう。

戦争と郵便の展示もある。郵便局員も動員され、前線で戦った人達もいる。また街が爆撃にあっても、インフラだけは保守しようと、被害を受けた郵便ポストに投函された手紙を救出したり、道端に急作りのテントの郵便局を開設したり、という地道な努力が行われていたそうだ。爆撃を受けた後も、何時間以内に復旧する、というガイドラインというか目標があったらしい。

郵便の他に、電信系も郵便局の管轄だったので、そちらも同様とのこと。

第一次大戦はもう少し「のんびり」していて、郵便で前線の家族に焼いたケーキを送ったり、色々している。それも1−2日で着くようになっていたという。

郵便、電信電話、鉄道といったインフラは戦争災害があってもライフラインとして継続させないといけない、そういえば私の祖母も戦争中交換手(の教官)なんかをやっていたそうだ。原爆があったあとも電車が動いていたというのも思い出した。どちら側だったにせよ、そうやってインフラを守っている人達がいるということなんだよな。

エアメール用のポストは青。あとポストによっては、上にこうやってサインみたいなのがついているのもある。郵便局はこっちです、という矢印だったり。

こちらは変わり種、切手販売機とポストが一緒になっているもの。

横から見るとこんな感じ。

郵便ポストが建てられた時代は、ロイヤル・サイファというその当時の王様女王様の印で見分けることができるけれど、スコットランドのポストは、エリザベス2世のマークが E II R となっていないんだそう。

これはなぜかというと、イギリスではエリザベスは2世だけれど、1558年から1603年まで在位したエリザベス1世スコットランドは統治していないため、スコットランドにとっては今のエリザベス女王が、初めてのエリザベスだから・・・なんだそう。

そんなこんなで、スコットランドではEIIRのマークがついている郵便ポストの破壊が続いたので、スコットランドの王冠のデザインに変えたんだとか。ヒー。

郵便ポスト一つにしても色々ありますねぇ。このくだりはWikipediaのエントリーにもなっていた。

en.wikipedia.org

そしてこれ・・・!在位が1年に満たなかったため、存在そのものがレアアイテムなエドワード8世の郵便ポスト。ちょっとズルだけどここで見られたぞー!

シンプソン夫人との「王冠をかけた恋」なんてもてはやされた話については、まあそんなキレイなお話でもなかったことについては、こちらもどうぞ⬇︎

marichan.hatenablog.com

こちらは黄金のポスト。ロンドンオリンピックで金メダルをとった選手の地元のポストが金色に塗られている。

さらに変わり種として、外に設置されている、電話ボックスと郵便ポスト、切手販売機が一緒になったもの。実際のところ郵便ポストとしてはキャパが小さすぎ、電話する時に切手販売機がガチャガチャうるさいなど色々問題あり広まらなかったみたい。

他にもたまらん

写真は郵便ポストの部分ばかり撮ってしまったが、他にも良展示がたくさんあった。

郵便が始まる以前の民間による郵便サービスや、ハイウェイマンと呼ばれる盗賊の話、ロイヤルメールのロゴデザインやブランディングの話、PR (Public Relations)という概念の導入の話。ターバンを巻いているため、制帽がかぶれないという理由から最初は採用されなかったシーク教徒の話。

カプセルに手紙を入れて、空気圧で反対側に送ってメッセージをやりとりする昔のシステム(あれなんて呼ぶんだっけ?)もあって、子供は多分そこに20分ぐらいは止まっていたと思う。反対側にいる知らない子たちとメッセージのやりとりを延々やっていた。そりゃ面白いよねw

そして、植民地時代のインドから送られてきた手紙の数々。兵士として駐屯して、日々のことを家族に報告するものもあれば、昇進を口約束していた上司が国に帰ってしまい、自分のキャリアが絶たれたことを延々恨みがましくその上司に伝える手紙など・・・。こういうのも、メールやメッセンジャーの時代になって、将来どういう形で保存展示されるようになるんだろうか。

この博物館、開館してまだそれほど経っていない比較的新しい博物館。無料の博物館も多いロンドンで、有料の博物館ではあるけれど、個人的にはとても気に入った。そして何より、久しぶりにちゃんと切手のデザインからレターセットから選んで、誰かにお手紙を書いて送りたくなった。

www.postalmuseum.org