愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

国立公文書館で、王様の書類に触る

週末、イギリスの重要書類や古文書などが保管されているナショナル・アーカイブ国立公文書館)で子供向けのイベントがあったので行ってみました。

ロンドン南西、キュー・ガーデンという広大で美しい庭園も近くにあるエリアの、奥まったところにあるこの建物。

ここにはマグナ・カルタなど、それこそ中世の時代から現代まで、さまざまな文書が保管されています。一般の人はそんなに足を運ぶような感じの場所じゃないのかな~と思っていたのですが、それがどうして、カフェや売店、ピクニックエリアも充実、一般にもずいぶんとオープンな場所になっています。本当に調べものをしに来ている人だけとは思えない感じで、家族連れをはじめ色んな人が来ていました。

講演などのイベント、展示などもずいぶんやっていて、7月にはモンティ・パイソンの元キャストメンバーで、旅行ドキュメンタリーなども多く手掛けているマイケル・ペイリントークショーなどもあったそうですよ。行きたかったなあ。

ここでは定期的にTime Travel Clubという子供むけのアクティビティも色々開催されています。今回行ったのはイギリスの中世に関するイベント。

建物に入っていくと、中世のコスチュームに着替えられる仮装コーナーがあったり、紙でできた剣や王冠をデコレーションするクラフトテーブルや、中世のフォントを書いてみよう!的なお習字コーナーがあったり・・うーむ随分地味なイベントじゃないかこれは・・とちょっとガッカリしたんですが。

別の部屋でやっていた、「ドゥームズデイ・ブックを読み解いてみよう!」というアクティビティがすごかった!!

ドゥームズデイ・ブック」とは、フランスからやってきてイングランドを制服した王様ウィリアム1世の命令で、1085年に作られた土地台帳のこと。イギリス各地の資産がしっかり調べ上げられ、記録されています。この情報をもとに課税が行われたとか。日本だったら太閤検地かな。

とはいえ、本物のドゥームズデイ・ブックを見せてもらうことはできないのですが(何十億とかものすごい資産価値があるんだそう)、まずは800年ほど前の土地の何かに関する合意書を見せてもらいました。

これ、羊皮紙に書かれています。

子供にレクチャーしてくれた担当の人がとても上手で、子供をまずはカーペットに座らせ、こういった文書の写真をみんなに配り、これ、どんなことが書いてあるんだと思う?何語で書いてあると思う?などと色々ディスカッション。

そう、これ、ラテン語で書かれているのです。

さらにドゥームズデイ・ブックでは、大量の情報を効率的に記録するため、ラテン語のスペルでも省略されているものが多いらしい。

それを少しでも読めるようにと、ラテン語の数字の読み方、単語の意味当て(土地、豚、農民など)クイズをした後、クイズの答えをもとに、ドゥームズデイ・ブックの一部をみんなで読んでいきました。

今のチェルシーのエリアの地主の名前や、小作人の数、豚が何匹、農具の数など・・意外と読める!これはすごい!

最後には、ロイヤル・チャーターという王様が作成した文書も見せてもらいました。

こういった書類はうやうやしく箱に入っていて、ガラガラとワゴンに入れて運ばれてきます。これはかなり貴重なものらしく、子供向けのレクチャーにこんなものを使うなんて!とちょっと反対にあったらしいのですが、担当者の人が頑張って借りてきたとのこと。

小さいさんが箱を開けさせてもらいました!

中身はこんなの、じゃじゃーん!王様の印章です。エドワード1世のもの。在位は1272年から1307年ですってよ!一体何時代?!と思えば鎌倉時代元寇の頃ですって。そう考えるとそんなに古く感じない・・?!いや十分古いです。

そんなに古いのに、羊皮紙の部分はかなりパリッとキレイで新品のよう。触るのも素手でした。両端に置いてある小さな白い布袋のようなものと、数珠みたいなものは、紙を広げるための重りです。

文書に対して印章の大きさがすごい。蝋を溶かして、型を押して作ったものですが、昔は手紙の封をするためでなく、こうやって署名の代わりに使われていたのだそう。

いやー、意外にも面白かったこのイベント。思いがけず貴重なものを見せてもらえました。そして、子供向けのプログラムが結構上手にデザインされていることにも関心。

担当者のお姉さんは子供に上手に質問し、ラテン語解読クイズの答え合わせも、答えが実は部屋の壁のあちこちに貼ってあり子供達がわーっと歩き回って確認できるようにしてあったり、お姉さんが解読した文章の間違い探しをやったりと工夫がしてありました。

小さいさんもイギリスに来てから随分歴史オタクになり、マグナカルタが作られた背景についても一生懸命説明していましたが、負けず劣らず他の子供達も、随分イギリスの歴史に詳しかったのにも感心しました。

しかし何より、こうやって色々なヒストリアンの人達が実際に仕事をしている場を見ることもできたのも良かったです。クラフトテーブルを担当していたおじさんは、実は印章の専門家だったり。何か歴史の専門家というと、学校の先生とか歴史学者とか、なんとなく活躍の場が限られてしまうような気もしていましたが、ここの施設はなんというか、well fundedで、ちゃんとそういう人達がたくさん働いているのが良いなあ、と。

そしてこの建物には、マグナ・カルタドゥームズデイ・ブックなど、超貴重な文書が保管されているのですが、建物のどこに保管されているかは、実は職員でも知っている人は4人しかいないんですって!

世界各地の公文書館から寄贈された記念品も飾ってありました。これはアメリカの。

お役所仕事、的な表現にRed Tapeという言葉があるんですが、これは正真正銘、政府文書に結ばれていたRed Tape(笑)

日本の国立公文書館からは、造幣局が作った金閣寺のメダル、でした。そういえば今回、日本からの出張者的なグループも目撃したなあ。