愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ミラノ2:朝に晩餐

ミラノからロンドンに戻る最終日、朝から最後の晩餐を見に行った。

ダビンチの有名な絵は、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会、の横にある修道院の、食堂だった建物の壁に描かれている。見学は予約制になっていて、かの有名な壁画を見ることができる時間は15分のみとなっている。予約時には見学者全員の個人情報を求められ、チケットにもそれぞれの名前がちゃんと印刷されていて、なかなか細かくものものしい。

中に入る前に金属探知機を通り、衛生管理の厳しい食品工場かホコリを入れない半導体工場風に、2回ほど自動ドアで仕切られた違うエリアを通った。これで人の流れや外気との接触を管理していると思われる。

壁画に到達するまでのエリアには、教会の歴史についてのパネルが展示されている。そしてちょっと面白いのが、最後の晩餐の保存にはEataly (日本にもあるイタリア食材店)が一役買っているそうで、その紹介パネルもあった。晩餐だけに!

なんでも壁画を保存するために必要な、最新の空調システムの資金提供をしているらしい。

さて、肝心の晩餐・・じゃなくて壁画である。なぜか小さな壁画が、小さな建物に保存状態悪く残されているのだと勝手に想像していたのだが、実際の最後の晩餐や建物は随分大きかった。

もともと食堂の壁に描かれていたこの絵。昔は部屋に椅子やテーブルも置いてあり、多くの人が出たり入ったりしていたんだろう。しかし今は何もない、がらんどうである。

そんな空間に20人ぐらいが入って、皆色々な言葉でヒソヒソゴニョゴニョ話しながらダビンチの名作を見た。ヒソヒソ声が建物に静かにエコーして不思議な音になっている。ダビンチの時代の人達の声も、こんな感じで建物に響いていたんだろうかと考える。

最後の晩餐は、もうテレビで、映画で、本で、メディアで見たことある!と想像通りの最後の晩餐であった。

実はこの建物の反対側の壁にも別の画家の別の壁画がある。みんな最後の晩餐を見に来るので、随分古いものであるのにスルーされまくっている残念な壁画である。

ただやはりこの反対側の宗教画と比べると、ダビンチの壁画は構図がやはり秀逸というか、色々と想像をかきたてるものがある。それにシンプルでごてごてと色々描きこまれていないところが、逆に名人技だなと思ったりもする。

全部「ダビンチコード」のせいだと思うけど、やはりこの絵には何か隠された意味があるんではと、キリストと使徒たちのそれぞれのポーズを、15分間目を凝らして見続けた。

15分経つと、どこからか「15分経過したから速やかに退出するように」的なイタリア語のアナウンス(録音ではない)があり、出口専用の扉がスーッと開いた。ちょっと古いサイファイ映画の監獄か何かのようだ。

展示部屋を出ると、監視カメラの映像がモニターに沢山映し出されている、監視ルームみたいなのがあった。モニターの前には指令マイクみたいなものもにょきっと見えた。ここで係の人が見学者の動きを見張り、退出を促すようマイクでしゃべって、出口のボタンもきっとここで押したのだろう。いい仕事だな、となぜかふと思った。

壁画は何回か修復されており、修復がどのように行われたかの説明パネル、そして戦争中、この壁画の前に土嚢をびっしり積み上げ、足場を組んで保護していた時の写真も展示されていた。

この修道院、第二次大戦中、空爆の被害にあっている。しかしこの土嚢のおかげで、ダビンチの壁画は奇跡的に守れたんだそうだ。瓦礫の中に、土嚢の山や壁画の壁が残っている写真もあった。ちなみに空爆したのはイギリス軍である。そのことはなぜか説明には書かれていなかった。

教会の外には広場があり周囲のスペースも多少ゆったりしていてなかなか気持ちが良い空間だった。そして教会のほうから、ものすごいうねるような地響きのするようなパイプオルガンの音楽が流れてきた。引き込まれて入って行ったら、聖油の瓶を持ったおばさんがすごい勢いでやってきて、ビジターは入っちゃダメと扉を閉められてしまった。そうか守護聖人の日のミサだったんだな。