愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

生ポワロさん

名探偵ポワロとして有名な俳優、デビッド・スーシェのパフォーマンスをウェストエンドで見てきた。

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パフォーマンスというか、彼の演劇キャリアについてのトークショーみたいなもの。彼の長年の友人だというプロデューサーの人が司会となって、対談する形だった。

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子供の頃、NHKで放送されていた日本語吹き替えのポワロを見ていた自分が、ロンドンで舞台上にいるホンモノのポワロさんを見ているなんて、ものすごくシュールで不思議な気分。11歳の子供も、ロックダウン中にポワロのシリーズをほとんどだいぶ読み、ドラマシリーズも随分見たので、彼のトークも結構楽しんでいた模様。

ポワロのドラマは1989年から2013年まで、24年間にもわたって制作・放送されていたそう。私が子供の頃から始まり、そして私の子供が3歳になるまでポワロを演じてきたことになる。スーシェさん、御年75歳だそうで、自分の親と同世代ということにも今更気が付いた。しかし舞台ではしゃきっとした立ち回り、そんな年齢を感じさせない。そして彼の低い声の良く通ること(ドラマでのポワロは声が高いのだが、それはあくまで役作りをしたからで、実際の彼の声はとても低い!)。

これだけ長年ポワロを演じているので、デビッド・スーシェといえばポワロの印象しかない。イギリスの芸能・演劇好きではない限り、一般の人は彼が他にどんな作品に出演しているのか、あまり知らないんじゃないだろうか(ハリウッド映画に、悪役テロリスト役で出ているのは見たことある。「まあ、そのことは流しましょう」とご本人も言っていたw)。しかし彼はもともとシェークスピアの役者。そして実に素晴らしいメソッド・アクターでもある。この舞台は、ポワロの面白話だけにとどまらず、そんな彼のプロの役者としてのすばらしさをひしひしと感じさせるものだった。

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ポワロの他にも、舞台やテレビ、映画などで演じたサリエリフロイトシェークスピアに登場する様々な役柄。彼はかなり役作りのためにリサーチ、分析をする人のようで、役柄や作品そのものに関するエッセイを書いてしまうほど。ポワロを演じた時も、彼の普段の行動やこだわり(お茶には砂糖を何個入れるとか)もしっかり設定して臨んだそう。そうやってある程度計算して演じていると同時に、憑依型でもあるようで、ポワロから本来の自分に戻るために鏡の前で自分の名前や住所や個人情報を言って切り替えないといけなかったとか。

実際に小道具として使っていた杖を使って、彼の独特な歩き方やボディーランゲージ、声色に切り替えていく様子も披露してくれた。

そしてシェークスピアを舞台で演じるときの、セリフの言い回しや演じ方についても、様々な作品の一部を、実際に演じながらデモンストレーションしてくれたのは、まさにシェークスピアや演劇のマスタークラスといった所。これだけ沢山のセリフを普通に覚えているのもすごいけど、歌舞伎やお能のように、シェークスピアってある意味古典芸能なんだな、とふと思ったりもした。今回のステージのタイトルに通り、まさに「ポワロ以上」。

色々な意味で、ロンドンならではというか、ロンドンに住んでいる醍醐味を感じた経験でした。

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このショー、ロンドン以外にもあちこちで前からやっている。楽しいインタビューとして聞いたけど、舞台上で写真とか見せたりもするから、これ毎回同じ話してるんだろうし、どこまで台本なんだろう、ともふっと思ってしまったw

おまけ情報:スーシェさん、ポワロを演じる以前に、実は別の人がポワロを演じた作品に、なんとジャップ警部として出演している!YouTubeで探してみてみたけれど、なんだか変な感じですw