7月のことになるが、細野晴臣のロンドン公演に行ってきた。
私はYMOをリアルタイムで聞いていた世代からはちょっと外れるのだが、中学生の頃にクラスにYMOの面々の音楽を持ち込んだ子がいて、その影響で中高時代は「ちょっと上の世代」の音楽を一生懸命聴いていた。
特にその中でもハマったのは、世界の教授でもなく、おしゃれな幸宏さんでもなく、細野さんの音楽。特に将来に期待と不安がいっぱいだった受験生の頃には、布団の中で眠れずに、ウォークマンで Omni Sightseeing やら昔のアルバムトロピカル・ダンディーなどを繰り返し聴いていたものだった。
私が細野さんの音楽をどれほど聴き込んでいたか、その遍歴はここでは割愛するが、2011年YMOがサンフランシスコ公演をした時、会場から「細野さーん!」と黄色い声が飛んだと音楽ナタリーの記事にされた声の主、それは私(苦笑)息子が生まれたらハリー細野にちなんでハリソンと名付けようかと思っていた位なのだが、生まれたのは娘だったので断念した。
なにはともあれ、YMOの面々を生で見ることが出来たのはあれが最初で最後だったが、まさかあれから14年たって、また違う場所で細野さんのソロを生で聴く日が来ようとは。もうこんな機会もなかろうと、かなり奮発して、結構前の席のチケットを取った。
で、ここで細野さんのコンサートレポートが続くはずなのだが、前座で出てきたバンドCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョ・コ・パ・コ・チョ・コ・キン・キン)の演奏が妙に印象に残ってしまった。小学4年生で結成したバンド、いったん解散して2021年に再結成とのこと。
民族音楽的要素も取り入れた感じの、なんとも掴みどころのない電子音楽を演奏するバンド、といったら良いのだろうか、でもロンドンのステージでは舞台の前面中心にドラムセットとパーカッションが据えられていて、その横にベースとギター、そしてボーカルの人は舞台の隅っこでラップトップをいじりながらほにょほにょと歌っていた。
もしかしたらちょっと音響の問題があったのかなぁ、実は歌声も歌っている歌詞もあんまりハッキリ聞こえなかった、でも生のパーカッション、特にドラムセットじゃなくて一人で色々な小さな打楽器を担当している人がすごくいい感じで、初めて聴くとらえどころのない音楽に引き込まれていく感じであった。ちょっと打楽器の音がほかの音を凌駕していた感もあったかもしれない。
聴いていてまず頭をよぎったのは、みんな若いなあ、そして若者が行き着いたのがこういう感じの音楽だというのが面白いなあということだった(特に深い意味は無い)。バンドのメンバーはなんとなくみんな中学受験して進学校に進んだ感じの、結構ちゃんとした感じの日本の若モノっぽく見える。普通にIT企業でコード書いてそうな感じもある。佇まいが知り合いの大学生の剣道仲間にも似ている。ちょうど自分の子供がバンドやってたらこんな感じなのかなぁなどと年寄りくさいことも考えた。
そしたらなんのことはない、ベースの子は細野さんのお孫さんなんだそう。ベース担当というところもおじいちゃんと一緒ですね。そして細野さんは私の両親と同い年なのである。だから自分の子供がバンドやってたら・・というのもあながちはずれではなかった。
細野さんの孫のバンド・・ということで注目される部分もあるのかもしれないが、聴いている限りでは、ラップトップを眼の前にしたり、スティールパンを叩いたりしながらホニョホニョと歌っているボーカルの彼の意向が強く反映されたバンドなんじゃないかと思ったのだが、合ってますでしょうか(笑)そしてこの彼がすごく進学校にいそうな子に見えた。
実は前座がすごく長くて、会場が結構寒くて、途中でちょっと辛くなってしまった部分もあったのだが、彼らの音楽はホールでじっと座って聴く感じのものでもない気がする。出来たら立ってぼーっとゆらゆらしながら聴きたかったなあ。
コンサートの後で、YouTubeで見つけた彼らの録音を聴いてみたのだが、なぜだろうステージで聴いたのとは印象が全く違った。やっぱり録音のほうがデジタル感が強いからかな。ただこちらのほうが曲の輪郭ははっきりわかったので、もうちょっと予習してから彼らの音楽を生でちゃんと聴けばよかったかな、とも思った。ただ録音で聴く彼らの音楽のほうが、生で聴いた時の不思議みが半減してしまって、なんとなくおしゃれな店やレストランのBGMぽく感じてしまうのもなんだか不思議である。でもなんだかんだ言って最近はもっぱら彼らの音楽を聴いている。よく聴いているのは「ガンダーラ」と「空飛ぶ東京」。結構ハマる。この歳になっても新しい音楽に出会えるのは嬉しい。