愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

リトルハンプトンの怪文書


イギリスの海辺の小さな町で、住人たち宛にいきなり、目も当てられないような罵詈雑言を並べた誹謗中傷の手紙が届くようになり、町はてんやわんやの大騒ぎ。

容疑の目は、普段から口も態度も滅茶苦茶なアイルランド出身の戦争未亡人(新しい夫+連れ子つき)に向けられたのだが……。

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1920年代が舞台の話で、これ実話なんだそう。やってることや内容も、当時は封筒に入った紙だっただけで、ネット上の誹謗中傷とあまり変わらないなと思った。犯人がその手紙を書くに至った、屈折した理由や背景なんかも含めて。

リビア・コールマンが容疑者の隣人役を演じていて、安定の演技力なので見ていて安心する。破天荒な言動のせいで犯人に仕立て上げられてしまうアイルランドの未亡人、そして犯人を追いかける町の女性たちなど、他の登場人物もなかなか良い。

話の内容は、見ている途中ですぐ犯人が誰だか推測できてしまうので、サスペンスとしては微妙だが、役者のクオリティが高いので、そこだけでも観ていて良いな、と思えるものがイギリス映画には多い気もする。

登場人物の一人に婦警さんがいて、これも実在の人物らしい。今では当たり前にいる婦警さんだけど、彼女はイギリスで最初の女性警官だったそうで、作中では「Woman Police Officer」というなんだかすごい肩書きで呼ばれている。女性だからという理由で、署内ではずいぶんひどい扱いを受けている。そして、この役を演じているのはインド系の女優さん。でも、作中で彼女の人種が言及されたり差別の対象になることはない。あくまで女性だという理由でいびられている。

あと、アイルランドの未亡人の新しい夫はカリブ系の男性。50年ぐらい前のロンドンでさえ、ミックスレースの夫婦や子供は色々言われたそうだから、白人だらけの小さな町ではさらに大変なのでは?と思いながら見ていたけど、特にそういうことはなく、この映画では女性差別は描かれているけど、人種差別は全く描かれていない。

これは単にキャスティングに多様性を持たせただけなのかもしれないけれど、イギリスでシェイクスピアの舞台などを観ていると、男役を女がやったり、その逆もあったり、人種も性別もバラバラでも兄弟や双子役……ということがよくある。役者の本来の姿が配役を制限しない点も面白く見てきたので、この映画の配役も、なんとなく自分ではその延長線上のものとして受け取った。

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