ちょっと前に id:maiko1970eさんのブログでこんな記事を目にしてから、私の中で再燃してしまったMC Solaar熱。
おフランス屈指のラッパー、MC Solaar.
1998年の冬をおフランスで過ごした時、フランス人の友達に激しく激しくとても激しく勧められて買ったのが、MC Solaarのアルバム、Prose Combat でした。
- アーティスト: Mc Solaar
- 出版社/メーカー: Cohiba
- 発売日: 1994/05/31
- メディア: CD
- 購入: 1人
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友曰く、彼の詩がいい、そのメッセージがいいと。しかしフランス語など全くわからなかった私、ただただその響きの良さや、英語ではYeahだけどフランス語はウィーが砕けるとウェーになって、ウェーウェー言うのが面白いななどというレベルでしか聴いてこなかった・・。
でも最近になって、友といつも一緒にかけていたこの曲「La Concubine de l'Hémoglobine」の歌詞の英訳を初めて見て、その言葉の深さ、使い方、そして内容に今さらガッツーン!!!とやられました。
Mc Solaar - La concubine de l'hemoglobine (Eng subs)
Concubineと言うと英語でも妾とか側室、と言う意味がありますが、もう少し今風に言うと愛人、でしょうか??ヘモグロビンの愛人。血に飢えた愛人が銃を撃ち、貧しい人々が戦争に駆り出され、ベトナム戦争、天安門事件、韓国の政治犯の不当逮捕、ネオナチ・・と、どんどん破壊への道に進んでいく。
詩の内容もですが、繰り出される言葉の美しさ。彼はラップのことを「戦う散文」と表現していますが、時にはランボーが引用されていたり、実は知れば知るほど奥深かった・・。ああ今さら・・。
でも何より最後の彼の独白、また同じ過ちが繰り返されるんじゃないか、それが「怖い」、と最後にぽつり、と言うところが一番来ました。
寒々しくて、いつもなんだか薄暗い冬のフランスで、聴いていたこの曲。朝も暗い中で学校に向かう子供達、なんども飛び越えた電車の改札、お店で買ったノート、濃すぎて飲むたびにカフェインで震えたコーヒー、小さな村の道路にかかるイルミネーション、そして一家に一台あったミニテル(メールがチェックできるUnixみたいな端末・・今考えるとすごいけど、ガラパゴス度もすごい)。アルバムをかけるたびに蘇ってくる、どうでもいいような小さな風景。
今さらになって歌詞を見返してみたら、今の世界の状況が「怖い」と言う今の自分の気持ちにガシッとはまり、あの頃の世界と、今の世界の時空が自分の中でグワーンと不思議な形でつながったような気がする。
***
さてフランス語がわからないのに、うわーっという気持ちになって、日本語での歌詞を書いてみました。翻訳と言うよりは超訳です、しかも仏→英→日と間に英語が入っての翻訳、そしてオリジナルに完全に忠実では全然ないです。英訳ももともとそうでないらしいのを、さらに変えたりしたので、激しく伝言ゲーム風になっているかも。だらだら翻訳っぽくなく、日本語でも韻を踏めるようにできないか・・と文章をずいぶん変えてみたり・・・うわ、ラップって実は難しい、言葉をたくさん知っていないとできない。でもオリジナルの言葉を知らないからすごい間違ってるかもしれない、うわああそうなると恥ずかしいけど、注釈に色々言い訳を書いています。フランス語がわかる方、ぜひお手柔らかにツッコミを・・。
(タイトルも、id:fuku-taroさんの「この曲もえーやん」をなんとなくパクらせていただきました・・!!)
放たれるのは銃弾
犠牲になるのはアダムの末裔
圧倒される 不安がつのる
空弾じゃない実弾
平和の白い鳩
守らされるのは
薄汚れた灰色の鳩*1
チェスの駒みたいに進む
核を守るため進む
「谷間に眠る者」は眠らない
死んで冷たくなっただけ*2
ヘモグロビンの愛人を見た
ベトミンの地雷とナパームになって
科学が均衡させる科学
意識のない科学
無意識の科学
望まない進歩
望むのは
破壊への進歩
ヘモグロビンの愛人を見た
秋愁の春の中国で*3
破壊しつくされる平和の鳩
磁器のような痛みの跡
兵法が殺すのは子ども
キム・ソンマンの活動には不満*4
ゲルニカ ゲリラのニカ*5
ピカソのピカピカのモザイク
ヘモグロビンの愛人を見た
新聞の選挙記事で
歪んだ政治家のスマイル
まるでAIMのメンタルホールドアップ*6
戦う散文で立ち向かえ
マイクに吐き出せマイクが武器
破壊への進歩
止めるために使え政治
ヘモグロビンの愛人を見た
カラシニコフ、M-16の経済戦争で
地面が赤づくとやってくる青いヘルメット*7
それで気づく不幸な人々
Solaar兵器にこめられるボーカル弾
sol-solミサイルsol-airミサイル*8
Solaarはラディカル
放火魔の消防士のパラドックス
まるでマフィアと戦うマフィア
ヘモグロビンの愛人を見た
システィーナ礼拝堂の天井のように美しい
ファシストの識字テスト
熱い、冷たい、
ダンジョンかダッハウか
これが若いファシストのABC*9
新しい命令をただ待っている群れ
世界中の街で縄をなう馬鹿者たち
ヘモグロビンの愛人を見た
プロラクチンと黒いタキシードをまとった
ヘモグロビンの愛人を見た
ヘモグロビンの愛人を見た
考えていること
それは無知が戦争を引き起こすということ
神は光、我々は兄弟と言われて来たが
光はもう消えた
同じ過ちが繰り返されないように
言いにくいが
怖いんだ
*1:英語でも鳩は白くて可愛い平和の使者dove, 街にいる灰色の汚いやつpigeonに分かれているけど日本語ではどっちも鳩・・汗。薄汚れた鳩は、貧しい人々を象徴させているらしい
*2:「谷間に眠る者」はおフランスの詩人ランボーの詩。寝てると思われたのは撃たれた兵士の死体だった。
*4:韓国で逮捕された政治犯らしいです、彼について歌ったラップもある
*5:ここらへん特に勝手に変えました
*8:sol-solで地対地ミサイル、sol-airは地対空?それとSolaarの語呂合わせ
*9:フランス語ではA chaud, Bacho, Cachot, DachauとABCD順になっているが日本語でうまいこと思いつかず、Bachoが何かもわからず、このあたりが一番ひどいですwダッハウはナチスの強制収容所