ハンガリーで一番愛されているおかっぱのおっさんといえば、フランツ・リスト。
実は彼、生涯でハンガリーにはあまり住んでなかったらしいのだが、彼の名前を冠した音楽学校がある。日本語ではリスト・フェレンツ音楽大学とかフランツリスト音楽院とか呼ばれている。
ここには立派なホールがあり、色々コンサートが行われているので、チケットを予約していってみた。
手のでかい超絶技巧のおっさんが、建物の上から我らを見下ろしている。
この学校は建物じたいもとても美しくて素晴らしい。内装は御覧の通り、とても素敵なアールデコ調になっている。
ロビーに入った時点で、もうほぉぉぉおおおっという気分になる。これが、欧州の、それも大陸欧州の、ミュージックシーン!!という感じが、すごくする。
そしてホールに一歩足を踏み入れると・・・・ふあああああ
ウィーンで行った黄金ホールを思い出す。ウィーンのホールも想像したより小さめだったのが印象的だったが、こちらのホールのキャパはさらに小さい。
舞台も御覧の通り小さめなので、パーカッションはステージの上のバルコニーのようなところに設置されている。ああなんか何もかもがすべていい!!
今回のコンサートの演目は、ストラビンスキーの火の鳥。バレエ用に書かれた曲だが、コンサート用に短くまとめた組曲バージョンの演奏。
コンサートのタイトルが「よくわかるシリーズ」のような感じになっていて、最初の1時間は、指揮者がこの曲について、オーケストラを使って曲のフレーズなどをデモンストレーションしながら、解説してくれる形式となっていた。
ハンガリー語の解説だったので、全部わからなかったのは残念!でも他の作曲家との対比や、フレージングや音階についての解説など、音楽という共通言語を通じて3割がたはわかった・・・かな?!
知らなかったのだけれど、ストラビンスキーは、私の大好きな作曲家リムスキー・コルサコフの弟子だったそうで、この曲は彼の息子に捧げられている。
そしてこの曲には、私がいつかオケでやりたいと思っている夢の曲、シェラザードのオマージュがあるらしく、その比較演奏までしてくれた。思わず好きな曲まで聴けるとはなんてラッキー!
それにしても大陸ヨーロッパのオーケストラの音の美しさ、アンサンブルのタイトさといったらない。今回演奏したオケはDohnányi Orchestra Budafokというオーケストラ。もちろんプロオケだけれど、ブダペストのどこかの区が資金を出している、超地元のオーケストラのよう。都響ならぬ、区響といったところだろうか。特にシェラザードなどは、思い入れがある曲という理由もあるだろうか、その音に聞いていて涙が出てきてしまった。
それにしても、この音の違いは何だろう。会場の雰囲気、環境、空気、歴史、もう色々違うのかもしれない。そういえば欧州のオケのチューニングはアメリカよりちょっと高めなのだが、そういう違いも聞こえ方にやはり影響してくるのかもしれない。知らんけど。
週末の昼だったが、満員御礼。観客は地元の年齢層高めな人が多かったけれど、お祖母ちゃんと一緒に来ているティーンエージャーの男の子がいたり、3歳ぐらいの男の子がお父さんの膝の上でちょこんと一生懸命聴いていたり。
隣に座ったのはニューヨークから来た年配カップルで、ちょっとおしゃべりしたらドナウ川のクルーズ船に乗っているらしい。その後ろには日本人男性二人組、一人は日本から来たようで、とにかくホールの美しさに感銘を受けた様子でテレビで見るのとは全然違う、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートのことなど話していた。
演奏が終わると皆拍手喝采。そして面白かったのが、最後の拍手をみんな最初から四分の一拍子で叩いていたこと。しばらくすると八分音符でたたき始め、それを繰り返す・・というパターンが続いた。(パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パンパンパンパンパンパンパンパン・・みたいな感じw)特にアンコールはやってくれなかったけれども。
オケには、日本人のバイオリストの方もいらっしゃった。そしてフランツリスト音楽院には日本からの留学生もそれなりにいるみたい。平日のコンサートプログラムには、日本人学生による日本の作曲家のアンサンブル、というのもあった。
そして今回行ったこのコンサート、こんなに素晴らしい演奏が、一人8ポンドぐらいしかしなくて、びっくりした。あちこちに気軽に触れることができる本場の芸術がある環境の羨ましさ。
リスト音楽院では色々なコンサートをやっている他に、学校の建物のツアーもある。ツアーの最後には、学生によるミニコンサートもついている。これもぜひ参加したかったのだけれど、英語のツアーはいつでもあるわけではないので、時間があわず残念。
学校の周りには小さい子供も含め、楽器を担いで歩いている人もちらほら。そして建物の中からは、アンサンブルの練習をしている音なども漏れ聞こえてくる。その音がまた、練習とは思えないプロの音なのが、もうなんともいえなかった。