先日、サンフランシスコで由緒あるドイツのオーケストラ、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の公演がありました。場所はサンフランシスコ響の本拠地デイビス・ホール。ちょうどSFシンフォニーのウェブサイトで、チケットの特別セールをしていて、デイビスホールで行われる色んな公演が、ものすごい値引きされていて、この公演もセール対象になっていたので、早速購入。最上階の席ではあるけれど、なんとたった20ドルぽっきり!
このオーケストラは、世界でも最も古いシヴィル・オーケストラ。なんて訳すんでしょう、王様や貴族が作ったお抱え楽団ではなくて、市民の手で作られた初めての楽団。ベートーベンの皇帝の初演をやったのもこのオーケストラだそう。常任指揮者には、メンデルスゾーンがいたり、最近ではノイマンさんがいたり。
そんな由緒あるオーケストラの公演は2日間あり、1日目はショパンのピアノコンチェルトとドヴォルザークの新世界、2日目はベートーベンのピアノコンチェルト皇帝と交響曲7番(のだめのオープニング曲・・・)というプログラム。私は友人と一緒に、1日目のほうを聴きにいきました。
これは、後でコンサートのレビューを読んで、そういえばそうだった!と気がついたことなのだけれど、ホールに入ったとたんに、あれ、いつも何か違う・・という雰囲気が。これ、その時は何がちがったのかよくわからなかったのですが、いつもであれば開演前でも、オーケストラのメンバーが着席していて、好き勝手に音出ししたり練習したりしていることが多いのに、ここには誰もいない。そして全員で入場してきて、さっとチューニングをして、指揮者を待つ。コンサートで必要な音以外は、出していなかったのです。うーむ、さすがプロや!
ショパンのピアノコンチェルト1番、ショパンで、オーケストラというのは初めて聴きました(これは、のだめがロンドンでミルヒーと共演した曲だ!)。ピアニストはおフランス系カナダ人のルイ・ロルティさん。実はよく考えたら、ヨーロッパのオーケストラの音を聴くのは生まれて初めてだったのだけれど、アメリカや日本のオーケストラと音が、空気がまるで違う!今となっては何がちがったのか、はっきり言葉では表せないけれど、そのまろやかさというか、成熟しきった音は、今まで聴いてきたオーケストラとは別モノっていう感じがしました。これで20ドルは安すぎる・・・。
一緒に行った元同僚の友人Hちゃんは、普段は全く別の仕事をしているのですが、ジュリアードでレッスンを受け、タングルウッドやアスペンの音楽祭でも演奏したというくらい実はすごいピアノの名手。この曲ももちろんやったことあるそうで、色んな録音も聴いているので、それと比べちゃうとね・・とは言っていたけれど、実際気になったのが、座っている席が悪いのか、ピアノのタッチがオーケストラに比べるとデリケートすぎるかな・・ということでした。思ったよりもどうしても単調に聞こえてしまう。それでも特に第二楽章は優しくて、気持ちよく聴いてしまいました。そしてこのコンチェルトのあいだじゅう、小さいちゃんはうにうに、ぽこぽこ、音楽と一緒にお腹の中で踊っていたのでした。
アンコールにも答えてくれて、ピアノだけでこれまたショパンの「別れの曲」(えー、101回目のプロポーズの曲ですね・・)を演奏してくれました。これは情感たっぷりでとても良かった!やっぱりオケの音が大きかったのかなぁ。
インターミッションのあいだに、ホールのロビーでHちゃんの知り合いのお知り合いというおふたりと対面。ふたりともプロのミュージシャンでした。ピアノの音があんまりよく聞こえなくて・・と言っていたら、彼女たちが座っている席からはよく聞こえたよ、とのこと。かぶりつきのバルコニー席だったんですが、結構空席多いから移動してきなよ!ということで、新世界はとってもいい席から鑑賞することができました。
さて私の大好きな新世界交響曲なのですが、お腹の中の小さいさんは、ショパンの時と比べてかなり無反応。長時間踊りすぎて疲れたんだろうか。新世界の感想は、早っ!今までで聞いた中で、一番テンポの早い新世界だったかもしれません。全員が体全体を使って、ものすごくダイナミックに演奏しているのも印象的。オケによっては本当に直立不動(?!)で演奏しているところも多いですが、管楽器セクションの人達もかなり情感たっぷりに演奏していました。いいなぁ。
そしてこのオケの指揮者のリッカルド・シャイーさん。彼の指揮も印象的だった・・・。テンポのすごく早い新世界なんだけど、だからといって雑然とすることなく、音の層の一つ一つに気を使って、彼も体を使っての、すごくはっきりくっきり指揮。私、新世界は大好きで、どれだけ好きかというと小学生の時にオーケストラの総譜を買って、それをめくっては頭の中で音をならしていたくらい好きだったのですが(嫌な子供だ)、あ、こんなところにヴィオラのこんなフレーズがあったんだ、ホルンのこんな伴奏があったんだ、ということがビジュアルで見えてくる指揮だったのがとても印象的でした。本当にいいものを聞かせていただきました。小さいちゃんにもいい経験になったかな。