愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

【本棚総ざらい5】やがて哀しき

久しぶりに村上春樹のエッセイを読んだ、村上春樹の小説は読むと腹が立つばかりで全く共感できないのだが、エッセイはなぜか好きで学生の頃からよく読んでいた。当時アメリカの東海岸の大学に行っていたので、特に村上さんがプリンストンやボストンにいたときの話などは興味深く読んでいた。カリフォルニアに引っ越した後は、彼がバークレーに来た時の講演にも行ったな。それもずいぶん遠い昔の話である。

久しぶりにプリンストン時代のエッセイを読んだが、ちょうど湾岸戦争がはじまり、ジャパン・バッシングも真っ只中だったころのアメリカの話である。ジャパン・バッシングどころかジャパン・パッシングなどと言われて久しいが、本当に社会や経済や色々なダイナミクスなんて、数十年のうちであっという間に変わってしまうものなんだよな、となんとも言えない気持ちになりつつ、2020年代になって読むとアメリカも意外と昔からそうだったんだな、という価値観や、こういうことがあって今こうなってるんだな、となんとなく答え合わせ的に読めた部分もあり面白かった。

村上春樹のエッセイは、走ることについてのものや小沢さんとの音楽対談などは英訳されているけれど、今これを英語にして読ませても面白いんじゃないかなと思った。アメリカ人は自分が観察対象になっている文章をあまり読む機会もないような気がするし、ひと昔前の話、しかもみんなが大好き村上春樹が書いたものだと思って読むと結構落ち着いて面白く読めるんじゃないかなんて思ったりもして。

一方で女性に関する話などは、今これをこのまま訳したら叩かれそうだなぁ、という表現をハルキさんがぽろっと使っているのも、おっとっとぉ・・という感じであったが、いかんせん春樹さんは自分のことを「男の子」などとは言っているが考えたらうちの親世代なのであった、今ではもうさすがに言っていないだろうか、男の子。

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