愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

子連れベネチア旅⑧ 観光地ベネチアの苦悩

ベネチアに行く前に見た旅番組で、ベネチアには最近大型のクルーズ船が毎日のようにやってきて、お客がたくさん来てウハウハなのかと思えば、逆に大迷惑なのだという話をちょっとしていた。

実際のところ、こじんまりとした小さな島であるベネチアに、巨大都市かと思うほどの大きさのクルーズ船が1日に何台も何台もやってくる。サイズ感も合わないが、これがベネチアの環境にずいぶん悪影響を与えているんだそうだ。

私達が滞在中はクルージングの季節が下火になる頃で、実際に見たのはこの2−3艘だったが、確かにでかい。ああ、これか・・と思って見送った。

こういった船が出す排水による汚染、そして燃料が重油だったりするため大気汚染が酷いらしい。そしてクルーズ客はベネチアに宿泊するわけでもなく、結局は食事だ何だと消費はクルーズ船内に囲われているので、大勢でどやどやとやってきて、つまみ食いしていくような存在のようだ。

こういう旅のスタイルはちょっと理解しがたいのだけれど、クルーズって移動が辛いお年寄りとかにはちょうど良いのだろうなぁ。どうしたものか。

しかしまあ、クルーズ船のサイズ感、ベネチアの混み具合は実際ちょっとえげつない。


ベネチアを観光客から取り戻せ 地元住民の戦い
BBCの2分ちょっとのショートドキュメンタリー(日本語字幕付き)

色々気になって、他のドキュメンタリーなども見ていたが、Aibnbなどを通じて、持ち家がある人は改装して観光客に貸し出す。空き室になっている期間が長くても、地元の人に住居として貸し出すより、観光シーズンだけ稼働させたほうがずいぶん良いお金になるらしい。

実際路地を歩いていても、天気がいいのに雨戸が閉められている建物が良く目に入った。みんな昼間留守にしてるから閉めているのかな?と思っていたけれど、誰も住んでいない空き家の場合もかなりあるみたい。

ベネチアの小さなアパートの家賃は月に1000ユーロもしないようだけれど、地元の人がそういった物件さえなかなか見つけられなかったりするらしい。

民泊に対する規制がないので、1人でベネチアの物件を何十件もリスティングしている人もいて、これはもう個人で貸し出していると言うより、個人を装って組織的にビジネスとしてやってるだろう、と言う例も沢山。

一方でベネチア市内にある低所得者層向けのハウジングなどは、もう何十年も市がメンテナンスするのを放棄してしまっているので、ミュージカルRENTのごとく、そういうところに勝手に入居して自分達で部屋を改装メンテナンスして生活している人も紹介されていた。これだけ観光客が来てるのに、ベネチアの財政は赤字なんだって、市政がだいぶ回っていない。

ベネチアの街そのものも、古い上に暮らすには決して便利な場所と言うわけではない。輸送に手間がかかるから、食料だなんだと値段も張る。最近ではもうここには住めない、と出て行く地元の人も多いとか。

実際に、まだ人の住むアパートの前に車椅子で座っているおじいちゃんを見かけたけれど、何百年も経っていそうな古いアパートにエレベーターはなさそうだし、小さな水路の前にあるこの建物から出かけるにも、階段状になっている小さな橋を渡っていかないといけない。身動きが取れなそうだなあと思って見ていた。何しろ、市民病院に行くのも船だしね。

しかし、普段ベネチアに住民はあまりおらず、周辺から通ってきて観光客相手の仕事をしている、なんてなると本当にここはディズニーランドがラスベガスですか、と言う感じになってしまうなあ。


浸水に備えてあちこちに置いてある足場

浸水の問題もだけれど、ちょっと行ってわーきゃー綺麗と騒ぐ観光客の横でどんどん追いやられる地元民、と言う構図。根本的に市政がいかん部分が多いなあとも思ったが、観光客としては、クルーズで来ない、地元の経済に貢献する、街をリスペクトする・・以外に具体的にはどうしたら良いのだろう。

ベネチアの街を市民の手に取り戻そう、と言う運動も起きているそうで、そういう人がやっている、本来の街の姿を見せるツアーと言うのもあり、話を聞いてみたいとすごく気になったのだが、今回の旅行ではタイミングが合わずにちょっと残念だった。