2016年夏の旅の記録、もう20回め・・!なのに終わる気配がございませんw
ロンドン、(アメリカと比べれば)意外とコンパクトな街。我が家の周辺では、家から歩いて行ける電車の駅が6つもありました。
そしてちょっと歩くと街の表情ががらっと変わるのも面白い。
道そのものも、車ではなく、馬車が通ることを想定して作ったんだろうなあと思うような道幅だったり、道の名前からも歴史的な用途がわかったり。例えば小さな小路の名前が○○ストリートじゃなくて○○馬屋となっていて、ここは通路というよりは馬を引き入れて置く場所だったんだなということがわかります。
そういった意味では、ちょっと東京に似てるのかもしれません。
街を歩く旅に、ああ、ここでブラタモリやってほしい!または誰か専門家の人がフリップもって私を待ち構えていて欲しい!と思うことしばしばでした。
ロンドンの中東街エッジウェアロード
そんな中で今回ご紹介したいのが、エッジウェアロード。
マリルボーンの我が家からは、徒歩10分ぐらい。マリルボーンはどちらかというと閑静な住宅街なのですが、そこをちょっと通り抜けると、どどん!と中東ワールドが開けます。
へぼい写真しか撮れてないんですが、街ゆく女性の大方がヒジャブを着用しています。看板もアラビア語率高し。周辺には中東系のレストラン、薬局や雑貨屋、商店などがどわーっと並んでいます。
家族連れもすごく多い。ひと家族の単位が大きめなので、とにかくいつ行っても混んでいる感じがしました。このあたりを回っているシクロから流れてくる中東音楽をバックグラウンドに、とにかく雑踏をかき分けて前に進む・・・。
あまりの混雑と混沌とした感じに、ふと昔行ったエジプトを思い出したりもします。実際一昨年初めてここに来た時の最初の感想は、「ここはキレイなカイロかっ!」でした。
現在ロンドンの人口の12%ほどがイスラム教徒なんだそう。新しいロンドンの市長もパキスタン系のイギリス人です。
ロンドンのイスラム教徒の内訳は、一番多いのがトルコ、次がパキスタン、バングラディッシュと続き、必ずしもアラブ系が多いというわけではないようです。でも我が家の周りにはシーシャ(水タバコ)を出すカフェがぽろぽろあったり、だいたい角にある雑貨屋さんはムスリム系のおじさんが経営していました。
旦那は近所のアラブ系の床屋ででテカテカのロナウドみたいな髪型にしてもらったり(看板も全てアラビア語オンリーだし、床屋もあんまり英語が得意じゃなかったみたいだけど、よく飛び込んだなあ・・w)、周辺に飛んでるWifiの名前もアラビア文字だったり、子供の通学路の途中にも、大きなモスクがあったり。
アメリカの普段の生活と比べると俄然、イスラム文化が隣り合って存在している感じがしました。
中東の美味しいもの満載!
しかしなにより食いしん坊の陳家にとって嬉しかったのは、エッジウェアロード、ちょっと歩くと右向いても左向いても中東の美味しいものがそこにある、というところでした。
ワンオーダーでびっくりするくらいのボリュームがあるケバブをテイクアウトしたり、歩いていると試食だといってファラフェルをまるごと一個くれたりするお店もあったり。
そんな中で我が家が良く通ったのが、シリア系の小さなデザート屋さんDiwan Damas Deli。ここでアイスクリームを買って食べながら家に帰るのがお約束でした。
道端に出ているアイスクリームのケースから、なぜか毎回、子供はいちご、私はヨーグルトとラズベリー、そしてパパはアラブの伸び〜るアイスクリーム、ピスタチオ味をセレクト。
この伸びるアイスクリームだけ、ロールケーキみたいな形になっていて、切って出してくれます。もちもちした不思議な食感は、サレップという何かの植物の茎の粉が入っているせいだとか。
トルコの伸びるアイスクリーム、ドンドルマとほぼおなじですが、アラビア語ではブーザというのだそう。
お店紹介ビデオがあったので貼り付けとく。
Diwan Damas Deli in London UK serving delicious Ice Cream and Pastry
中東レストランと一口にいってもバラエティに飛んでいて、この写真の手前のお店はトルコ、イラン料理屋さん、その向こうはレバノン料理屋さん。
その反対側にはクルド・イラク料理屋さん、そしてシリア料理屋さんもあります。
その他にもデザートやケバブの専門店、おやじばっかりがコーヒー飲みながら水タバコをふかしている店・・・・・と、まあ目移りするほどいろんなお店があります。
陳家がいったこのお店Abu Zaadはシリア系。シリアというより「ダマスカス料理」だそうですが、細かい違いはよくわからず。
ラマダン中には、日没になってご飯の前にするお祈りのテレビ中継が毎日あるらしい。
お店には白人の人も時々ちらほら、でもだいたいムスリム系っぽい人達が食べに来ていました。
私達の向こうのテーブルにいたのは、男女混ざった若者グループ。女の子はヒジャブを被ってる子もいれば、いたって普通の格好をしている子も。みんなでセルフィーとったり料理の写真とったりしてました。
ミックスジュース的なもの
ピタパン、フムスなど基本的に地中海系なものが出てきます
「ババガヌーシュ(茄子のディップ)」、「キベ・シャミー(ブルグルというひき割り小麦とひき肉を団子にして揚げたもの)」、「タブーリ(パセリのサラダ)」
そしてメインのお肉。・・って頼みすぎ?!確か最初の数品は前菜セットみたいなのを頼んだのでした。
で最後はしっかりデザートも・・・。名前を失念した、アラブのライスプディングです。
昔から中東街だったエッジウェアロード。そしてその前は・・?!
一瞬ここがロンドンであることを忘れそうになるエッジウェアロードですが、ムスリムの移民はここ最近始まったことではないらしい。
19世紀後半にはオスマン帝国との交易がさかんになったのを受けてこのあたりにアラブ系の住民がすでにやって来ていたのだとか。
その後1950年代にはエジプト系の移民、そしてレバノン内戦の影響を受けたレバノン人が、イラン革命の影響を受けたイラン人が・・・と、その時々の政局により、異なる地域の移民が続々とやって来て、現在があるようです。
移民政策が急に酷いことになってしまった今のアメリカを思うと、なんだか複雑な気持ちになってしまいました。
そして難民が生まれるのは、中東などに限ったことではない。このエッジウェアロード、中東系移民がやってくるもっと前、18世紀には、フランスのユグノーの移民が住み着いていたんだとか。
ユグノー・・なんか世界史で聞いたことあるな・・・カルヴァン派とも言うらしい・・ナントの勅令・・ってなんだっけ?!
・・ものすごく簡単に言うとユグノーはフランスのプロテスタントで、カトリックの国フランスでは迫害されたり色々していた人達。イギリスにも宗教難民として渡ってきたようです。
ユグノーの一部はイギリスの他にも近隣のオランダやスイス、南アフリカなど世界中に移っていったそう。
そしてアメリカにも今でいうレッドステート(オレンジハゲ隠し野郎に投票した州)あたりにどばっと移民したらしい・・みんな昔は難民だったんじゃんねぇ本当に・・・。
(エッジウェアロードを歩いていくと行き着く、マーブル・アーチと呼ばれる門)
さらに面白いのは、このエッジウェアロードという道そのものの成り立ち。
この道の起源はなんでも先史時代に遡れるとかで、昔ロンドンの北にあった「ミドルセックスの森」に向かうための道として使われていたのが始まりなんだとか。
それこそ狩りに行ったり、食べ物を探しに行ったり、木を切りに行くために歩いていた道が踏み固められて、現在に至る、と・・・。確かニューヨークのブロードウェイもそんな感じで、ネイティブアメリカンが狩りに使っていた道をそのまま使ったんですよね。なんかすごい。
ロンドンは1世紀頃ローマ帝国に支配されちゃうのですが、その時にこの道も舗装整備され、「ワトリング街道」の一部になったんだそうです。
この「ワトリング街道」、ドーバー海峡にも近い、イギリスの南東部カンタベリーから斜めにイギリスを突っ切って、イギリス中西部にあるWroxeterというあんまり聞いたことのない街まで、実に444キロもある道!
本気でローマ人、全ての道をローマに続けさせようとしてたんですねぇ・・・。
こういう古い道は今でもイギリス中に残っていて、歩くこともできるようです。
ローマに続く?道の一部となったエッジウェアロードに、色々な国からの移民が住み着いて、新しい文化を取り込んでいると想像すると、なんともいとをかしいです。
こちらは地下鉄エッジウェアロード駅。
ここは2005年7月に起きた同時爆破テロの被害を受けた場所でもあります。もう10年以上前になるのか・・・。
そしてこれは2015年のロンドン。エッジウェアロードの先にある、マーブル・アーチに設置されていた観覧車乗り場にて。
「市長」とも異名をとる小さいさんは、ロンドンの道端でも向こうから子供が歩いてくると「私あの子と遊びたい挨拶してくる」と突進していくなど、その社交性を発揮しておりましたが、ここでも3人の女の子を見るなり自分からこの椅子によじ登っておしゃべりを始めました。
たまたま隣に座っていたお姉ちゃんと小さいさんの名前が同じだというのでさらに盛り上がり・・。
なんだか色々嫌な方向に進んでいる世の中、子供達が大人になる頃にはどうなっているだろうか、大丈夫だろうか。子供達みたいに、みんな素直に仲良くできればいいのに・・。
美味しいものを食べまくったり、歴史に思いを馳せたり、そして将来を憂いてみたり・・。色々忙しくなれるエッジウェアロード。
今回の旅、日本のガイドブックも参考に持っていったのですが、そういえばこのエリアの記載はゼロでした。でも色々面白いし美味しい場所だから、みんな行けばいいのに!