愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ロバート・ディックのマスタークラスで演奏してきた

 

marichan.hatenablog.com

 

実はこのマスタークラスがあったのがすでに数週間前だったので記憶が曖昧・・・。きちんとノートをとっておけば良かった!


マスタークラスの前に「クラシック演奏者のための即興演奏講座」というワークショップもありそれにも参加して来ました。参加者は・・なんと5人!少数精鋭でまあなんと贅沢な時間。少なくとも一人はプロ、一人は高校生、一人はベイエリアでフルートの修理を一手に引き受けているLさん。彼女には6年前に私のフルートのメンテナンスをお願いしたことがあるのですが、なんと彼女はそのことを覚えていました。さらに私がその頃に別のマスタークラスでも演奏したことさえ覚えていた・・・!ビックリ。


で肝心のワークショップですが、ちょっと変わった感じのロバート・ディックさんが、例のヘッドジョイントがスライドするフルートを手に、5人を前に時に自分のジョークで一人で受けながら色々指導してくれました。



  • 音を2つ選んで、自分で好きなように演奏して5人でそれをつなげてみる。
  • 何も考えないでやるというよりはやはりイメージなど色々と考えておいたほうがいい
  • 色々な国の笛の音楽を聞くといい。世界が広がる。
  • キーホールの間に薄紙をはさめば簡単に中国の笛子の音になるよ!
  • スケールや音階といったエチュードはいわば「音楽のゴキブリ」!頭の中で他のこと考えながら音階をピロピロ吹いても意味が無い!(これは似たようなことをジェームス・ゴールウェイさんもマスタークラスで言っていた)
  • フルートでどんな音がでるか実験しながらの練習
 
 
みんなでキーを決めて即興演奏をワンフレーズづつやりながらつなげていく、というのを何度かやったけれど、いわばジャズやブルースではない近代音楽的な感じのフルートの即興演奏って、どうしても壮大な歴史ロマン風、未知との遭遇風であんまり好きになれないかなあ・・・という感じではあった。でもロバート・ディックさんがピアニストと2人でぱっとやってくれたブルースの即興演奏がとてもかっこよかった!ただただ書かれた楽譜をかっちり演奏するクラシックばかりやってきた自分にとっては、即興演奏とは?と、同じ楽器でも違う音楽の世界とマインドセットを少しでも垣間見れた面白い機会になったし、自分が本当にどんなフルートの音楽が好きなのか、もっと世界を広げて見てみなきゃ!という気持ちになりました。実は本当は2時間半ぐらいみっちり色々講義してくれてたんだけど・・雰囲気と感覚でなんとなく自分の中に残っているけど、実際書きだそうとすると、どんな話をしてくれていたのか思い出せない・・・orz
 
 
その後は全員でランチを食べに行き、午後からマスタークラス。さすがに聴講の人がもっと入って来ました。本当は私は二番目に演奏するはずだったのに、当日蓋を開けてみればなぜかトリになっていました。∑(゚д゚lll)ガーン 久しぶりの人前での演奏なので、緊張することこの上無い。そのため、事前に先生と話をして緊張を少しでも和らげる対策を練っていたのですが
 
 
  • 前日よく寝る
  • 水分をたっぷりとる
  • 昼ごはん食べ過ぎない
  • 演奏1時間前にバナナを食べる(カリウムをとると筋肉の細かい痙攣・・つまりはプルプル緊張で震えることが軽減される)
  • 10分ぐらいまえから深呼吸
 
でもなかなか自分の出番が来ないので、いつまでもいつまでも深呼吸する羽目に・・・。
 
 
1曲めは、ロバート・ディックさん作曲のフルート2本のデュエット曲。マスタークラスの後のコンサートでも披露されるため、リハーサルも兼ねてみっちり1時間。「Time is a Two-Way Street」という曲。日本人でフルートを学んでいた人に頼まれて作ったんだそうで、まもなく出版もされるだろうとのこと。
 
 
2曲めは、高校生の女の子、ニールセンのコンチェルト2楽章。今までいくつかマスタークラスに参加してみて、若い子の特徴として技術はあってキレイに吹けるのだけれど、淡々としすぎた演奏が多いなー、と思うことが多かったのですが、この子もそんな感じでした。ロバート・ディックさんも、そこらへんの表現をもう少し引き出そうとしていた感じ。「はい、今持っているこのフルートをみんなに見せて〜。今の演奏は、このフルートがどんな音をだすかを発表したものですね。でもみんなはこのフルートの音を聞きに来るのではなく『あなたの』演奏を聞きたいのですよ」「緊張している時は頭の中がOH my god、ヤバイヤバイ、みたいな言葉でどんどん満たされてしまう。演奏中はそんな心の声は無視!曲を覚え、曲に集中するにはその曲を歌って見ることが大事。そして演奏中も心の中でこの曲を大声で歌う。それにそって演奏していくと緊張にとらわれないで落ち着いてできる」。実際曲を暗譜するにもソルフェージュをするといいとよく言うし、私も曲を練習している時はシャワーでその曲を歌っていることが多いかも。
 
 
3番目は大学生っぽい男の子。曲は・・なんとかのなんとか(忘れた)。この子に関してはディックさん、彼の楽器の構え方を延々指摘していました。今は若さで乗りきれるけど、この楽器の持ち方を続けると将来歳をとった時に大変だと。その後20分ぐらいそれに関するエピソードをずーっとしゃべっていたかも。高齢になってもガンガン演奏している人の姿勢や構えは注目に値する、というのは本当そうだなーと思いました。
 
 
そしてとうとうトリは私。ステージにあがって最初に言われたのは(楽譜を見て)「うわっ、すごい書き込みだね!」
 
 
 
 
そうかな?昔習ってた先生の時は楽譜が原型を留めないくらい真っ黒だった・・w
 
 
先生には、ロバート・ディックさんは言うことがあると演奏を止めてコメントするから細切れになるかも、と言われたけど最初から最後まで通しで一度演奏しました。深呼吸もバナナも何も結局役にたたず、ちょっと緊張でガクブルしてしまい、心の歌声が聞こえなくなってしまったところもありましたが・・・
 
 
演奏を終えると「あなたの音楽になっているところと、作曲家の音楽になっているところとにわかれているね。全部あなたの音楽にしましょう」と。譜面で「即興風に」と書かれている箇所、実はマスタークラス直前に今の先生に指導を受けた時に、もっとメトロノームを使ってかちっとテンポを合わせたほうがいいと言われ、今まで適当な感じで演奏していたのを付け焼刃で直したのをおもいきり見破られました。表現でそれこそガチガチになっていた部分を、ふと緩めてもらった感じ。楽譜に書かれた音ではなく、自分で勝手に選んだ音で同じようなニュアンスで演奏する練習、なんかもしました。あとは緊張で少しすくんでしまっていた姿勢を直し、高音がまっすぐ凛とでるように、左足を心持ち前に出して、体もぐんと高音の時は前に出す〜。
 
 
ランチの時に、2歳の子供がいると練習もままならぬ、という話をしていたので(彼も10歳にならない子供が2人いるそうな)小さい子供を持つ忙しい親に贈る(?)基本練習のアドバイスももらいました(って、モイーズエチュードと、あとロバートディックさんの出版した本なんですが)。
 
 
こうやって書くとそんなもん?という感じもするけれど、実際はステージの上でもっと色んなことを感覚として学んだ感じがします。指導を受けて演奏していくとどんどん良くなっていくのもわかったし、どんどん緊張も取れて最後は舞台の上でふざけられるくらい楽しかった。唐突だったけど、こういう機会が得られたのはまた良い経験になり、演奏後にはなぜか聴講していた人からこちらが恥ずかしくなるくらい褒めて頂き、もっと演奏の機会を持つべきだと言われてちょっと自信もつき、久しぶりの演奏再開のいいスタートになりました。またがんばるぞー!!!・・・と思ったところで、また今のフルートの先生が音信不通!!次のレッスンの約束が取り付けられてないし・・orz
 
この他にも私が演奏、聴講したマスタークラスはこちら: