愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ギルドホールで室内楽特訓

ロンドンに引っ越してから、ほとんど触る機会のなかったフルート。仕事も生活も落ち着いたし、ロンドン2年目はもう少し機会を増やしたい。思えば子供が生まれてから9年間、ほんとに少ししか楽器に触れていない。


で、えいやっと、ロンドンはバービカンセンターに隣接する、ギルドホール音楽演劇学校の室内楽ワークショップに参加した。「エニグマ14」と言う名前で活動している、ピアノ・チェロ・フルートのトリオ演奏家の皆さんが講師となり、週末2日間みっちり特訓していただいた。これはもう単に自分用の覚書き。

  • 室内楽ワークショップはカリフォルニアでも何度か参加したことがあるが、どちらかというと引退したお年寄り集団の趣味の会的なおもむきが強かった。しかし今回のワークショップの参加者は10人と超少人数。音大を目指す高校生も何人か。英国北部や外国からわざわざこのために泊りがけで来た子もいた。
  • 課題曲は3曲、事前に知らされてはいたけれど、会場に入るなりウォーミングアップも無く「じゃあ早速順番にやってみて」。これにみんなビビる!朝も早く緊張もし、朝食さえ食べずに来てしまったので体も落ち着かず、やっぱり最初はボロボロであった。
  • さすがに2日目はフルートの先生がみんなを輪にして深呼吸から始めるウォーミングアップをやってくれた。やはり管楽器をやる人の方が、呼吸器を使うぶん体のバランスとか、ヨガっぽいこととか、気をつけている人が多い気もする。
  • 先生の指示でトリオを編成。私のピアノ相方は、ケンブリッジの学者さん。チェロが2人足りないので、私達のグループは先生がチェロパートをやってくれてラッキー。
  • 各自練習部屋で練習、そこに先生たちが巡回して指導してくれるのは、過去に参加したワークショップと同じ。ただし人数が少ないのでずいぶん見てもらった。
  • 私のグループはコンサートホールを使って練習したのだが、空気がすごく乾燥する上に自分の音が響かずスカスカしてとても焦る。しかし不思議なことにこれがホールの中間・後方で聴くと、ちゃんと聴こえるらしい。自分が聴こえる音と、聴衆側から聴こえる音は違うという難しさ。
  • 以前エマニュエル・パユのマスタークラスを聴講した時にも、ホールの大きさに合わせて音の出し方を考える・・と言う話があったけれど、箱に合わせた音量調節の仕方、特に楽器をロールアウトして肘に向かって吹くつもりで吹き込むことで音量をあげる・・というのを教わる。
  • フルートの先生はカナダ人。北米と欧州の音を比べると、欧州のほうが「ウッディー」な音なんだそうだ。自分で吹いてみてファジーに聞こえても、これまた客席からは聞こえ方が違うと。しかし吹き方を変えるとぼへーっと聴こえてしまい自分の音が気に入らない。良くなったと言われても、自分で吹いてみてどうだった?と聞かれても、「うーんなんか気持ち悪くてやだ」としか言えず。しかしあとで他の参加者が動画をとってくれたのを聞いてみたら、あら不思議。思ったよりちゃんとした音になっていた・・!
  • 練習不足というより、肺活量が落ちているのをひしひしと感じる。先生はピラテスやってるそうな
  • 二日目は最初はパート別に集合しての練習。ふごっといびきをかくような音を出して呼吸を整える方法、ウォーミングアップのルーティーンの話など。ルーティーンがあるほど練習してない・・。色々反省。
  • 休憩時間は高校生たちと一緒にご飯を食べに行った、みんなしっかりしてるなあ。子供と話している感じがせず普通にしゃべっちゃった。
  • アンサンブルをするとき、それぞれが楽譜に顔をうずめていたり、自分のゾーンにだけ入っている感じになるのがいやで、もっとちゃんとアイコンタクトを取るとか、音が「まぐわう」感じを演出するためにも、コリオグラフィーみたいなの(って踊るわけではないけど、ロックのジャムセッションのごとく、何かしら動きの流れを合わせるような)があってもいいんじゃないかなと思ってが、今回の先生達は必要な部分でさっとアイコンタクトをする位を奨励。時にはタイミングなど、目の横に入っている相手の気配で感じ取れと。相手が視界に入らないように、お互い背中を向けての練習も。面白いことにそのほうが相手の音が良く聞こえた!
  • 以前参加した室内楽ワークショップでは、週末みっちりやって一気に2キロぐらい体重が減ったことがあったが、今回も特に1日目はヘロヘロ。といっても正味吹いていたのは一日6時間ぐらいだったが、あまりにも久しぶりすぎて・・。緊張もあったと思うし帰ったらまた全身筋肉痛のようになっていた。痛み止め飲んで寝た位。翌日は呼吸も深くなりもう少しリラックスしてできたが、結局ご飯もがっつり食べたしで今回体重は1ポンドだけ減った。
  • 音楽学校はバービカンセンターの中というか、同じコンプレックスの中にある。ここは戦後近未来的な感じで建てられた、コンサートホールや学校、そして住居が一緒になった巨大施設。外はうちっぱなしのコンクリート、まさにブルータリズムな建築。そして中はまさにミッドセンチュリーモダンな感じ。練習室の眺めもこんな感じだった。とはいえやはり古い建物なので、フロアによっては下水くさーい感じの場所もあったり。


  • このワークショップの他にもサマースクールも始まっていて、練習室からはピアノをがんがん練習する音も。今回であった高校生もそうだけれど、演奏家を目指す彼らは眩しく羨ましい。親の意向もありそういうスタートラインに立つこともなかった私、社会人になってから、あとで何もしなかったことを後悔したくないと時々もがいたりあがいたり、忙しさにかまけて離れたりの繰り返し。


  • セッション一日目の終わりは先生たちのコンサートも。ハイドン、シャルル・ルフェーブルのバラード(課題曲)、リーバーマンのトリオ(激しくかっこいい・・・)


  • 最終日には各グループで発表会。緊張して最初左手がしびれる(呼吸がおかしい)。が後半になって余裕が出てきて、チェロのフレーズをつい舞台上なのに鼻歌で歌ってしまったり。1年ぶりにしてはまあまあの出来。でも今回は、リハーサルの時も驚くほど人前で演奏すると色々崩れた。
  • ワークショップが終わってからも、先生も含めみんなで飲みに行き、音楽談義やいろんな話で盛り上がり、連絡先を交換し合い、2日間しか一緒じゃなかったけれど、その間はみっちり一緒に演奏していたので、ずいぶん打ち解けて楽しい音楽仲間ができた。ロンドンのフルート事情というか、誰にコンタクトを取るべきかなども色々教わり、フルート活動の足掛かりが少しできたかもしれない。充実してやる気がむくむくとわいてきた、いい経験となりました。あとはもう少し真面目に少しでも考えながら練習すること、そして会うべき人達に会わないとだ!