愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

【本棚総ざらい 4】コンスタンチノープルの陥落

家の本棚にある本を読みなおすシリーズ。もう10年(以上?)手に取っていなかった塩野七生の本。東ローマ、ビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルが、トルコの若きスルタンメフメト2世による包囲戦で陥落していくプロセスを書いた話。

当時のヨーロッパの組み入った勢力関係については、やはり欧州に引っ越してきて、実際に旅行でその場に行って雰囲気を感じ取ったり、地理的な感覚がより身近にわかるようになったことで、リアル感が以前読んだときよりもずいぶんと変わった気がする。

ここでもベネチアギリシャセルビアに至るまでヨーロッパといっても当時色々な背景と思惑があり、東西キリスト教の対立やら教科書でも習ったことが書かれているが、それが肌感覚で以前よりもわかるようになったと思う(当社比)。特にこの間クロアチアに行ったばかりなので、バルカン地方が当時からどれだけごたごたしていたのか、改めて認識したように思う。

一方であまりにも色々な要素が絡まってくるので、なんとなく全体の流れや関係性をざっと把握するには面白い本だとは思ったが、その分登場人物が多すぎるのか、どの人物もささっと表面をなぞっているうちに終わってしまった感じもあり、その点は小説としてはちょっと残念な感じもあった。小説ではあるが、歴史入門書として読むといいのかな。

実はこの本、自分の記憶の中では、欧州のどこかから来た商人と神学生が、トルコ軍に包囲されたコンスタンチノープルの城壁内で、立てこもり救助を待ちながら、首都が陥落していく様を見、その経験を語り合う・・的な、どちらかというとキリスト教徒からの観点の回想録みたいな小説だったと思っていたのだが、再度読んでみたら全然そんな話じゃなかった。どこで記憶違いが起きたのだろう?別の小説とごっちゃになっているのかな?

いずれにしよ、大国の栄華については、今の世界情勢を見ていても思うけれども意外と長続きしないもんだし、続いたとしてもいずれは滅びる日が来るんだよなあ、とつくづく思う。国の興亡に焦点を当てて色々な例を見てみたい気もしてきた。

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ちなみに思い出したのは、英語では複雑怪奇で分かりにくいこと(特に制度とか)を「ビザンチン」と表現することがあります(急な豆知識)。以前文脈で読んだときには古臭いという意味かなと思っていたけれど、実際にはもっと色々そこに思惑が絡んでいたりとか、日本語の辞書では「権謀術数」なんて説明もされていました。