愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

2022日本里帰り日記⑪:猿山でうわぁぁぁ!

2022年4月、子供とふたり日本里帰り日記。

京都滞在中、私が生まれた大阪の街にも足をのばした。

祖父母に連れられてよく散歩した滝道、遊んだ谷川など子供と歩く。ちょっと日差しが強めで、4月だったけれどそれなりに暑かった。覚えていたよりも滝までの距離があって、子供の頃これを普通に登ってたんだと思うと少し驚いた。

昔は滝道にずらーっと並んでいたお土産屋さんは、どこも店先でもみじの天ぷらを揚げていた。スパーガーデンの前からは馬車も走っていたり、結構人出があって盛況だった思い出だが、今では駅前もひっそりしていて、季節柄かお土産屋さんも大概しまっており、随分静かだった。今は中心が千里中央とかあっちのほうに行ったらしい。昔行った駅前スーパーも市場も、ヒロタのお店もタカラブネも無い。

と思えば昭和の香りが残ったままの駅前喫茶店は2軒ともまだ健在で、覗いてみると記憶にあるインテリアもそのままだったりする。まだ残っているお土産屋さんの古い古い店先にも、それこそ私が3-4歳の頃から見覚えがあるディスプレイがそのまま残っている。40年ほどたって11歳の子供と一緒にこの風景を見る。

昔は箕面名物といえば、もみじの天ぷらにもんちゃんせんべいだったが、なぜか今は柚子の名産地ということになっていて、色々な柚子の製品が売られている。箕面ビールという地ビールもある。もみじの天ぷらも、代替わりしてお土産屋さんを新しく建て替えたようなところは、色んなフレーバーを付けて売り出したりもしている。何も変わらずそのまま枯れたようになっている場所もあれば、そんな中から新芽が出て若い葉っぱも生えているような感がある。

  

このYuzuyaさんというお店、昔旅館だったところで営業している。その前に行ったときは、カフェだったよなあ。ここで買ったスイーツが結構美味しかった、そしてこの柚子胡椒はロンドンで愛用している。使い切った時のことを考えるとちょっと不安。

それなりに傾斜のある滝道を、ジョギングで昇り降りしている人達も結構見かけた。日本でジョギングする人を見かけていつも不思議に思うのは、皆さんストライドが驚くほど短いというか、ほぼ小走りなようなフォームの人が多いことなのだが、なぜだろう。しかしもう何年も走ってない私より随分偉いことには変わりない。

ここで昔冷やしあめを買ってもらったな

懐かしい滝は周辺を工事中で、すこしごちゃごちゃっとしていた。天候のせいか、水量も少なかったが、懐かしいことには変わりない。

滝の横のお店ではフィリピン料理も食べられるようになっていた。迷う位色んな味のソフトクリームもある。あまり濃厚でないのが暑い季節には美味しい。部活で上まで上がってきた高校生ぐらいの男子たちが、現金ないけどペイペイで払えたと喜んで買っている。時代の流れは確実に山の上のほうにも届いている(大げさ)


(この写真に後に登場するおっちゃんが映り込んでいます)

さて箕面といえば野生の猿である。昔は猿が町に降りてきて屋根瓦をはがしたりと悪さをすることもあった。週末というコンセプトを理解していて、週末に行楽客が来るとゴミ箱を漁ったり食べ物を直接奪いに来ることも。子供時代、祖母と滝道を歩いていて知り合いにばったり会ったりすると、「奥さん出ましたよ」「出ましたか」と猿の名をまるでヴォルデモートのように出さずに話し合ってたのがおかしかった思い出がある。

そんな猿と人間の攻防は今も脈々と続いているようだ。滝を見ながら子供とソフトクリームを食べていたら、ちょっと上のほうにある木を見ながら、おばちゃん2人組が「いやっ」「ほんまやわー」を100回ぐらい繰り返している。本当に「ほんまやわ」ばかり言うので何かと思ってみると、木の上に大きな猿がいて下の人間を伺っている。と思ったらピクニックテーブルで買ってきた弁当を広げようとしていた老夫婦の所に悠然と降りていき、おお、と思ってみていたらテーブルの上に置かれていたビニール袋に入ったままの弁当を一つ小脇に抱えて持っていてしまった。

俊敏な動きというよりは、何か人間のどんくささを見透かしたような、ゆっくりとした物腰での略奪。取られた老夫婦は事態を飲み込むのにちょっと時間がかかったのだろう、猿が弁当を奪った約10秒後、弁当を持った猿がもう木に登りついたところでおじいさんが「うわぁぁぁぁ!」と驚いた大きな声を出したのが、山に響き渡った。猿が弁当を取って逃げたという視覚からの情報が脳に到達して処理され、その反応として多少のタイムラグがあってから声が出たという状況が、ゆっくりと手に取るように分かったような現象であった。

丁度私達の近くに立っていて一部始終を見ていた公園だか工事の警備のおっちゃんが、あの猿はここらへんで一番古い猿やと教えてくれた。老夫婦は仕方なく一つだけ残った弁当を開けていたが、警備のおっちゃんに、また猿が来て取らないように食べてる間見張っててーな、と弁当の警備を依頼していた。こんなやりとりを流石大阪、と言っていいのかわからないけど、そういえば日本にいる間に知らない人達とワイワイ話したのはこの時だけだったな。猿そのものよりも、おっちゃんがうわぁぁぁと時間差で叫んだのと、その後みんなで色々コメントしあったのが妙におかしく楽しかったので、今でも子供と思い出しては笑っている。


(この写真のどこかに猿が映り込んでいます)

山を下りてもう一件子供を連れて行きたかった場所は「モンキーヒル」、私が子供の頃からあるレストランというか喫茶店

よく祖父に「モンキー行こう」といって連れて行ってもらった店は、内装もなにもまっっったく変わっていなかった。今では珍しく喫煙OKの店内、記憶には残っていないけれど子供の頃もこんな感じの匂いの中にいたんだろう。メニューもハンバーグとかスパゲッティ、クリームソーダにパフェと昔のまんまである。

そして昔のまんまの味のハンバーグを食べた。美味とかそういう次元とはまた別のところにある、もう何十年も食べていなかった懐かしい美味しさだった。

煙モクモクの店内で隣に座ったのはヤンキーカップル。清水寺でなかなか香ばしいカップルの痴話喧嘩に遭遇したので、このふたりはどんな会話をするんだろうとワクワクしながら耳をそばだてていたけれど、予想に反して2人ともお店の人に礼儀ただしくちゃんとお礼は言うし、真面目に学校の話とかしているしで、感心した。見た目で判断してゴメンなあ。次に行った時もまだここにそのままいて欲しい、モンキーヒル

箕面ミスド一号店もある。昔はそれだけハイカラな街だったのだろうか(モンキーヒルの隣にはいかりスーパーもある)。ここで一服して、もう取り壊されて土地も売り、新しい家が建ってしまった祖父母の家の前を通って思い出に浸った後、阪急電車で東京じゃなくて京都に帰京。

大好きな阪急箕面線。いつも先頭に乗って運転手の動きや線路を見るのが好きだった。

今回ちょっと残念だったのは、ずっとマスクをしていたので阪急電車内のあの独特の匂いを思う存分嗅ぐことができなかったこと。音楽や匂いで急に記憶が蘇るように、思い出や経験の中に占める匂いって結構重要だと思う。どんなにバーチャル旅行が発達しても、これがないと経験は半減してしまうと思う。