愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ロンドンで、Crazy Rich Asians (クレイジーリッチ)とうとう観た!

日本でも「クレイジー・リッチ」というタイトルで公開された金持ちすぎる華僑の話、Crazy Rich Asians.

この原作本を3年ほど前に読み、クレイジー・リッチではないがクレイジー・アジアンではある華僑の嫁として、わかるわかる!と大はまりして、大好きな本の一つになったこの一冊。

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本を読んで、この話をぜひ映像で見てみたいと思ったものの、まさかアジア人しか登場人物がいないこの話が本当に映画化されるとは実際のところ思ってもみなかった。しかも主人公のレイチェルはやっぱりコンスタンス・ウーだよな・・と思いながら読んでいたので、まさにその通りの配役になるとは!!

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しかし足掛け3年この映画化を熱望していたのに、アメリカでの公開日前にロンドンに引っ越すことになってしまった陳家。

この映画の監督をしたジョン・M・チュウ、実はシリコンバレーにある中華料理屋の息子さん。そんな縁もあって、サンフランシスコのカブキシアターで開催された試写会には監督や出演者もやって来たそう。試写会行ってきた!と出演者のみなさんとツーショットにおさまる地元の知り合いのFacebookポストをロンドンからそれはそれは嫉ましく見たり、

サンフランシスコにいるアジア人の友人という友人達が、みんなそれぞれ大量のアジア人の仲間連れで大挙して映画館におもむき、観て来た!すごく笑って、そして泣いた!とコメントしているこれまたFacebookポストの数々を、指をくわえて羨ましく観ること1ヶ月・・。

ロンドンでも9月にとうとう公開され、ようやく観ることができた!!あー嬉しい。

しかし実際のところ、最初は仕事やお迎えの時間にかぶる時間しかやっておらず、なかなか行けず。公開後1週間経って、ようやく平日空いた時間に観に行ったところ、なんと今度は映写機の不調で観られないというアクシデントまで発生・・・(涙)

結局イギリス公開から2週間後にようやく観にいくことができた。しかも映写機のトラブルで見れなかったお詫びにタダ券もらったので、ラッキー。

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さてこの映画、原作がものすごく面白かったので、これを2時間でどうまとめるかな、きっと原作通り全部は盛り込めないだろうし、どちらかというと、小説にこれでもかと出てくるブランドものの数々や、スーパー金持ち華僑の暮らしぶりを映像で見れたら面白いだろうな〜、と小説のビジュアルエイド的な感じでの期待しかしていなかった。

でもアメリカで観た友達が皆笑った泣いたと言うので、逆に期待が高まってしまったのだが・・・


小説が好きすぎたせいか、なんだかすごく普通だった。


これは多分観た環境も悪かったと思う、何しろ月曜日の平日の映画館、最初はお客は私1人の貸切状態。その後途中でイギリス人の老夫婦が入ってきたが、そうでなくてもイギリスの映画館、行くたびに観客の反応が薄い。イギリス人老夫婦ならなおさら、面白いシーンでみんなでどっかんどっかん笑って楽しさ倍増、が期待できない。

そして私が原作で面白いと思った部分、どんな金持ちでもチャイニーズのセコケチスピリッツは不滅・・と言うエピソードがことごとく消えていたのもちょっと不満だったかも。

例えば、映画の冒頭、雨でずぶ濡れになってロンドンの高級ホテルにやってきたら、ペントハウスの予約をしていたのに、そんな予約はございません、と追い返されそうになったと言うエピソード。あれも本当はタクシー代をケチって、雨なのにグチャグチャになりながら歩いてきた、と言う部分が笑えるポイントだったのだが、それが入ってなかったのもあって、単に人種差別を受けたことに反撃して溜飲を下げるようなシーンになっていたので、あれっ?と思ったのだった。

そこからなんとなく・・多分イギリスで観たからかもしれないが、やっぱりこれ、映画にしちゃうとどうもボリウッドで観たことあるような話になっちゃわね?と言う気がしてならなくなった。

アメリカ育ちで超アメリカナイズされているデシ(インドの華僑みたいな呼び方)の女の子、実は付き合ってるインド人のボーイフレンドはマハラジャの家系だった、インドに行ってみたらびっくり!みたいな設定、ありそう。もしかしてそんな感じでリメークしてくれないかなぁ・・もっとキンキラキンな映画になるかもしれない・・)。

ミシェルヨーもちょっとお上品すぎたかも。でもまあ、この小説に登場するシンガポール華僑の皆さん、ハーバードはオックスフォードとかに落ちた人が仕方なくいくところ、スタンフォード?はぁ?なにその二流校、と言う位置づけなので、皆さんチャイニーズ的というよりはよりイギリス風のポッシュな感じなのかもしれない。

どちらにしろ、この話は、アメリカ風に育った主人公が、金持ち華僑の古い世界、そして植民地時代から続くイギリス偏向的な上流意識と文化に衝突するというもの。そして主人公に対峙する華僑の皆さん、どんなに上品に振舞っていても、彼らの中に時々見え隠れする中華的な迷信やセコケチやパラノイア、がこの話をより面白くしているのだと思っていたけれど、この映画ではその中華エッセンスの部分がちょっと薄かった感じがした。

それともやっぱり、アジア人の仲間と見に行かなかったのがよくなかったかなぁ・・。

この映画、話の内容もさることながら、全キャストアジア人と言うところが歴史的だったので、そういう部分も増し増しで、アジアン・アメリカンの友達たちは余計に泣いたり笑ったりしてたみたい。そういう底上げがロンドンの平日の真昼間の映画館にはなかった・・・。

見に行った知り合いの中には、「Crazy Rich Asians見てきた!だってそうしないといけないから(笑)」、と自分の意思と言うよりは親や周囲の意思で行動する典型的なアジアン・アメリカンの行動パターンを揶揄したポストをしてる人もいたけど(笑)そんなアジア人大動員が功を奏したのかどうか、アメリカではラブコメ映画としては10年間で売り上げナンバーワンの作品になったのだとか。

金持ち華僑の面白小説を映画化したこの話、一方で、インクルージョンとかダイバーシティとかを代表するという役割も果たしてしまったので、色々アメリカでは話題になったけど、実際、アジアン・アメリカンじゃない人にはこの映画はどのように見えたのか、すごく気になる〜。

舞台となったシンガポールでは、やっぱり「この映画は本当のシンガポールを表現していない!インド人や他の人が描かれていない!」という批判がたったり、本当のシンガポールを知りたいなら、こんな映画よりこっちがおすすめ、と貧困の中がんばる主人公の映画が紹介されていたり。いや、この映画はただの金持ちコメディですから、そこまでイキらなくてもいいんでは・・・と思ったり(笑)

日本での売り方は、もう普通に少女漫画的に、普通の女の子と金持ちのボーイフレンドのロマンチック・ラブコメディみたいな感じになってるみたいだけど・・。まあ移民文化のどうこう、と言う売り方では多分それほど理解はされないだろうから、マーケティング的にはそうするしかないんでしょうねぇ。

でも、これだけ興行成績が良かったので、映画の続編も期待できそうなのがとても嬉しい。

この小説、三部作になっていて、第2部はレイチェルが父親を探して大陸に渡ったり、ジェンマ・チャンが演じたアストリッドにもっとスポットライトが当たったりして、さらにえげつない大陸の成金の世界が見えて面白い。第3部は遺産相続の話。

どっちかというと映画よりもNetflixのシリーズ的な感じでもっと丁寧にやってほしい気もする。

そして最後に・・・映画を見ている間にずーっと気になってしまったこと・・・

ソンナノ関係ネェ!ソンナノ関係ネェ!(古)

この役者さんイギリス人とマレーシアのイバン族のハーフ。小島よしおもポリネシア系・・?ピーヤピーヤ

クレイジー・リッチ・アジアンズ 上

クレイジー・リッチ・アジアンズ 上

クレイジー・リッチ・アジアンズ 下

クレイジー・リッチ・アジアンズ 下

日本語訳も出たのかー

夏の思い出2018➄ ロンドンこども料理教室

料理だったら家で手伝ってくれればいいものの・・・と思いつつも、夏休みベーキングを習いたいという小さいさんの要望で料理教室2件に参加した。そういえばアメリカでは料理教室に行ったことがなかったが、ロンドンでは以前も大手スーパーWaitroseの子供料理教室に行ってとても楽しかったのを覚えていたらしい。残念ながら今回Waitroseのクラスはいっぱいだったので、別のところに行ってみた。

ジェイミー・オリバーの料理教室でピザを作る

兄ちゃんからいい感じのおっさんに変貌を遂げた有名シェフ、ジェイミー・オリバーの料理教室。シェパーズ・ブッシュの巨大ショッピングモールにある彼のレストランに隣接している。

ここで親子でピザを作る教室に参加。大人1人分の料金で、親子それぞれピザを1枚ずつ作れるクラス。

レストランの厨房の向こうに料理教室専用の施設がある。

こういうところに参加すると、みんなワーワーおしゃべりするかと思いきや、大人も子供もずいぶん恥ずかしそうに佇むのがロンドン風。参加者の中にはどうも他の国からの旅行者もいたようだった。

テキパキと子供たちにも真顔で対応するお姉さんによるデモンストレーション。めちゃくちゃ真顔だったがこれは別にアンフレンドリーというわけではない。そういう人の方が意外と子供に慣れていたり、真顔のユーモアや優しさというものが存在するのである。そしてイギリスには以外とそういうものが多い気がする。自分も子供に対してはそうしてしまう傾向があるので、結構好きな感じである。皆さ〜〜ん、コーンニーチはー!とかはしないでも全然オッケーなのである。そして子供も俄然ついてくる。

子供が作業しているのを親は後ろから見守るだけでも別にいいのになぁと思いつつも、私も一緒に種を作りこねて発酵させる。もちろん発酵をじっと待つ時間はないので、「さてこちらが2時間発酵させたものです」とテレビお料理教室よろしくすでに準備されたものが配られた。

あとはもう、生地を伸ばして、☆みんなで楽しくピザをデコっちゃおう♫ である。

料理をする上で充実感も疲労感を感じる部分は、タネをこねたりピザをデコる部分ではない。材料を用意し、粉を計量し、材料の皮を剥き切り揃える何より下準備である。こういうお料理教室はそういう部分は全て事前に用意されていて、綺麗に容器に必要な分だけ並べられている。だから楽すぎる。習っているのはあくまで料理のプロセスの一部だけである。

子供が家で料理手伝いたい、と言ってもいつも下準備のところで飽きてしまう。まあね、鍋をふるい火を御し・・と派手な部分が楽しいのは仕方ない。だからこういうクラスは家でやるより楽しいのは確か。片付けもやってくれるし。

参加者は皆粛々と自分たちのピザに向き合っていたが、市長の異名をとり道端でもどこでも友達を作ってしまう小さいさんがここでおとなしくしているわけもない。クラスが始まる時に隣に座った男の子にターゲットを絞り、マインクラフト話でがっつりその子のハートをつかみ、クラスのあいだ中2人で大盛り上がりしていた。

あちらのお母さんは「こんなにすぐに打ち解けるなんてとても珍しい」と若干戸惑い気味でもあったが、市長と市長の親にとってはこれが日常・・。その日に出会った子供とすぐプレイデートを要求したりするので、市長の親はそれを笑顔でスルーしたりと、なかなか大変なのである。

焼けたピザはその場でみんなでいただき、最初に作った生地は持ち帰り、家で伸ばして夕食もまたピザになってしまった。実際のところ作ったピザはなかなか美味しかった。何が違うかといえば、多分発酵に使っているイーストが生のやつなことと、ソースかもしれない。多分このレストランでも同じピザを出してるんだろうか。

ちょっとここのレストランの料理も食べてみたくなった。

www.jamieolivercookeryschool.com

Bread Aheadでケーキを焼く

Great British Bake Off という番組もこよなく愛する小さいさんは、ケーキも焼いてみたいそうで、都合よくそんなクラスも見つけた。

食いしん坊のパラダイス、バラ・マーケットに店を構えるパン屋Bread Aheadの子供向けベーキングクラスである。実はここ、以前私もパン作りのクラスにちょっと目をつけていたところであった。

バラ・マーケットから始まったこのパン屋、Sloane Squareにも店があり、今回はこの2階のキッチンでのクラス。

パン屋って朝早いし重労働だし一つ一つの単価はそれほどでもないし、商売としてやるには本当に好きじゃないと大変だろうなと思うが、やっぱりこういうのをみるとウホウホしてしまう。店先にはすでに親子連れが神妙に座って待っていた。

ここで作ったのは、ラズベリーのケーキと、ショートブレッド。これは親は後ろで見守り子供が作業をする。時々手伝ったり一緒にやっても良いのだがなるべく手を出さないように見ていた。

しかしー、ただ見守るだけということがどれだけ大変か!とにかくお調子者の小さいさんはまず先生の話を最後まで聞いていない!そして作業もマイペースすぎてどんどん置いていかれるのである・・・。

実際にバターと砂糖を混ぜてクリーム状にするのは大変ではあるのだが、手を、手を出したい・・・作業を乗っ取りたい・・・グググググーーーっと我慢する。

材料の計量はもっと大変で、砂糖を30グラムというのが難しい。ザザザーッと入れてしまい50グラム。そこから今度は減らしすぎて25グラム。足そうとしたらまたザーッと入って今度は46グラム。次はまた減らしすぎて・・もう猿が作業しているのをみるようでキィィィ・・・ええい貸しなさい!と親が計量してしまった。

型に生地を流し、途中ラズベリーも入れ、さらに生地を流して混ぜる、これはraspberry ripple loaf cakeと呼ばれるもの。ripple cakeというのは初めて聞いた、アメリカだったらswirl cakeみたいなもんだろうか。焼いている先からとてつもなく良い匂いがした。

ケーキを焼いている間に、ショートブレッドも。これも軽く奥歯を噛み締めながら子供の計量を見守る。生地を丸めて伸ばして・・。型抜きも非常に非効率な方法でやるのでグググと思うが、思えば子供の時は不器用だった(今でも決して器用ではない)私が今なぜかちゃんと手際良い方法を理解して身につけているのだから、8歳の子供ができないからとてイラつく必要はないのである。長い目でみちょってや〜。

この教室のインストラクターもかなり事務的にぱっぱと教える人で、おとなしそうなアシスタントが1人ついていた。インストラクターが「余ったラズベリーはケーキに入れてください、なるべく早めに処理しないとここにいるアシスタントが盗み食いしますので」と真顔のまま言った時には、冗談を言ったと気づくのに10秒ぐらいかかってしまった。こ、これが・・・ブリティッシュジョークってやつか!!!

小さいさんはここでもちょっとおふざけモードだったが作業が多かったので、話聞きなさい、集中しなさいとちょっとハッパをかけなければならなかった。それでも隣に座っていた子となんとなく話し始め、聞けばカリフォルニアからの旅行者だった。

出来たショートブレッドはお店の袋に入れてくれて、ケーキとともにお持ち帰り。どちらも甘すぎず、特にケーキが美味しかった。そう、イギリスのケーキは砂糖の量がアメリカと比べてちょうど良いのである。

今度はここでクロワッサン習いたいなぁ。

www.breadahead.com


以前参加したWaitroseの料理教室はこちら

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職場の変遷日記

今週から仕事復帰した、タイミングがよかったのだろう、6月にロンドンについてすぐにレジュメを送り始めて、7月にインタビューを2回ぐらいしてあっという間に決まってしまった。もう面倒だったのもあり最初にオファーをもらったところで決めて就職活動は打ち止めとした。でも引っ越し荷物も届いていない、子供は夏休み、学校も決まっていない、というか少しは遊びたい・・と思っていたら9月からでどうですかとあちらからオファーがあり、ありがたく夏の間は楽しませていただいた。就職進学が決まって始まるまでにまだ間があるという感覚は一番余裕があって良いものである、収入はないがまだ仕事のプレッシャーも何もない。良い夏休みであった。

新しい職場は小さいイギリスの会社で、小さいからかとても緩い。フルタイムじゃなくてもいいよというので出勤は週3日にしてもらった。しかも出勤日は毎週同じでなくても良いし在宅でも良いそうだ。そして何かよくわからないがみんなとても優しい。ギスギスしていない。初日私がコンピューターの画面からふと顔をあげるだけで横に座っている同僚が「大丈夫?」と何かわからないことがないか心配してくれる。お茶も入れてくれる。

ボス曰く「みんな時間中は一生懸命働くけれど、アメリカと違って一度コンピューターを閉じたら夜や週末までメールをチェックしたり返事をしないといけない文化じゃないから」とのことで、この会社の社風もあるのだろうがやるべきことをやったら後は自由な感じらしい。On your ownの部分もあるが基本聞けばみんな助けてくれるし、とても親切な環境、まだ本格的に仕事はしていないから実際の所はまだアレだけどそこは本当に良かった。昨日は出社日だったが、みんな出払っていてオフィスに誰もいないから家で仕事していいよ、と突然言われたりもした。

ロンドンに引っ越してからは車も無いし、どこにでも徒歩と電車バスで行く生活になり、毎日の平均歩数が1万5000歩とすごいことになっていたが、仕事を始めた途端にそれが3分の1になってしまった。子供のお迎えは私の役割なので、仕事中はとにかく時間に追われている感じがして、デスクの前でずーっと固まって座っている。4時になったらダッシュでバスに乗る。慣れたらもう少しどうにかしたいが、やはりオフィスワークは意識しないと不健康になる。家に帰ってご飯を作って子供に食べさせ、宿題させたりなんやかやしたらそのまま子供部屋の床で寝てしまった。このままでは運動不足なのに疲労してしまう。

新しい仕事が始まった途端にアメリカにいた時フリーランス的にやっていた某社の仕事の依頼まで来た、ここは腐れ縁の変な男のように忘れた頃に変なタイミングで連絡をしてくる。新しい職場もこの腐れ縁のことは承知で、別に関係を続けても良いとのことだったので対応する。

たまたま担当チームがロンドンにいるというので初めてロンドンオフィスに行ってみた、金融街のど真ん中である。シリコーンの谷の会社なので、狭いオフィスにボスが注文したペーパータオルの山が積み上がっている今の会社とは大違いである、広い、明るい、内装おしゃれ、食べ物が積み上がっている。そういえばカリフォルニアにいた頃はこれがデフォルトであった。ちょっと大変な案件で、PMはこれが日本だったら修羅場風な空気になりそうな状況でもクールを保っていたのには感心した。こういうオフィス環境で仕事をするとまさしくかっこよく仕事している感じがして多少の無茶振りもしょうむないことも我慢できるというもので、アメリカ時代は私もずいぶんそれで自己欺瞞に陥りながら長年仕事していた気がする。しかし11時になってもインボックスに入ってくるPMからのメールを見ていたら憐憫の情もふつふつと湧いてきた。この人はイギリスの人だが、アメリカの会社でアメリカ人の働き方をしているのであった。ああやっぱりもうオフィスが素敵だろうがこういう働き方はできないお年頃だ。

これからしばらくはイギリスでイギリス式の働き方というのをちょっと見て来る。本当にこの会社が緩いだけかもしれないが、夜中の11時にメールはこない代わりに、真昼間にボスが会議室で居眠りしている隠し撮りビデオが送られて来た。

夏の思い出2018 ➃ パジャマで、屋外で、ステージで歌うグレーティストショーマン

今年我が家のカーステレオから一番流れたのはこれ

アカデミー賞でのThis is me のパフォーマンスにえらく感銘を受けた小さいさん。以来、車の中でも家の中でもこの映画のサントラが我が家では無限ループで鳴り響いている。

家族で見れるような無難な作りになっているこのミュージカル映画、他のご家庭でも状況は似たようなものだった様子。今年の夏はどこへ行ってもグレーティストショーマン三昧だった。

女子10人でパジャマパーティー

引っ越し直前のお別れ会とちょっと早い誕生日会をかねて、我が家にクラスメート女子10人ほどを呼ぶことになった。

お泊まり会を所望していた小さいさん、でも子供10人の合宿は無理ー!そうじゃなくても引っ越し前のワンオペなのに、絶対無理ー!ということで、雰囲気だけでも味わってもらおうと、夜9時までのパジャマ&ムービーナイトでごまかした。

みんな着替えとブランケットを持ってきてもらい、もちろん見たのは「グレーティスト・ショーマン」

8歳の女子って、まず映画を黙って見るわけがない。

「あー!!ダメ、そこでキスしちゃダメ!奥さんのこと考えて!!」

「何、この2人浮気しちゃうの?で、奥さんとは離婚?」

「しない、しないよ!」

「ちょっと、話バラさないでよ!」

「っていうか離婚って言葉禁止!うちの親、最近離婚したんだから!!パパが1年刑務所に入ってさ・・」(え、ええーっ?!)

最後は家のカウチをバンバン飛んで、音楽に合わせて歌う踊るの大騒ぎ。子供にピザを振る舞い、クラフトテーブルまで用意して、10人の女子と1人で向き合うこと6時間。

途中友達が差し入れを持ってきてくれたり、他の親もヘルプを申し出てくれたのに、寝不足と疲労の日々が続いて私も頭がおかしくなっていて、逆になんだか全部1人でできるような気がして・・、そして結局1人で全部やりきった。経験値大幅にアップした気分。

途中、4人きょうだいシングルマザーの家庭の子が私のところに来て、「You're doing such a great job. うちのママなんて子供4人だけでもうヒイヒイ言ってるよ」。そりゃあなたね、毎日やるのとは違うのよ!と突っ込んでおいたが、アメリカの8歳児はこういうことを平気で言うのである。

夜中まで友達と一緒でハイパーになった子供達。迎えに来た親たちに引き渡し、全員を送り出してやれやれとリビングを見るとリビングのカーペットにはポップコーン散乱、ジュースが入ったコップがカウチの下で倒れ、家の中は暴動にあった後のようになっていた・・・しかしかしまし娘たちに囲まれて、一緒にワイワイして楽しかった。子供って面白くて可愛い。

野外劇場でみんなで合唱

夏のロンドン、色んなところで野外映画上映会をやっていた。場所は公園だったり、街の広場だったり。そしてこういうところでも、グレーティストショーマンの人気は高くあちこちで上映されていた。

ハマースミスの広場では、映画に合わせて一緒に歌うsing alongでのグレーティストショーマン。フローズンだ、サウンドオブミュージックだ、画面にカラオケ風に歌詞が出てきて、みんなで一緒に歌いながら映画を鑑賞する会というのはアメリカでも結構あった。

この会場では、無料上映ではあったがピクニックチェアーが用意され、椅子にあぶれた人には、空気を入れて膨らませるプラスチックの座布団みたいなものまで配ってくれた。何かこういうちょっとした気配りが、アメリカとちょっと違う。こういうのをおもてなし、というのだろうか。っていうか太っ腹だなあ。

子供たちは一生懸命歌っていたが、意外と恥ずかしがり屋のイギリス人、大人は温まるのにちょっと時間がかかる。それでも歌の場面になるとマイクが回ってきて、思わぬ屋外カラオケ大会に。マイクが回ってきて歌った人には、記念品が贈呈されるというおまけまでついていた。

隣に座っていた大人グループは、だんだんお酒が入ってノってきたようで、ザック・エフロンが演じるキャラクターが火事の火傷で寝込んだシーンでは「ザックー!頑張って!起きて!」と大声援。

映画が終わると子供達がもらった座布団を投げて遊び始め、横綱に土がついた国技館のようなことになっていた。

そして小さいさん、舞台に立つ

長い長い夏休み、どうやって子供の時間を潰そうかと思案していた時に飛び込んだのが、演劇クラスのワークショップのチラシ。1週間かけてグレーティストショーマンの歌や踊りを覚えるんだとな!

ロンドンに来ていいなと思うのは、こういうクラスを至る所でやっていること、なので競争率も激しくなく、申し込みも結構ゆるーくできること。我が家もクラスが始まるギリギリ直前に連絡して入れてもらった。

アメリカでも以前、地元のダンススクールがやっているミュージカルのキャンプに行ったことがあったが、今回のクラスはウェストエンドで実際にミュージカルに出演している役者が指導してくれる!なのにアメリカの地元の習い事より格段に値段が安い。

つい思わず通っている生徒の人数からこの1週間での収益がどれくらいになるのか試算してしまったが、さすがに芸術関係の層が厚いロンドン・・地元のちょっとした演劇のお稽古事なのになんだか贅沢すぎる。

小さいさんはチャリティ(主人公の奥さん)役をもらって来て、2人の子供役の子たちに実際ママーママーとずいぶん懐かれていた。

セリフもそれなりにもらってきた小さいさん。歌に関しては、もうどこのお子さんもこのクラスを取る前から完全にマスターしていたと見られる。そこに結構複雑な振り付けがつき、最終日の本番は、1週間でまとめたとは思えないくらいの仕上がりになっていた。

1人アメリカンアクセントだった小さいさん(いや、本来はこれアメリカの話だw)、思ったよりセリフもちゃんと言えており、本人もまんざらではなかった様子。また舞台に立ってみたい、と言い始めた・・。実は私も学生時代は演劇部。音楽で舞台に立つことも多かったが、それが何であれ、実際舞台に立つのは、楽しいんだよね・・・。

しかしやっぱりヒュージャックマンは格好いいなー!あれだけ歌ってあれだけガチで踊れてもうすぐ50歳・・・!!!そしてリアルなPTバーナムの話、こんな綺麗事じゃなかっただろうなー本当はどんな人だったのか、ちょっと調べてみたい。

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ギルドホールのギャラリー

サラリーマンが行き交う金融街にあるバンク駅。

地下鉄の駅を出ると、歴史も質感も重厚な石造りの建物、銅像の数々。白い背景の街を行き交うビジネスマンは皆ダークスーツ。

シャープで格好良く見えるけど、オフィスの窓から見えるデスクはコンピューターのモニターがぎうぎう、そしてデスクの上に置いてあるのはコーンフレークの箱。やれやれお疲れ様です。

ちょっと自由時間があるうちにと、行きたい所に目星をつけてここにやってきたけれど、ふらふらと歩いていたら、ふと目に入った建物に吸い込まれてしまいました。

ギルドホール。

ギルド、歴史の授業で習った、中世の同業組合。日本で言ったら農協とか漁協とかのもっとすごいやつ・・ってちょっとだいぶ違うか。1411年に建てられたというから、日本でいうと室町時代

やっぱり古い建物は、雰囲気が違う(全部が当時の建物ではありませんが)。色々なものをくぐり抜けてきた、凄みがあるというか。そしてこの空間の感じが、なんとも言えません。

ギルドホール、王室の支配とはまた別に、ロンドンの経済、そして政治を牛耳っていたギルドの力の象徴、権力の中心地だったと言えるのかな。これまた歴史で習った宗教改革が起きた時は、王室関係者の裁判もここでしたそうです。

ロイヤルファミリーに反逆罪で死刑!などと判決を下したこの場所、現在はイベント会場にもなっていて、色々なパーティーや会合に使われています。なんかすごいんですけど!私が行った時も、ケータリングのトラックが色々搬入中でした。

そして建物の一部はアートギャラリーになっています。太っ腹のロンドン、ここも入場は無料です。

建物の中に恐る恐る入ると、赤いカーペットのちょっと古臭い内装のフロアに、ラファエル前派、ヴィクトリア朝時代の絵画が並んでいます。

実はラファエル前派と言われても詳しくは知らなかったのですが、ここではヴィクトリア時代の人々の生活、変わりつつある世相など、テーマ別に絵が並べてあり(例えば当時のデートの仕方とか)、当時のイギリスの人々の日常や風俗を知るという点でも興味深いです。

静かなフロアには小学生のグループが遠足でやってきて、学芸員の説明を足をプランプランさせながら聞いています。本当にそれくらいしか人がいなくて寂しい・・

と思ったらこのギャラリー、地階がすごいことになっていました。ここからは、もう個人の勝手な興味で気になったところだけを。

絵というより空間が気に入って撮った写真。なので角度が微妙ですが、一番右側にかかっている赤いガウンの絵は、私が勝手に「火事場判事」と名付けた人の肖像画です。

1666年、ロンドン大火と呼ばれる大火事がありました。今はレンガ石造りの建物ばかりのロンドンですが、当時は木造の建物ばかり。犠牲者は少なかったらしいですが、街の4分の1が焼けるなど、建物への被害は甚大だったそう。今でも子供たちはこの時の火事のことを歌った童謡を学校で習ってきます。

そんな火事のあとの補償調停をするために、専門の法廷が作られ、22人の裁判官が任命されたそう。この変な角度で写っている赤いガウンの人はそのうちの1人です。22人全員分の肖像画が描かれたのが、ギルドホールのアートコレクションの始まりなんだとか。

22人の裁判官の肖像画はギルドホールに長年飾られていたそうですが、戦争中ドイツの空襲で焼けてしまい、今では2人分しか残っていないんだそうです。

1700年代のコベントガーデンを描いた絵の前では、二人連れのおばちゃんが「見て!この建物の2階今の私のオフィスよ!」と大フィーバー。今ではオペラハウス、レストランやお店が立ち並び観光客でごった返す場所ですが、その頃は市場。野菜や果物を売っている屋台が描かれていました。

「今ここら辺にアップルストアがあって」などと盛り上がる2人の会話、後ろから「今も昔もここではいろんなタイプのりんごが買えまんねんな」と突っ込みたくなりましたが、できなかった・・

火事で焼け出されたり、空襲にあったりと大変だったギルドホールですが、ロンドンの街は大戦中、数多くの空襲で大きな被害を受けました。ドイツからの空襲のことはこちらではブリッツ、と呼ばれています。

これは空襲の被害をまとめた地図の一部。戦争が終わった後の復興計画の参考になるようにと、空襲があると調査員が行って被害を確認し、作ったのだそうです。ずいぶん先を見越していたんですね・・。建物の被害ごとに色分けがされています。

そういえば日本で空襲の被害の細かい記録ってつけられたんだろうか。ロンドンのはすごく細かく残っていて、Google Mapでも確認できるようにもなっています。これで家の近所を見てみると、実際比較的新しい建物が建っているところは、空襲受けた場所だったのがわかったりする・・。

ロンドン数学会の展示もありました。

ユークリッド幾何学の教科書だそうですが、19世紀にこの色使い、可愛い!

ここで気になったのが、女性数学者、エイダ・ラブレスという人のこと。ロンドン数学会の初代会長、オーガスタス・ド・モルガンに教えを受けた人物としてここでは紹介されていたのですが、詩人バイロンの娘で、当時別の数学者によって考案された「解析機関」、いわばコンピューターの前身的計算機の研究をしていた人だそう。

Ada Lovelace.jpg
By Margaret Sarah Carpenter - Art Work Details page.
Original upload was at English wikipedia at en:File:Ada_Lovelace.jpg, Public Domain, Link

この解析機関、実際作って動かすことは当時の技術では無理だったようですが、彼女の考えは計算の先を行く、コンピューター音楽やAIにつながるものだったそうです。

細かい説明は読んでもちんぷんかんぷんでしたが、そんな女性がいたのをまず知らなかった、19世紀にすでにそんなコンセプトを持っている人がいたのがすごい、そして彼女を世界初のプログラマーと呼ぶ人もいるそうです。世界初のプログラマーが女性!!しかもビクトリア朝の時代!!たまらん!

数学会の初代会長の息子さんはウィリアム・デ・モルガンと言って有名な陶芸デザイナーなんだそう。彼の展示もどーんとありました。

欲しい。

数学者の息子である彼も数学がとても得意だったそうで、彼のデザインは数学が生かされているんだそうです。二次関数なんて何に使うのかわかんなーい、人生で使うことなんてないしぃ、なんて言って数学を投げ出そうとしている中高生のみなさん!!

数学は人生で使います。思いもよらない世界が開けます。やっとけ!!

でも彼のデザインにどう数学が生かされているのか私には説明できない・・なぜなら文系受験と言って数学投げたからw 社会人になってからきちんとやっておけばよかったと後悔、今頃頑張ってますが苦労してまっせー

ウィリアム・デ・モルガン、その後陶芸、タイル制作がビジネスとして芳しくなくなると、文筆家としても才を表し小説を出版したりもしています。うーん、ルネッサーンス。

さらに驚くべきことに、このギルドホール、実はローマ時代の遺跡の上に建てられていることが、結構最近判明しました。

ローマ時代の円形劇場(ちょっとぶれました)!!地下に降りていくと、発掘した姿を見ることができます。

グラディエーターとか、映画でやってたようなあんなことやこんなことが、この場所で行われていたんですね・・。ここで実際にどれだけのことが行われていたかは確かじゃないみたいですが、ローマでは一度に数千人規模の人が死ぬような闘剣スペクタクルもあったんだとか・・・。

人々が闘剣に熱中したのは、今でいうとガチのプロレスみたいなもんだったんだろうか。そこには死を恐れぬ勇気を讃える面もあったとは言いますが、人が死ぬのを見るのがエンターテイメントだった時代って、嫌すぎる!!処刑なんかもこういうところで行われたとか。

それにしても、ローマ人って本当に遠くまで来たんですねぇ・・

そんないろんな人が入れ替わり立ち替わりやってきて作られたロンドン、現代でもいろんなところから人が入れ替わり立ち替わりやってきているわけで、実はそんな流れは昔から変わっていないのかもしれない。

ロンドンって、街の歴史からしてもう深くて複雑で面白くて、知れば知るほどはまってしまいます。もともと行くつもりではなかったギルドホール、フラッと入ってみたらなかなか面白いものが見れました。

ギルドホールの近くには、そんなロンドンの歴史そのものを知ることができる博物館もあります。また機会があればここにも入り浸りたい。

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