愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

3人の男と犬が船に乗って珍道中

去年の9月、テムズ川のボートレースの話を書いたところ、セネシオさん(id:cenecio)から、"Three Men in a Boat (To Say Nothing of the Dog)" を思い出す、とコメントをいただきました。

そのことについて、ちゃんとフォローアップを書いてなかった!のでここでひとつ。

コメントいただいて調べたところ、"Three Men in a Boat (To Say Nothing of the Dog)" は、3人の男と犬1匹が、テムズ川キングストンからオックスフォードまでボートを漕いで休日を過ごす様子を書いた小説で、1889年(明治22年!)に出版されています。

Penguin Classics Three Men in a Boat

Penguin Classics Three Men in a Boat

そして1975年、BBCがこの小説をもとに作ったテレビ映画をオンラインで発見!

出演者のひとりは、モンティ・パイソンの役者マイケル・ペイリンでした。いやー若いね!まずこっちを家族で鑑賞しました。

仕事と都会の暮らしに鬱々とした主人公が、思い立って友人2人を誘い、Waterloo駅から電車でロンドンの南、テムズ川沿いにある街キングストンに向かい、そこからボートを借ります。ボートといっても、手漕ぎボート!

3人はこれをえっちらおっちら漕ぎながら、船にテントを張ってキャンプしながら、オックスフォードを目指します。

しかしもちろん簡単にことは進まず、途中色々なてんやわんやがあるのですが、テムズ川沿いの観光名所を紹介しつつ、面白おかしなことが起こる、その土地の観光歴史案内兼コメディ仕立ての小説になっています。

イデアとしてはちょっと東海道中膝栗毛っぽい感じとでもいいましょうか。

この小旅行のきっかけは、どうも体調が悪い・・・と感じた主人公が、大英博物館に行って、そこで医学書を引っ張り出して自分の症状を調べたこと。

すると読めば読むほど全ての病気に当てはまる気がしてきて(コレラかも・・腸チフスかも・・)ああ、余計調子が・・と心配になって医者に駆け込んだことがはじまり。

あそこが痛いここが悪い、あの病気じゃないかこの病気じゃないか、という主人公にお医者さんが処方したのは

  • 1ポンドのビーフステーキと1パイントのビールを6時間おき(って結構な量!)。
  • 10マイルの散歩を毎朝1回。
  • 毎夜11時に就寝。
  • よくわかりもしないことに頭を突っ込まないこと(笑)

働きすぎの運動不足の神経衰弱ってところですが、今の時代も、ネットで自分の症状を色々調べているうちに、必要以上に深刻な病気なんじゃないかと心配になって、余計に具合が悪くなる・・っていうの、あるある!

当時はインターネットはないけれど、その代わりに大英博物館に行く、というのもちょっと興味深いです。大英博物館、一般の人にそういう活用されていたのね。

ハンプトンコート・パレスやマグナカルタ島など、色々な場所に寄り、途中大雨に降られたり、旅の途中でいろんな忘れ物に気づいたり。

そして旅の最後も結構グダグダになってボートを置いてロンドンに帰っちゃうところなど、いかにも野郎3人の行き当たりばったり旅って感じで愉快です。

そして食べ物にばっかりに目が行ってしまう身としては、いろんな食べ物が会話や実際にちょこちょこ出てくるのも楽しかった。できたら小説に記載されている食べ物アイテムを一つ一つ検証したい衝動に駆られています。

めちゃくちゃに材料をぶち込んで、川辺で作るアイリッシュシチューもどき。

ランチは何がいい?ランチは軽めにいこうか、「ゆで卵から始めて、コールドビーフに、ポッテッド・シュリンプ(小エビをナツメグなどのスパイスが入ったバターと一緒にした瓶詰め)、ドレスド・クラブ(カニ肉とカニ味噌とパン粉を混ぜたもの)のどっちか。それか両方をちょっとずつ。パンとバターと、トマトも一緒に。締めはハムだけど、そのあとちょっとチーズを食べよう。それか、パイナップルの缶詰!またそのあとチーズをちょっと。」

しかしコールドビーフにつけるマスタードを忘れ、パイナップルの缶詰は缶切りを忘れ。

パイナップルの缶詰がどんなにいいかをしみじみ語りあい、パイナップルへの夢が広がったところで缶切りがないことに気づいた絶望感、そしてなんとか缶詰を開けようと悪戦苦闘するさまは子供に大受けで(こちら)、我が家ではしばらく缶詰を開ける時には「ああああ!ああああ!」と変な声をあげるのが流行ったほど。

シチュエーションとしてはベタベタですが、明治時代のコメディとしては上出来です(笑)。

結局最後は冷たい雨に降られてテンションがだだ下がり、ロンドンに戻ってレスタースクエアの劇場アルハンブラで演し物を見て、安くて美味しいフレンチレストランに行くのはどうよ・・・バーガンディーワインの1−2本もつけてさ・・となるのですが、テレビ映画の終わり部分は、なんだかちょっとだけ「スタンドバイミー」っぽい感じもして、もわーんと暖かい気持ちになるというものでした。

旅のお供についてくる可愛い飼い犬の名前は「モンティ」。本名は「モントモレンシー」というのもなんか可愛い。もし犬を飼ったらそういう名前にしたいかも・・。

この時代、テムズ川をこうやってボートで行ったりきたりすることが、レジャーとして大いに流行ったという背景もあったようです。そして続編としてドイツでチャリンコ旅行する話もあるんだとか!それ読んでからドイツに行ってみようかしら。

おお、日本語訳も、ありました!

ボートの三人男 もちろん犬も (光文社古典新訳文庫)

ボートの三人男 もちろん犬も (光文社古典新訳文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)

この本、どうもインドの中学生が授業で読まないといけないらしくて(最初イギリスかと思ったらインドでした)、ネットにあがってた映画のところには、「明日試験だから助かった、うp乙」的なインド人中学生からのコメントがいっぱいついてました。

本は著作権切れで、インターネット・アーカイブから読めます。まだ読めてないんですが・・映画では端折られたいろんなエピソードもあるだろうし、早く読みたい。挿絵もなんだか良い。

archive.org

そういえば、漱石がロンドンに来たのはこの本が出版された翌年。彼はこんなのは読んだのだろうか。

3人のコメディアンがボートに乗って似たようなことをするシリーズBBCで放送されたりもしていました。ちょこちょこ見てるんですが、ピンク・フロイドのギタリストがでっかいボートハウスをスタジオに改装してるところにお邪魔したり、なかなか面白いです。ただ使うお言葉がちょっとお下品なので、子供と見れないのが玉に瑕。

というわけで、小説から色々な世界が開けてなかなか楽しいことになりました。セネシオさん、改めてありがとうございます〜!