愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ロンドン2016㊱ ミシュランスターレストランの厨房に立って見ての雑感

毎回旅行の際、現地で色々気になった小さなことを箇条書きにする「雑感覚え書きシリーズ」。自分の中では結構好きな観察日記シリーズです。そうだ、このタグを作っておこう。

ミシュラン一つ星レストランの厨房に立って働いてみるという夢のような経験、を実力ではなく金で解決という形で実現してみた今回のロンドン滞在。その中で色々印象的だったこと、気になったこと、面白かったこと、考えたことなど。

実際の経験を3回に分けてまとめた記事はこちらから

marichan.hatenablog.com

一つの材料、使う量が少なー。

一皿に、調理した食材を8種類も9種類も載せるので、実際に使う食材の量は意外と少ない。なので、冷蔵庫に入っている食材の量が意外と少ないのに驚いた。でも主婦的感覚で、つい一皿一皿ごっそり盛り付けしそうになるのを押さえるのが大変だったw

無駄な動き、もっとカットできるのかも

一流レストランに素人が立たせてもらって僭越ではあるけれど、プレーティングだけでももっと動きを効率化できるんじゃないかなと思った。とにかく盛り付ける食材がバラバラに保管されていて、それを出したりしまったりするのに毎回あっちこっちに行かないといけなくて難儀した。料理ごとに必要なアイテムをまとめて保管するとか、工夫とかあってもいいんじゃないかなーとも思った。

スクイーズボトルの呪いw

このレストランに限らず、色んなレストランの盛り付けに多用されるスクイーズボトル。

ソースで模様を描いたり、コントロールがしやすく便利だけれど、底にソースが固まってなかなか出てこないことが何度も何度も!

毎回ボトルの底を叩きまくり、ようやくできたと思うとまたボトルを元の場所にしまい、またソースが底に溜まるの繰り返し・・。これは時間が押している時かなりイラッとして、ついFワードが口をついたw

まだまだ知らないハーブの世界。

料理やデザートに添えられているハーブ類、アメリカでは聞いたことのないもの、見たことの無いようなものも多かった。ちょっと口に入れるとすごく良い匂いがしたり、適度な酸味があったり。メモ取る時間なくて残念。

Kitchen Awareness大事

厨房で役に立ちたければ、周囲の流れや他のシェフの状況を俯瞰的に見ることができる意識がとっても大事。これを、ビル・ビュッフォードさんはkitchen awareness と呼んでいた。これって日本語だと単に気配り、になっちゃうんだろうか。

状況に合わせて手を貸したりすることは厨房だけじゃなくていろんな面で大事なのは当然だけれど、限られた時間で物理的にわーっと物事を作り上げていく時には観察力、理解力に加えて瞬時の判断力、瞬発力も必要だなと思った。

何より体力勝負

とにかく長時間、熱いキッチンで立ちっぱなし、動き回りっぱなしの肉体労働。体力無いとやっていけない。シェフの人達が若いのも当然か。結構体を鍛えているシェフも多い。

今回は、旅の後半にこの予定を入れてしまったのが、一番の後悔。もっと体力のある前半に行って、ディナーシフトまで働きたかった。あああ今でもとても悔しい!

まだまだ男の世界?

このレストランのシェフはペイストリーシェフのひとり除いて全部男性。なのでやっぱり雰囲気は野郎の世界。後は洗い場に、多分ポルトガルかスペイン人のおばちゃんと、髪を編み込みにした、歴史映画でそれこそメイド役で出てきそうな感じの無口な女の子がいるのみ。

みんなが口汚くヤイヤイ色んなことを言うのを「あーハイハイ」みたいな感じで飄々と受け流していた。うむ。

でもみんないい人

みんな口は悪いが(って思ったほどでもなかったけど)根はいい人ばかり。特に厨房が忙しい雰囲気になってきた時にも驚かずに対応していたら、受け入れてくれたかなという感じもあった。「後ろどけ!」と最初に叫んだ時に「おおっ、いいねぇ」と実際言われたw

色々親切に教えてくれたり水を持ってきてくれたり、ちょっと時間がある時にはオレ日本で働いてみたい、なんて話をしたり。今もSNSで繋がってる人も。

包丁大事にしよう

レストラン備え付けの包丁はよく切れなかったが、みなさんマイ包丁はとても大事にして手入れも怠らない。備え付けの包丁も、私が使い終わった後他の器具と一緒に流しに突っ込もうとしたら怒られた。私もアメリカに戻ってから、包丁をもう少し大事に扱うようになりました。

料理への情熱と、アドレナリン

最後にスーシェフにどうだった、と聞かれて「期待していたよりもあんまりyellingがなかった」と言ったら「昔は怒鳴る人もいたけど、怒鳴ったところで物事が良くなるわけでもないからね、最近はあんまりそういうのはない」とのことだった。って、さっきちょっとふざけてたシェフ二人に黙りやがれ!とか胴間声で叫んでたじゃんwでもマルコピエールホワイトみたいに気に入らないからとチーズを壁に投げつけたり、というのはないのでしょうw

そしてお客さんが着始めてから、厨房の中に流れ始めたプレッシャーと独特の空気。みんなで一丸となって時間と戦いながら美味しいものを用意していく中で、出てくるアドレナリンがたまらんかった。という話をしたらニヤッと笑って、だからやめられないんだよね、だって。

仕事が終わってもとにかく興奮が冷めやらず、体は疲れているのに眠れなかった。翌朝も疲れすぎて昼まで起き上がれなかったけれど、頭の中では、またあの興奮を味わいたい・・・とあの厨房に戻りたい気分でいっぱいに。

毎日ジェットコースターに乗るみたいな感じだろうか。感覚としては、学生時代から今までやってきた、音楽や演劇で舞台に立った時の感覚にも似ていた。

シェフの中にはドラッグに走ってしまう人も実は結構いたりするけれど、これだけ長時間体を酷使したり精神が興奮したりすると、実際それをうまく管理するのは大変かもしれない。日本ではどうなんでしょう??

思えば料理はアメリカに来てから好きになってやるようになったし、学生時代のバイトでも飲食の経験が少ない。配膳とか厨房というのは、若いうちの仕事経験としては一番身近にあるものだとは思うけれど、学生時代に入ったバイト先(ディズニーランド近くのホテル)では、どっちかというとレトルトが多用されていたり、衛生面でもえぇ・・っということもあったりして、どちらかというとすっかり飲食業に幻滅してしまいその後近寄らずに過ごしてしまった。

なのでこうやって、純粋に料理に情熱を傾ける人達がいる場所があるということを知ったのは、ずっとずっと後のこと。もうちょっと早くに知っていればなあ、今更素人がプロの厨房に入ってワーキャー言うのとは別の世界が見えていたかもしれない。そこは自分が食わず嫌いで過ごしたことを反省。

でもこの歳になってもこういう経験ができたのは本当によかった。あと、英語も若いうちに勉強しておいて良かったw

このレストラン、厨房体験の他にも、普通のお料理教室もあります。レディングに行かれるお料理好きなかたにおすすめ!

あ、でもこういうのにちょっと行って、「ミシュランスターのレストランで修行」とか経歴に書いちゃだめですよ!経歴詐称はダメ、ゼッタイ!w