愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

アジア人だからわかるわけでもないという話(全部どこでもいっぺんに)

去年見たときの感想

去年5月にリリースされた映画、我が家は10月ごろ見ました。そして昨日、オスカー大量に受賞のニュース。受賞スピーチを見てはちょっと涙目になった陳家でした。

映画を見たとき感じたのは、マルチバースとか設定も面白いんだけど、それよりも何よりも、ハリウッド映画において、主人公が自分達と似たような見た目で、似たような感覚を持つ人達だ!ということ、だからこそ共感できることが多いというか、没入感がもっとあったというか、より自分達の物語として見ることができた、なので話として吸収できた部分も多かった、ということでしょうか。

夫や子供にとっては移民の子供として、そして中華系アメリカ人一家としてのあるある感もすごくあったみたいだし、私は日本生まれ日本育ちの日本人ではありますが、そういう家庭の一員となってもう長いので自分の中でもわかる、わかるわー、と思う部分も多かった。

ある意味私もアジア系移民として外国に20年ちょい住んでいるので、東から西へ移民する前、移民した後の色々な心情もわかる。あとはやはり自分も歳をとってきて、人生のあちこちで、あの時の選択は正しかったのかなどと思い返す瞬間も出てきたりしているので、中年(アジア人)女性としての色々な葛藤や思いについても、見ている時からも後からもじわじわと身に染みてきました。

そして、そういう人達が、マルチバースでわちゃわちゃやるんだから、嬉しくなっちゃうに決まってますよねぇ。

あとはどんなにクレイジーな設定でも、結局メッセージはこういうシンプルな所に行きつくんだなー、というのは、結局人間、人生における課題ってそういうものなのかも、とも思いました。

と何か自分のことのように嬉しくなったこの映画の受賞ラッシュですが、意外にも?この映画、日本で見た人の評判はそれほど良くないというのを読みました。

へぇ?と思ってレビューをちょっと読んでみたんですけれど、ああなるほどと思いました。やはりこれはマイノリティ、移民の物語でもあるので、そこらへんのコンテキストをすっ飛ばして、ただマルチバースサイファイ映画として見てしまうと、つまんないことになるのかもしれない。あと主人公は外国で踏ん張ってる中年女性。そこらへんの共感や理解がないと、ただ見ててイライラするキャラクターにしか見えないのかもしれない。

Crazy Rich Asians が映画化された時も、多分これは日本で上映されても単なるラブコメで終わって流行らないだろうな、と思ったのと似た感覚かも。

見る側が同じアジア人でも、本国にいて自分達がマジョリティの環境にいて、マジョリティとしての受け止め方で見るのと、移民視点から見るのでは、やはり見る部分や共感できる部分って変わってくると思います。それが悪いことというのではなくて、これはもう違うのだから仕方ないのかもしれない。出てみないと見えないこと、気づかないこともあるし。

あとはやっぱり本国にいればそこで作られるエンタメは、自分達が主人公の自分達の物語であることが普通なので、他人によるステレオタイプではない自分達が普通に描かれている!という高揚感は期待できないのは仕方ないし、それはある意味健康的なことではある(これはマイノリティであることの悲しい現実)

この映画が、マイノリティが出てて偉い、ダイバーシティ枠だけで評価された、移民の話だからいい、という訳でもないとは思うけれど、アメリカの歴史、ハリウッドの歴史を見てみると、そういう要素がゼロじゃないのは本当。そこらへん評価には色んな要素があるので、なかなか難しい点ではありますが、ゴールデングローブ賞にしろアカデミー賞にしろ、アメリカの賞なのでそこらへんは世界基準というよりアメリカ基準の視点での評価であることや、やっぱりコンテクストがわからないと見えない部分はあるから、受け取り手によって良かったと思う人思わない人、それぞれだなということはごにょごにょごにょ。

ただ今回、ヨーロッパの国とかじゃなくて、アジアの国である日本のオーディエンスからの評価がいまいちというのを読んで、逆に面白いな、と思ったのでした(これ、外国における日本人差別の本国での反応が微妙なのと共通する部分もある気がするけど、まあその話はいずれ)

おまけ:アメリカ来るまで自分がマイノリティだなんて知らなかったョ!という中華系マレーシア人コメディアン、ロニー・チェンのジョークもちょっと思い出した

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