愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

バチカン・ガール

Netflixには結構面白いドキュメンタリーも色々あって、家族でそれを見ることも多い。子供は犯罪ものが特に気に入っていて、美術品盗難、マネーロンダリング汚職系の話が特に好きらしい。変わった12歳児である。この間はカルロスゴーンの話を一生懸命見ていた。そして最近見たのはこれ。

www.youtube.com
https://www.imdb.com/title/tt22746676/


さて4回もののシリーズになっているこのドキュメンタリー「バチカン・ガール」は、80年代に行方不明になり、いまだに見つかっていないバチカン在住の15歳の少女、エマニュエラ・オルランディの話である。

ローマの中にある小さな国家バチカン市国の市民である彼女が、音楽のレッスンに行くと言って家を出たまま戻ってこなかった事件は、当時のイタリアではかなり注目された事件だったらしい、が未だに事件は未解決のまま。

このドキュメンタリーでは当時から明らかになっていた情報なども交えて、この誘拐と当時のローマ法王ヨハネパウロ2世暗殺未遂事件との関係、バチカンとマフィアの関係、今となっては明るみになりつつあるが、当時はまだまだ表にも出ていなかった聖職者の性犯罪との関係など、様々なセオリーと証言がどんどんと出てくる。

彼女が誘拐された後、法王が毎週日曜日にサンピエトロ広場に出て行っている「正午の祈り」で彼女に言及した時の不思議な言い回し。今の法王フランシスコさんが、彼女の家族に言った一言。

バチカンが何か関わっているのは確かであるのに、その権威と歴史の重みでずっしりと閉ざされた扉はビクともしない。それでも時がたつにつれて、少しずつポロポロと情報が出てくるところが興味深い。

彼女の誘拐の他にも語られる周辺の様々な事件も、まるで本当にダン・ブラウンの小説でも読んでいるようである。特定の言葉や行動にシンボルや意味を持たせるというのは、カトリックの世界ではやはりあるあるなのだろうか。

時に彼女を誘拐したと称する人物と、エマニュエラの兄をテレビ番組で対峙させるなど、なんというか下世話というかセンセーショナルな扱いもあるものの、色々なジャーナリストが法王庁やマフィアの真相に少しでも迫ろうとがんばったり、イタリアのマスコミは(某国と比べて?)しっかり調査をするというジャーナリズムの役割をまだまだちゃんと担っている部分もあるのかな、とも思った(特にイタリアの警察はそれほど優秀でもなさそうに見えたから余計)。

それにしても、バチカンやばい。聖職者が思うほど聖人君子じゃないのはどの宗教でもそうかもしれないが、なんといってもキリスト教の総本山である、その規模と根の深さの半端なさが恐ろしい。

そんな中、2012年にバチカン内から大量の文書が盗まれその内容がリークされたスキャンダルなど、バチカン内での権力闘争が明るみにでた話など興味深かった。

個人が対峙したところで、あっという間に飲み込まれて闇に葬られてしまいそうな、得体のしれない巨人のような存在にも感じるバチカンだけれど、そこに切り込もうとしている人達が(特にイタリア国内でも)ちゃんといる、という点は、当たり前かもしれないけれど、ちょっとホッとしたところでもある。

もう30年以上も経過している事件の話なので、その周辺では色々なことが起き、その色んな側面をカバーする必要があったからかもしれないが、このドキュメンタリーでは色々なセオリーや、事件に関係しそうな色々な要素がこれでもかこれでもかと登場する。目が離せなくなり、4回のシリーズを家族で一気見してしまったのだが、一方でなんとなく、ものごとを複雑にややこしくしがちなイタリア、という、私の中のイタリアに対するステレオタイプにしっくりはまってしまう流れだな、とも思ってしまった(いや、実際仕事でも色々あるもので・・・苦笑)。

そういった点では、1960年代にミラノで起きた爆破テロ事件、フォンターナ広場爆破事件も思い出す。ずっと前に読んだ本で、この事件も時がたっても色々なセオリーや証言が出てきて、2000年代になっても審議が続いていた事件だった。

Twitterをみるとやはりイタリアからの反応が大きかった。これが少しでも事件を動かすことになるんだろうか。