ちょっと前に、地元オーケストラの「お手伝い」をさせていただきましたが、それと平行して、地元のゲイ&レズビアンバンドのコンサートでもフルートを吹きました。これもまた、このバンドに関係している知り合いのフルートの先生が、当日出られないので、人が足りないから、出てみない?と声をかけてくださったのですが、これがまたへんてこな経験になりました。
サンフランシスコには、もう30年ぐらい歴史のある、ゲイ&レズビアンのブラスバンドがあります。私は数年前、旧正月のパレードで初めて見ました。ブラスバンドは普通のマーチングバンドなのですが、虹色のレオタードを着たお兄ちゃんが、ものすごい勢いでバトンをまわしながら踊っていてびっくりした記憶が。Wikipediaにもエントリーがあるのですが、入団資格は特にゲイである必要もなく、ストレートでも入れる、とのこと。「サンフランシスコの公式バンド」としていろんなイベントで演奏しているらしいです。今度は大統領の就任式でパレードをするんだそうです。
そんなバンドが、もう10年以上もクリスマスの時期になるとやっているのが、胡桃割人形のパフォーマンス。クリスマスシーズンに胡桃割り人形のバレエをやるのは、大晦日の第九に並んで(?)伝統のようですが、ここの胡桃割人形は趣向がちょっと違っていて、ただダンサー達が踊っているのを見るだけではなくて、お客さんも参加して一緒に踊ろう、という趣旨のコンサートになっています。で、大人も子供も、バレリーナの格好をしたり、好き勝手なコスチュームを着てやってきて、バンドが演奏する胡桃割人形の音楽にあわせて踊るんだそう・・・。
さらに、音楽と一緒にダンサーや役者さんが登場してお話を展開していくのですが、話そのものは胡桃割り人形でなくて、創作劇。そしてそんな役者さんたちは、地元のドラッグクイーンの方々だったりもします。でもコンサートには子供たちがわんさかやってきて、キッズフレンドリー。うーん、Only in San Franciscoって感じです。
サンフランシスコのはずれにある高校の音楽室に集まって、ここ2−3ヶ月、毎週2時間半の練習をずーっとやっていました。私は仕事もあるし、自分のレッスンもあるしで、とても全部は出られないので、2週間に1度練習に参加。それでも遠いし夜遅いし大変でした。ゲイバンド、というと、どんなお姉キャラがいるんだろう・・・なんて思ってしまうのですが、みんな結構普通のおっさん、おばさん達ばかり。あんまり若〜い人は逆にいないのが意外といえば意外でした。既婚者(もちろん同性同士で)も多くて、男の人が「うちの主人がね〜」なんて話してたり。私は浮いてるといえばちょっとは浮いてたかな?でもぜんぜん違うパートなのに名前を覚えてくれていたり、色々話しかけてくれる人もいたり、新参者・・というか、首を突っ込んだだけの私にもみなさんフレンドリーでした。
練習中は、バンドと、役者・ダンサーはほとんどばらばらで練習していたので、最後の最後まで、自分が一体どんな趣旨のパフォーマンスに出演するんだか、すべての全体像がよくわからず。パフォーマンスの後半では、演奏する人たちも仮装して登場するとかで、前日に衣装を準備しながら(クリスマスプレゼントがいっぱいついた、おばけの衣装・・)何やってるんだろう自分・・・・なんてちょっといとをかしな気分になってしまったり。
パフォーマンスは土曜・日曜の2日にわたって4回あり、私は両方出るのはたまらんので、日曜の2回だけ参加しました。演目は、「クリスマス・キャロル」を下敷きにしたもの。スクルージおじさん的キャラクターが、昔のビジネスパートナー(今は死んで、おばけになっているドラッグクイーン)に、クリスマスの過去、現在、未来を見せられて、心を入れ替えてみんなとクリスマスを祝う話。でもここはサンフランシスコなので、クリスマスじゃなくて、「ハヌカのキャンドルみんなでつけて、ラマダンあけてご馳走食べて、クリスマスもお祝いして、みんなで冬至を祝いましょう」的な歌詞の歌を歌います(笑)
キャストは朝9時半に集合。ひょろっとした、短髪の兄ちゃんが入ってきたと思ったら、お化粧前のドラッグクイーンでした(笑)結構SFでは有名な人らしい。私は彼(彼女)のドレッシングルームの前で待機してたので、化粧して、かつらをかぶって、変身する一部始終を観察。結構、蛍光灯の下で至近距離で見ると怖いです(笑)
プログラムは、曲にあわせてダンサーが踊ったり、役者がちょっとしたお芝居をしてお話を進めていきます。そしてダンスやお芝居の間間に、バンドが胡桃割人形のいろんな音楽を演奏して、舞台に「みんなで踊りましょう」のサインがつくので、そうするとお客さんもわーっとフロアにやってきて、みんなで一緒に踊るという趣向でした。すべての通し稽古をしていたわけではないので、私も最初の本番で、全体像がどんなものなのか、どんな台詞をいってどんな踊りがあるのか、初めてわかったのですが、最初の数曲を演奏している間、なぜか笑いがこみ上げてきて、こらえるのに必死で一人で痙攣してました(笑)。
胡桃割人形は、過去にこの主人公のおじさんが大事にしていたものとして登場。最後には、心を入れ替えてクリスマスパーティーに参加したおじさんが、姪っ子のクララに、この胡桃割人形(なぜか最後は巨大な胡桃割人形、ちょっとダッチワイフ風になって出てくる)をプレゼントして、めでたしめでたし、となります。いろんなせりふ(特にドラッグクイーンがやるおばけの役)に、かるーく毒が入ってるのが面白かったです。しかしなにより、この催し、子供達がそれはそれは大喜びして踊るのを見るのがとても楽しかったです。胡桃割人形の音楽を演奏すると、ダンスフロアに飛び出してきて、飛ぶわ跳ねるわの大騒ぎ(大人でもピンクのチュチュを着て、かなり一人ではまりこんで踊っているおばさんとかがいた)。中には一緒にメロディーを歌う子や、バンドのところに来て、フルートを吹いている私達をじーっと見つめる子や、演奏する私達にちょっかいをだす子も(笑)アマチュアバンドなので、そんなにすばらしい演奏ってわけでも無いのですが、それでもこういうものを生で見るという経験は、子供にとってとっても大きな経験になるんだろうなぁ。
2時間の間に、20曲ぐらい演奏して、途中で着替えたりもして、それを2セットやっていたら、体は凝るし、かなり疲れました。練習にもちゃんと出てなかったので、ほぼ初見でやった曲もあったり、ピッコロにいたってはやっぱりスカスカだったし、かなり適当にやってたのに、疲労困憊。面白い経験をさせていただきましたが、これは一度やったらもういいわ。でも、陳家に子供ができたら、連れて行きたいかも。お友達も何組か見に来てくれて、ありがとうございました〜!最後にはドラッグクイーンのお姉さんとハグして帰ってきました。