愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

 幻のティンパーノ

仕事帰りに取っているプロジェクト管理のクラスでは、授業の一環としてグループで何かプロジェクトをする、ということになっている。普通こういう授業でのグループプロジェクトは、せいぜい仮想プロジェクトの計画を立ててみるところで終わることが多いらしいのだけれど、このクラスでは、実際にプロジェクトを実行に移すところまで求められた。


おかげで、授業の半分ぐらいの時間は、「班」に分かれて、みんなでわいわいがやがや、計画をたててみたり予算を作ってみたり・・・とほとんど小学校のグループ学習状態だった。その間先生は教壇の机でテストの採点をしているところまで小学校みたいだ(あげくの果てにはコンピューターでソリティアをやっていた)。ま、いいんだけど、仕事帰りに高い授業料を払ってまでやることか、これが・・・。


実際にプロジェクトを「実行」しなさいと言われて、最初は何かソフトウェアでも開発するのか!とびびったが、「プロジェクトなら何でもいい」ということだったので、ウェブサイトを作るもの、サンフランシスコのガイドブックをつくるもの、ボランティアをやるもの、挙句にはダイビングツアーを決行するものなど、これまた授業じゃなくてもできそうな感じのプロジェクトばかりが集まった。


プロジェクトの準備とか、実際のプロジェクト「決行」は、授業外の時間を取られるし、授業料以外のお金もかかるし、時間的にも予算的にも予想外の支出が出たのは痛かったが、ならばもう楽で楽しいものにしてしまえ、と「映画をテーマにしたお食事会なんかどう」と、いつも友達と集まってやっていることを提案したら、6人ばかり賛同者が集まったので、みんなで集まって適当にご飯作って映画を見る会、を「プロジェクト」としてやることにした。こんなんでもプロジェクトと呼べるのねぇ・・・。


そしてプロジェクト「決行日」の本日。サウスベイにあるある方のお宅をお借りして、適当に、なんていいつつ、かなり本格的なランチパーティーをした。プロジェクトのメンバーのほかにも、本格的な招待状を作ってお客様をおよびして、素敵なテーブルセッティングもこのとおり。


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そして選んだ映画はこれ。


Big Night [VHS]

Big Night [VHS]

  • 発売日: 1997/09/30
  • メディア: VHS


ニュージャージーのイタリアンレストランを舞台にしたこの映画、私の好きな映画のひとつ。

marichan.hatenablog.com


日本では「リストランテの夜」というタイトルなんですね。レストランの映画だから、食べ物もたくさん出てくる。この映画の監督もした主役の一人スタンリー・トゥッチ(「プラダを着た悪魔」にも出てくる人)のママが映画に出てくる料理の監修をしていて、料理本も出ていたりする。この映画に出てくる食べ物のレシピをかき集めて、3コースのランチをみんなで仕上げた。


前菜は、トマトとモッツアレラのサラダと、ナスやトマト、セロリなどを煮込んで、ワインビネガーと砂糖少々で味付けした「カポナータ」。カポナータは私が担当、前日に作っておいた。見た目はイマイチだけど、かなりおいしい。


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テーブルの上には、印刷されたメニューのほかに、ネームカード、そして女の子の席には小さなお花、男の子の席には、黒いリボンで作った蝶ネクタイが置かれているの。気が利いてますね。


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インコースのひとつは、海老のリゾット。映画では、スパゲッティミートソースしかしらない味音痴のアメリカ人のお客さんが、なんだかよくわからないまま海老リゾットを注文して、「これスパゲッティついてこないの?」と文句をいい、シェフを激怒させるシーンがあります。ここではスパゲッティはおまけにつけなかったけど・・・。これも私が担当。海老は中華街でどーんと2キロ、1000円ぐらいで仕入れてきた。海老の殻とお野菜をことこと煮てスープストックを作り、このスープで米を煮てリゾットに。


しかし何よりも、この映画をみてずっとずっと食べたい、と思っていた憧れの料理があったのです。その名も伝説の料理「ティンパーノ」。パスタやミートボール、ハムにチーズ、ゆで卵にトマトソースといった、ある意味残り物の材料を、パイ皮をしいたタライぐらいの大きさの型につめ、焼き上げる巨大料理。焼きあがった形がティンパニーみたいなので、ティンパーノというのだそう。


映画では、お客様をもてなすために伝説のティンパーノを焼く、というシェフの兄に、びびる弟が「そんなの無理だ!やめとけ!」みたいな感じでとめにはいる。焼きあがって型から取り出したティンパーノを、兄弟がおそるおそるなでたりさすったりたたいてみたり、においをかいだりしているシーンはちょっと笑える。いろいろなものをつめたティンパーノをスライスするときの切り口といったら!これはもう映画を見てみてください。


以前マルタ島に行ったとき、地元にティンパーナという似た名前の料理があるときき、これはまさか!と期待しながらレストランで注文してみたことがあった。しかしプッチンプリンほどの大きさの、スケールの小さいマカロニのパイ包み焼きのようなものが出てきてがっかりしたことも。なのでこのプロジェクトでは絶対ティンパーノをメニューに入れたい!と思っていたのだ。


実はこのプロジェクトを計画中に、うちの会社のカフェテリアのシェフたちが、日替わりで映画をテーマにしたランチを出す、という企画を始め、私たちが夢のティンパーノを作るよりも早く、ある日お昼にこの料理をさっさと作って社員にふるまってしまった。夢の料理を思ったよりも早く食べることができたのは嬉しかったけど、自分たちの手でやってみたかったので、ちょっとがっくり。シェフと話してみて、そんなに難しくないということはわかったけど、素人の自分たちがほんとにできるのかな?と不安も半分。


この料理はプロジェクトのメンバーであるEちゃんがメインで作ってくれた。粉と卵を混ぜて皮を作り、大きな洗面器の代わりに、型は中華なべを代用。映画では、中に詰めるパスタやミートボールもすべて手作りしていたけれど、ここでは出来合いのものを放り込んで、オーブンで焼き上げること1時間。


じゃじゃーん!これが、幻の「ティンパーノ」


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切るとこんな感じ・・。映画と一緒!!


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うちの会社のシェフが作ったのより、実際おいしかった。海老のリゾットと一緒に。


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もうこれでかなりおなかが一杯になってしまったが、デザートもこちら。


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名前を失念してしまったのだけれど、パウンドケーキのドーム。中にはオレンジピールやチョコレートチップが入ったクリームが入ってます。これにジェラート2種を添えて。


授業の一環とはいえ、おいしいワインとおいしい料理を味わえたのはなかなかよかった。それになにより、自分の「小さな夢」のひとつがこんな形でかなうとは!この後はまだまだ期末試験やプレゼンテーションが待ってはいるけれど・・・。