愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

不良シェフの独白

日本でも一時期カリスマシェフだの、鉄人だの、料理人が芸能人みたいになってテレビに出まくっていたことがあったけれど(今でも?)、アメリカでも結構、「セレブなシェフ」の露出はすごい。

ここにはフード・ネットワークという、食べ物・料理専門のテレビチャンネルがあるので(アメリカ版料理の鉄人とかもここでやっている)、セレブシェフのお料理教室とか、食べ物紀行とか、しょっちゅうやっている(料理人がバラエティとかクイズ番組とか、料理以外のことで登場する・・・というのはあんまりないみたいだけど)。


セレブ・シェフがプロデュース、みたいな感じで、シェフの顔写真つきで売ってるパスタソースとか缶詰とかもあるし、ラスベガスに行ったときも、セレブシェフの店(結構高級)が軒並み並んでいたり。こういうシェフに関しては賛否両論あるみたいだけど、味覚音痴のアメリカ人にメディアを通じて色々な食べ物を紹介するという役割を果たしているとすれば、まあいいのかな、とは思いながら見てはいる。


そんな中で、我が家が結構楽しんで見ているのが、不良シェフ、トニー・ボーデンが旅行専門チャンネルでやっている「No Reservations」という食べ物紀行の番組。このトニーさん、コカインにLSDにありとあらゆる麻薬中毒者という前歴を持つ、ニューヨークのフレンチレストラン、レアルのエグゼクティブ・シェフ。

1日2パックはタバコを吸い、ちょっとひねたものの見方と毒舌でもって、世界中の「観光地でないあやしいところ」を旅しつつ、時にはゲテモノを食べまくったりする番組。番組中もFワード連発で、番組の前には「視聴者の判断でご覧ください」という警告がでる。(日本のエピソードでは大阪に行き、吉本のお笑い芸人といっしょに食い倒れをやって、甲子園で阪神の応援をしていた。笑)


このトニーさんは文筆家としての才もあって、レストランを舞台にしたミステリー小説を出版したり、そして彼の書くエッセイが面白い(料理界のジャック・ケロアックとか言われているらしい)。

数年前に読んだ「キッチン・コンフィデンシャル」は、レストランの裏事情を暴露するかなり面白い本だった。

marichan.hatenablog.com

日本語版も出てるんですね!ただし前の日記にも書いたけど、トニーさんの本に「レストランのトイレの清潔度=キッチンの清潔度と思え!」みたいなことが書いてあったのだけど、彼のレストランのDC支店に行ったらトイレが汚くておいコラ!という感じではあったけど・・(笑)


Kitchen Confidential: Adventures in the Culinary Underbelly

Kitchen Confidential: Adventures in the Culinary Underbelly

 
キッチン・コンフィデンシャル (新潮文庫)

キッチン・コンフィデンシャル (新潮文庫)

 
キッチン・コンフィデンシャル(新装版)

キッチン・コンフィデンシャル(新装版)




そしてこちらはクリスマスプレゼントに、旦那に買ってあげた彼の最新のエッセイ。旦那が読み終わったので、私もようやく読んでみた。

彼が色々な雑誌に寄稿した短編エッセイは、「塩味」「甘味」「酸味」「旨味(英語でもUMAMIというらしい!)」、というカテゴリーごとに、レストランを本当に支えている人たち(ヒスパニックの不法移民)のこと、他のセレブ・シェフの話、フォアグラを出す小さなレストランにテロリスト攻撃まがいのことをしかける極右ベジタリアンに憤慨する話、旅での面白エピソードや、そして「旨味」セクションでは彼いわく「フード・ポルノ」(読んだだけで読者がイッチャウような)を書く試みとしてブラジルで食べたものの話、そしてスペインの魔法使いのような、科学者のようなシェフ、フェラン・アドリアのことが書かれている。

そして最後のおまけに、クリスマスにお客が誰も来ない閑散としたレストランの話を書いた短編小説もついている。エッセイごとにあとがきもついていて、「エミリルよ(アメリカの有名なセレブシェフ)、悪口いいすぎた。あんたはほんとはすごい人だ」とあやまってたり、「厨房に立たずに、自分のことを書きまくってお金をもらえるなんて、楽しいけれどやっぱり厨房に立たなくなったことへの罪悪感」みたいなしおらしいことも書いてあったりして(笑)、最近少し丸くなってきちゃったのか?でも時に彼のシニカルなものの見方に笑ったり、共感したりしながら読める本。


The Nasty Bits: Collected Varietal Cuts, Usable Trim, Scraps, and Bones

The Nasty Bits: Collected Varietal Cuts, Usable Trim, Scraps, and Bones

 
THE NASTY BITS―はみだしシェフの世界やけっぱち放浪記

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  • 作者: アンソニーボーディン,Anthony Bourdain,AYAKO,近藤るみ子,スミス真理,ハクセヴェルひろ子,西宮久雄
  • 出版社/メーカー: バベルプレス
  • 発売日: 2011/09
  • メディア: 単行本
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Bad ass みたいな印象があるボーデンさんだけど、彼のちょっとだけクールに、でも純粋にものごとを面白がっている様子をテレビで見ていると、きっと本当はいい人なんだろうなぁ・・と思うのでした(甲子園ではほんとに嬉しそうに風船飛ばしてたし)。


昔は料理人というと、クリーンで無口な職人気質・・みたいな人を想像していたのだけれど、実際私の周りにいるシェフの人たちも、酒とタバコとコーヒーとマリファナで生きてるような感じの人ばっかり。でもそれでおいしいご飯を作るところがすごい。


彼の番組「No Reservations」は日本でもディスカバリーチャンネルで見られるらしい!
http://japan.discovery.com/series/index.php?sid=681


トニー、マレーシアに行くの巻↓