愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

12人で怒ってみたい


先日、だんな様が陪審員として法廷に呼ばれて出かけていった。外国人である私にとってはうらやましい限りである。あ、でも日本でも陪審員制度が導入されるのだっけ。


実は私にも一度だけ召喚状が来たことがある。ある日家のポストを開けると、DC最高裁判所からの召喚状が!えええー!私何かしたっけか?合法滞在だし、家賃はちゃんと払ってるし・・と一瞬パニクッたのですが、良く見ると「あなたは陪審員に選ばれました。5月29日朝8時に法廷3130号室に出頭してください。出頭しない場合は90日間の禁固刑または300ドルの罰金云々・・・」と書いてある!おおおー。これがうわさに聞いていた陪審員召喚!陪審員に選ばれると仕事も全部休まなければならず、支給されるのは400円の交通費位。でもこれは国民の義務として、やらなきゃいけないのね。


実はこれをすごくやってみたかった。かっこいいやり手弁護士が出てきたりさー、「12人の怒れる男」みたいに、別室でタバコの煙もうもうで終わりの無い議論を繰り返したり・・・。そして最後に「裁判長!被告は無罪です!」じゃじゃじゃーんとドラマチックな音楽、泣き崩れる被告人、ちっ、という顔をする検察側・・・なんて勝手な想像をしたりして一人ほくそえんでいたのですが・・・。


あ、よく考えたら私アメリカ国民じゃなかった。どうやら納税者名簿から適当に選んで手紙を送りつけるらしいので、私が外国人であることをあちらは知らなかったのね(思えばあまりに適当すぎる)。同封された返信はがきに一番最初に書いてあった質問は、「あなたはアメリカ国民ですか」。いいえ、ちがいます。というわけで、後日「あなたは来なくていいです」というつれない手紙がきて私の夢は崩れ去ったのでした。ま、市民権とったら陪審員でも兵隊にでもいけるんだけど。そこまではしたくないので、あきらめました。


で、だんなですが、同封された「陪審員」っていうシールを胸にペタって貼って、裁判所に行ってみたら、同じような人たちが百人ぐらいだーっと講堂で待っていたそうだ。どうやら、お声をかけすぎて人が集まりすぎたらしい。お粗末・・・。で、結局数時間またされた挙句に「帰っていいです」といわれておとなしく帰ってきたそうだ。


講堂で待っている間に、「陪審員のこころがまえ」という70年代風ビデオを見せられたそう。これが日本の免許センターなみのへぼへぼビデオで、70年代の色あせたファッションをしたおじさんたちが登場するそうな。「すべての国が陪審員制度を導入しているわけではありません。アメリカは、国民にも裁く権利を与えているのだ、すごい、えらい」みたいなことから始まり、「審理の内容を他人と話し合うことは、あなたの判断を狂わせます。人に話さないようにしましょう」という寸劇が。めがねのマイク:「やあボブ、この事件について君はどう思うかい?」ひげ面のボブ「(後ろを振り返り、カメラ目線で)僕の判断を狂わせるのだ。人に話してはいけない、人に話してはいけない・・・・(自己暗示をかけているのか?)」


ちなみに、陪審員になると、交通費400円ぐらいは支給される、とのことですが、もしも会社がその間給料を出してくれない、という場合には、1日30ドルが支給されるそうです。裁判所の中にATMマシーンがあり、割り振られた陪審員番号を打ち込むと、30ドルがういーん、と出てくるらしい。大陪審になると、何十日も拘束されてしまうので、やはりしんどいらしいです。


そういえば、前に見た刑事ドラマで、陪審員の一人が殺される、っていうのがあった。その人は、一人だけ被告は無罪だと主張していた人で、そのためになかなか判決がでずにみんながいらいらしていた・・・というもの。結局犯人は、自分の結婚式が近づいているのに、審議が長引いたことにぶちきれた陪審員の女の子だった。でも、わかるよ。こういうのって、個人の都合と関係なく義務として来るからねえ・・・。実は、だんなの召還も、もともとは私たちの結婚式の2日前に来い、というものだったのだ。でもそれをお願いして、日程を変えてもらったのでした。やれやれ。