愉快的陳家@阿拉米達島

ちょっと雑だが愉快な暮らし。サンフランシスコ・ベイエリア日記。

 コンサートのききどころ


前にもちょびっと書いていたのですが、ここのところ、オーケストラにまたお声をかけてもらい、リハーサル通いが続いています。以前お声をかけていただいたところは、素人ばかりの「のだめ」オーケストラ、だったのですが、今回のは、一応プロ(セミプロ?)のオーケストラ。2回ある公演で、フルートが一人足りない、ということで誘っていただきました。すでに1つめの演奏会は済ませたのですが、プロ(セミプロ?)とはいえ、本番になるととちったり暴走するので、ハラハラドキドキ。ま、こんな感じだったら、適当にやってればいいか・・なんて思っていたのですが、2回目の公演に向けて、いきなりものすごい追い込みが始まり、オーケストラがものすごい勢いで進化を始めたので、びびりながらも、感動しつつ、でもやっぱりびびりながら参加中です。


次回の公演は、実は明日(月曜日)。サンフランシスコのダウンタウンにあるホテルで演奏します。あるカンファレンスのイベントの一部として、ガラ・コンサートという形での公演です。その本番に向けて、週末もあわせて今週3回のリハーサルで全部仕上げてしまおう、というものすごいスケジュール。特に今回は、オーケストラにちゃんとギャラが支払われるというので、前回の公演よりも、本気度が違うらしい。そしてさらに、今回は演奏する曲を作曲した人の息子さんがわざわざ来て指揮をする、っていうんで、さらにテンパリ度はアップ。


今回演奏する曲は4つ。そのうちのひとつは、ドヴォルザークの新世界交響曲で、これはオーケストラの常任指揮者が振ります。この曲はフルート2本で十分なので、私は出ないでいいことになっていたのですが、なんだかんだいって、セカンドフルートをダブルでやらせてもらうことに・・。ただし、みんなが良く知っている曲だけに、とちったり暴走する演奏は、逆に怖い!(練習中は大丈夫でも、本番ですごいことになったりするので、気が気でない)でもこの曲はとても好きな曲で、オーケストラでこの曲を演奏するのは、それこそ小学生の頃からの夢だったので、このような形ででも、かなったのは嬉しい・・です。


残りの3曲は、ゲスト指揮者が振ります。すべて、グアテマラの曲。そのうち2曲は、このゲスト指揮者、イゴールさんのお父さん、ホルヘ・サルミエントスさんが作曲したもの。もう80歳近いそうですが、彼はグアテマラではとても著名な作曲家なんだそうです。息子さんも指揮者で、今週になってグアテマラから到着。サンフランシスコの変わりやすい天候にやられて、ごほごほいいながらも、彼によるリハーサルが始まりました。


まず一曲目は、「ブッダフォニア」という曲。今回が初演ということで、「ワールド・プレミア」の名がついています(笑)。名前の通り、仏教をテーマにした音楽なのですが、「このフレーズを25秒演奏する」とか訳のわからない楽譜だったので、イゴールさんが来る前は、常任指揮者も「うーん、こんな感じ?」と練習中かなり適当に振っていました。曲の感じも、これ、仏教というよりはスターウォーズというか、一昔前の現代音楽みたいじゃんねぇ、仏教のことわかってんだか、煩悩だらけみたいな曲じゃんねぇ、なんて思っていたのですが・・・。


イゴールさん、つたない英語で、時にはスペイン語の単語も混じりながらの指導なのですが、「なんじゃこりゃ、よくわからん」と思っていた音楽が、彼の指揮で演奏していると、霧がぱぁぁぁぁ~~~!!っと晴れるように明確になっていくのです。これはすごい。グアテマラの音楽家なんて知らない~、なんて思ってましたが、やはり国で一流の音楽家の指導力は、すごい。今までなーなー、だらだらと考えずに演奏していた曲の、ひとつひとつの意味が浮き彫りになってくる。そしてオーケストラの音が、急に人が変わったように良くなっていくのがわかります。彼の指揮は、常任よりはきっぱりしているので、わかりやすいというのもありますが、本当に指揮者でオーケストラって変わるんだ!と実感した瞬間でありました。なんだよこの曲、と思っていたのは、今は大好きに。


ききどころ:これはメディテーションをする音楽ではなく、人が苦悩、メディテーション、インスピレーションを得るまでのプロセスをあらわした音楽。脳内にうねる音の重なりをお楽しみください。


私はこの曲でピッコロを吹きます。実はピッコロ、小学校のブラスバンドでちょっと吹いていただけ・・。フルートができるんだったら、ピッコロも同じように吹けるだろう、と思われがちなのですが、必ずしもそういうわけでもありません。案の定、フルートの先生に貸してもらったピッコロでは、高音がうまく出ず・・・。この曲で出てくる最高音以上の高い音は、結局練習しても出ませんでした(涙)でもこの曲はおかげで何とか乗り切れそうです。20年ぶりのピッコロ・・・一体どうなるのかもききどころです(笑)


もう一曲は、これまたサルミエントスさんが作曲した、マリンバコンチェルト。この楽譜は、すべてごちゃごちゃの手書きで読みづらい!マリンバソリストが来ないことにはどうにもならないので、練習中もほぼ放置されたままでしたが、昨日になってマリンバ奏者がニューヨークから到着。練習場に、今まで見たこともないような巨大マリンバがどーん!と鎮座していました。よく小中学校の音楽の時間に使っていたような木琴とは、大違い。なんか恐ろしいぐらいでかいです。私など、背が低くて届かないくらいです。そして、ものすごい数と種類のばちが並べてある・・・!これはすごい。


マリンバ奏者は若いお兄ちゃんですが、アメリカ人では始めて、マリンバコンクールで3位に入賞したという、アメリカではトップの演奏家。この曲もぶっつけ本番でリハーサルをしましたが、ものすごい早業の演奏にくらくら。すごい格好いいです。でもなにより格好よかったのが、ファーストフルートのCちゃん・・・!2楽章は、ほとんどマリンバとファーストフルートの絡みだけの静かな曲なのですが、手書きのわかりにくい、しかもどんな曲かもよくわからないものを、彼女は一発で、しかもそれはそれは美しくまとめあげていました。練習会場は大拍手。さすがプロだなぁ~~。このマリンバコンチェルトは、本当のプロの演奏家とは何か、ということを学ぶすごくいい機会になったとも思います。


ききどころ:本当のプロの底力を堪能できます。特に2楽章。あと、マリンバの音を聞くと、どうしても「今日の料理」のテーマ音楽を連想してしまい、ああ自分は日本人だなあ、ということも実感できます。


3曲目、シンフォニエッタという曲ではファーストフルートをやらせてもらうことになり、ちょっとだけソロもあるのですが、やはりゲスト指揮者が振るということで緊張してしまっています。それほど複雑な曲ではないのですが、練習中には入りを間違えたりしてとちってしまい、ちょっとへこみ中。のびのびと演奏しないといけないところなのですが、必要以上に緊張してしまっていて、体も気持ちも縮こまってしまい、本当にそれが音に反映されてしまう。まだリハーサルの段階でこれに気づけたのは良かったのかもしれません。まあ適当に、なんて思っていた自分が恥ずかしい。ちゃんとよい演奏になるように、がんばります。


私自身オーケストラの経験が少ないので、練習中は色々な発見があって面白いです。まずおお、一応プロのオケなんだ、と実感するのは、練習場に行くと、係の人が譜面台から椅子から全部設置してくれていて、私たちは何もしなくていい!というところ。ブラスバンドとか、部活のときはパイプ椅子の設置から何から、もちろん自分達の仕事だったので、ただ演奏してればいい、というのはなんだか贅沢な感じ。


ここはアメリカなので指揮は英語でやりますが、指揮者って、音楽のセンスとともにコミュニケーション能力、そして語学力が必要な仕事なんだなぁとつくづく思いました。イゴールさんはアメリカ人ではないけど英語をしゃべって、ちゃんと私たちに指導している。もしヨーロッパに行ったらこれがフランス語になったり、スペイン語になったりするわけで、世界中で指揮をしようと思ったら、色々な国の言葉を知っているのは非常に大事になるわけで・・・。すごいよなぁ。


総譜(指揮者が持っている譜面)と、オーケストラのそれぞれの演奏者が持っている譜面が、たまに一致しないことがある。特に初演のブッダフォニアは、作曲者が手書きで書いた楽譜を、別の人が印刷用に清書して、ちゃんと「音楽の活字」にして印刷して配っているのだけれど、音や記号が間違っていたり、作曲者が意図していたニュアンスが伝わらなかったり・・・・。それを手直ししながら作業していきます。楽譜って、音楽のすべてを伝えきれる記号というわけではないんだなぁ・・・と、今更ながら思いました。今回は作曲者の息子がいるから、意図がわかったりするわけですが・・・。


弦楽器の弓使いを合わせたりするので、ちょっともめたりするのが面白い。このフレーズは、こういうふうに弓を動かして演奏してください、とか、指揮者から注文が入ります。指揮者はそういう部分も知らないといけないわけなのね。


Sneak previewではないですが、作曲者自らが指揮をしたマリンバ協奏曲のビデオがありました。日本のオーケストラによる演奏。このマリンバの大きさ!そして演奏家の人がぴょんぴょん飛び回って演奏してます。



一介のアマチュアが、こんな演奏の機会をいただけたことは、本当にラッキーだなあ、と今更ながら実感しています。本番がどうなるかはわかりませんが、本当にいい勉強をさせていただいています。緊張しないように、適度にリラックスできるように、がんばろう。