愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

桶で大工


うまれて初めてのオケストラでフルートを一生懸命吹いているのだけれど、私だけチューニングが合わずに浮いていて滅茶苦茶あせる。そしてなぜか舞台袖からは、ワイヤで宙吊りになったのだめのキャラ「真澄ちゃん」が出てくるのだけれど、アフロヘアーがでかすぎて舞台の幕にひっかかってしまう・・・・。という悪夢(?!)を見た翌日。本当に初めてのオケストラに参加した。


先月、一緒にアンサンブルをしたあるフルートの先生から、「オケでフルートが一人足りないからやらない?」とお誘いいただき、楽譜もいただいていた。半分るんるん、半分どきどきしながら練習場の扉をあけると、バイオリンだ!チェロだ!オーボエだ!昔やっていた吹奏楽部ではなかった楽器が勢ぞろい。ちょっと年配の人たちが多いオケストラ、どんな音を出すのだろう。


スイスから来たマエ酢トロは、これまた見た目が(TVドラマではなくて漫画のほうの)のだめに出てきたヴィエラ先生にそっくり!!チューニングをした後、お茶目なドイツ訛りで「ミナサ〜ン、モツアルトから始めますヨ〜」。曲は「魔笛」の前奏曲。今さっき楽譜を貰ったところなので皆さんいきなり初見であわせる!これはすごい!


じゃじゃ〜〜〜〜ん!!
 ぎ・ぎ・ぎ〜〜〜〜バイオリンの音)

じゃじゃ〜〜〜〜ん!!
 ぷぴー (クラリネットの音)


す、すごい、すごすぎる・・・
これは本当の「のだめなオーケストラ」!!


この後ベトベンの大工も全部あわせた。こちらは毎年やっているとのことなので、大丈夫なのかな、と思いきや、


みんな・・・周りの音聞こうよ!
っていうか指揮見ようよ!!


指揮にあわせればいいのか周囲にあわせればいいのかだんだんわけが解らなくなり、くらくら・・・。時々「おお、CDで聞いたのとおんなじ!」っていう場所もあったけれど、熱でゆがんだレコードがうにうにうに〜と回っている感じ。一瞬静寂になる部分では、バイオリンがフライング、後ろに座っていたホルンのおばちゃんが

「オー、カモーン!」


練習に参加してみて、よさそうだったらお友達をコンサートにお誘いしようかと思ったのだけど、正直なところ、これはちょっと体に悪いかも。後数回の練習でどれだけ改善できるのか様子を見てからにします。


でも、初めてのオケ自体は楽しかった。これに参加するまで「よろこびの歌」以外マジメに聞いたこともなかった第9だけど、2楽章は超格好いいし、4楽章の合唱の部分はお茶目なマエ酢トロが指揮しながら自らものすごい音量の声で全部歌っていた(笑)ついでにクラリネットのおっちゃんも、演奏しながら歌っていた(笑)


ヨーロッパのマエ酢トロって、英語でもやっぱりしゃべり方がミルヒーみたいな感じだったのもおかしかった。厳しいこといっても丁寧語、みたいな感じ。「バイオリンのみなサン、その三連符オウチでちゃんと練習してきましょうネ〜」「(指揮台をびしっ!とたたいて)ダメダメです!そこ早いデスよ!」「では悪魔(Devil)のDからやりマス」等等。そんなこんなで、3時間みっちり練習。長時間ぶっ続けで有酸素運動をしたため、家に帰ってきたらぐったり。


素人のオケストラは(一応一部はプロが入ってはいるけれど)参加も初めてなら聴くのも初めてだったので、ちゃんとした音程が出せて、指揮通りに演奏できるプロのオケってすごいんだな…と素直に感心した。私も含め、素人が人前で演奏を披露するのなんて、所詮は自己満足の世界でしかないし、特に大工なんて有名な曲だと、演奏している本人(特にお歳を召した方)の頭の中には「大工はこうでなくっちゃ!」みたいなイメージも固まっちゃったりしていて、なかなか指揮者の思うようにはいかない。家族以外の聴衆にはかなりキツイコンサートになる可能性は高いけれど、でもやっぱりオーケストラができるというのは、究極の自己満足の表現の場が与えられたみたいで嬉しい。


フルーティスト4人のうちもう一人がたまたま日本人のプロの方!しかも同い年で、共通点がたーくさんあったので爆笑。「このオケの中ではフルートが一番まともよね」「でも周囲からはなんと思われているかわからないね」などとおしゃべりしながら帰途についたのだった。でもこれも夢をかなえるはじめの第一歩。せっかく与えられた機会だから、がんばります。