愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

お茶を出す

何かにつけてお茶を飲むのが好きなイギリス人。時に相手にお茶をオファーしない事は大変失礼なことにあたり、遺恨を残すことにもなってしまうらしい(ちょっと大げさに書きました)。

その最たるものはビルダーさんなどのコントラクターの皆さん。お茶のオファーがなかった家は仕事が後回しになったり、サービスの質に影響することもあるから気を付けるように、ということを英国生活ベテランの在英邦人の皆さんから聞き及ぶにあたり、そういえば家に何かしらの用事でくるこういう皆さんに、一度足りともお茶をオファーしたことがあっただろうか、いやない、と頭を抱えてしまった。

わが家は賃貸のフラットで管理は不動産会社がやっているので、電気屋、配管工、壁のペンキ塗りなど、全部不動産会社と契約しているベンダーがやってくる。不動産屋に頼めば勝手に時間をアレンジして来てくれる。仕事などで留守の時は合鍵で入って、色々やっておいてくれる。

皆さんとても快活親切礼儀正しくて、いつも気持ちよく仕事してさっさと帰って行ってたけど、もしかして、あの家ではお茶のオファーがなかったぞと、実は腹の中では恨んでただろうかとドギマギしてしまう。

コロナ中などは、他人に飲食物をオファーするのも憚られた時期もあったしなあ。それに結構みんなサッサと来てさっさと仕事して帰って行くので、どのタイミングでお茶いかが、などと聞けばいいのか、意外と難しい。

お茶を出したとして、仕事を終えて家でくつろいで貰われても困るしなあ、などと逡巡していたが、諸先輩方によると、①一通り直してほしい箇所などの説明や話し合いを終え、作業を始めようとする前に聞く、②来てすぐに聞く(すると要らない、となるので用意せずに済む。笑)とのことであった。

さて先日我が家のバスルームの水道がきっちり閉まらなくなってしまい、不動産屋経由で配管の人に来てもらうことになり、とうとうお茶を出すチャンスがやってきた。やってきたのは2人の若めの兄ちゃんふたり。

一人は殴られたみたいに目が腫れていて(ボクサーか?!いや単にそういう顔なだけかも・・)ヤバめにも見えるけれど、2人とも言われなくても靴は脱ぐしとても礼儀正しい。

ここがバスルームですかぁ、じゃあ始めますよぉととっとと仕事に取り掛かってしまったので、タイミングに関する諸先輩方のアドバイスは全て無駄に終わってしまったが、パンチドランカー風の兄ちゃんのほうがトイレを借りてもいいですか、ここまで来るのに時間かかっちゃって、その間に飲んだコーヒーが・・とか(必要以上の情報を)言うので、トイレから帰ってきたタイミングで2人に何か飲みたいか聞いてみた!

という訳で無事に初めてのお茶、ではなくコーヒーをふるまうことに成功。家に来る前にもう飲んだんでしょうと思いつつも、ご所望があったため、カリフォルニア土産のPhilizコーヒーの豆を丁寧に挽き、藤岡弘ばりに「美味しくなれ!」とケメックスのコーヒーメーカーでコーヒーを淹れた。ミルクは要らぬ、砂糖は二つというので、飲み物に砂糖を入れたことがなく角砂糖も無い我が家は少し慌てたが、今後はこのような要望にも即時対応できるよう滞りなく準備しておきたい。

かくして、風呂場で格闘している兄ちゃんに、マグカップをいつ渡せばいいのか、多少困惑したものの、盆で運ばれたコーヒーを兄ちゃんは風呂場で飲みつつ、作業を進めてくれたのであった。

結局1時間で終わると言っていた作業は困難を極め2時間かかり、挙句の果てに二人とも手に切り傷を作り絆創膏もふるまうことになったが、作業をしながら兄ちゃん達は上機嫌で、なぜか時々「タラッタ、タラッタ!」とスーパーマリオの音楽の最初の部分だけを、作業をしながら突発的に何度も何度も歌い、最後には良い一日を、Luv!と言いながら帰って行った。

学校から帰ってきた子供にこの話をしたら、マリオとルイジの職業は配管工、との指摘があり、おおおぅ、となった。あれは配管工の労働歌が自然と口をついて出たのであろうか(いや違う)

紅茶好きの英人のおっちゃんばかりが来るわけでもないので、次回はお茶にコーヒー、あとは家に常備していないソーダエナジードリンクなんかも準備しておこうかな。