愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ロンドンで、矯正。そして価値のアップデート。

2-3歳の頃から将来は歯列矯正必至と言われた子供、とうとう治療を始めることになった。

私も同じ年頃で、永久歯を4本抜くほどの大がかりな矯正をしていたので、色々な記憶が蘇る。

最近は顎を広げるエクスパンダーを使ったり、永久歯を抜かないでも矯正する方法もあるが、うちの子供もそれでは追い付かないぐらいの重症。結局私と同様、永久歯も抜き、先日まずは上だけ、ワイヤを装着してもらった。

経験者とはいえ、私が歯列矯正をしたのはもう30年も前。その頃に比べると、歯を抜き、ワイヤをつけ・・とやる事はあまり変わっていないようでも、技術は進歩しており、歯型取り、矯正器具の装着など、昔と比べて随分短時間でできるようになっていたのには感心した。

歯型を取るにしても、口にモールドを入れたと思ったらもう一瞬で取り出してしまう。昔はヨダレ受けを持たされ、モールドが固まるまでヨダレをダラダラ垂らしながら待たないといけなかったものなのに。

ブラケットを付けるのも、接着剤が乾くまでしばらく放置された記憶があるが、今ではUVライトを当ててすぐに固定されてしまう。ものの20分ぐらいであっという間に予約が終わり、拍子抜けしてしまった。

たかが矯正の事ではあるが、自分の時はこうだったああだった、と、つい昔の自分の経験と比較したり、それをもとに色々と口出ししそうになったものの、自分の中ではちょっと前のことと思っていた事が、もう30年前のことであり、言ったら2000年代に1970年代の経験をもとに色々言っているようなものだ・・と気が付いた時にゾッとしてしまった。

歳を取ると、随分昔の事もつい最近のことのように思ってしまうというが、それを地で行くところだった。これではまるで老害予備軍だ。

ブラケットはいわゆるグレーのメタル、透明のプラスチック、カラフルな色つきのものの3種類から選べたが、子供は普通のメタルを選んだ。一番矯正器具っぽく、目立つものだが、先生曰く、子供の間では不思議とこれが一番人気なんだそうだ。

ひと昔前、特にアメリカでは矯正器具はダサい象徴だったと思う。厚底メガネ、歯には矯正器具、といったいでたちは、クラスのいじめられっ子キャラの特徴として良く使われていたと思うので、わざわざ目立つものを子供達が好んで選ぶのは特に意外だったが、これも「ひと昔前」のドラマや映画が作り出した古い価値観になっているのかもしれない。

子供に聞いても、特に矯正器具がかっこいいわけでも無いが、別に嘲笑の対象になるものでもなく、皆特に何も思わずつけているとのこと。思えばイギリスでもアメリカでも、小さい時から子供達の間で見かけのことを揶揄したり嘲笑したりしているところを、見たことが無い。うちの子供がたまたまラッキーな環境にいるのかどうかはわからないが、今の子供達は昔よりもっと優しい、普通に違いを受け入れる世界に住んでいるのかもしれない。