愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ヘイスティングスの城と息苦しい洞窟

夏の小旅行話の続き。

滞在も後半になって気持ちよいお天気に。ああ、空が広い、そして雲がドラマチックなことよ。

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アメリカでも海の近くに住んでいたけれど、お天気の変わりやすいイギリスで見る空模様のほうが、とてもダイナミックで芸術的なものにも思える。

青い空とそこに無限に広がる色々な形の雲を見ていると、なんとなくシスティーナ礼拝堂の天井を思い出す。ちょっとここから神話の神様でもひょっこり出てきそうな雰囲気がある。

誰かがこんな景色を巨大な機械で投影しているんじゃないか、誰かが描いた雲の絵を空に張り付けてあるんじゃないか、なんだか自分の縮尺が良くわからなくなる。

もう、雲を見ているだけでも一日ぼーっと過ごせる気もする。もしそんなふうに1週間ぐらい過ごせるものなら過ごしてみたい。家ごもりと仕事と携帯をいじりすぎて悪くなった視力回復のためにも(苦笑)。

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海風に翻弄されまくった数日前とは打って変わって、家族で機嫌よく海辺を歩き、貝殻を拾い、それこそ子供が好きなポワロさんの時代には、もっと着飾った人達が歩いたであろうプロムナードから昔はもっと煌びやかだったろう建物を眺めつつ

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この崖の頂上を目指して歩いていく。

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この素敵な高低差。海の街の高低差はやはり格別。

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階段を上って着いた先は、ジブリの世界。丘の上から見下ろす海辺の街、遊園地の観覧車や豆粒のような人達が古い町並みの間を行きかっていたり、漁船が沢山停留しているのも見える。あー気持ちいい!

この丘の切っ先にあるのが、ヘイスティングス城。1066年、おフランスから船でどわーっとやってきて、ヘイスティングスの戦いでイギリス王になったウィリアムさんがここに建てたお城、の跡が残っている。

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荒城の月でも似合いそうなたたずまいであるが、10歳児はここでいきなりBee GeesのStayin Aliveのミュージックビデオのモノマネを始めた・・(爆)確かに廃墟で歌ってはいたけれどw

この石造りの城も、ウィリアムさんの後で何回か建て直しされたものの残りもの。ノルマン王朝も最初はイングランド平定などのために、あちこちにこういうお城を建て、王様はロンドンではなくあちこち色んなところに逗留していたみたい。

その後、13世紀ごろに海岸線を大きく変えてしまうような嵐が何度もやってきて、前日に訪れたライの街などは港町として機能しなくなってしまったそうなのだが、このヘイスティング城などは、その時の嵐で崖もろともだいぶ崩れ落ちちゃったんだとか(!)

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その後もわちゃわちゃあってどんどん廃墟となっていった城が発掘されたのは1800年代になってからだそうで、その後はバラ園を作り、そこでお茶ができるようなちょっとした観光スポットになったこともあったそう。

今ではこんなだだっ広い石組みだけが残る場所で、入口にある掘っ立て小屋にいるジャックブラックのようなもっさりした兄ちゃんに現金で入場料を支払い、廃墟の敷地内にある小さなコンクリでできたオーディオルームで、受付の兄ちゃんが時間になるとふらっとやってきてビデオ再生してくれる短いドキュメンタリーを見るのと、なぜか兄ちゃんが掘っ立て小屋に連れてきたらしい飼い猫を見るぐらいのアトラクションしかない。

しかし昔はここに権力者が集い、教会で祈り、宴を繰り広げたりしたのかなと思うと、イギリス版春高楼の花の宴もあながち間違いではないのかも。

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(この丘の上には、ケーブルカーでも行ける)

城のすぐ近くには、「密輸アドベンチャー」というアトラクションもある。数百年前、貿易関税がめちゃくちゃ高かった時代、フランスに近いこの辺りの街では、密輸が横行していたらしく、ここではその時の様子が展示されている。

セント・クレメンス洞窟という、結構な長さのある細長い洞窟の中に、当時密輸された品物やら帳簿やら、そしてボタンを押すとライトが付き音声が流れだす、当時の様子を模したハリボテ人形の数々が設置されている。

行ったことはないけれど佐渡金山とかああいうところにありそうな感じの展示。実際この洞窟に、密輸したものを隠したり、そしてここで密輸の罪を犯したものの処刑もされたこともあったらしい。

とにかく薄暗く、空気は悪く、そこにB級ハリボテが大量に設置されているので不気味なこと極まりない。ボタンを押すと牢屋に閉じ込められた人形がドアをガチャガチャやって助けてくれぇーなんて声が流れてくる。ヒ~

そんないかにも地方の観光アトラクション的アトラクションを、先客カップルとソーシャルディスタンスを保ちつつ進んでいくのだが、展示は思ったより長いし、マスクをしているので息苦しいしで、出口の明かりが見えたときには随分ホッとした。

戦争中はこの洞窟は防空壕として使われたり、戦後はここが洞窟の中のオサレなダンスホールとして使われていたこともあったとか。

ロックダウンの疲れをいやすため、のんびりしたいとやってきたヘイスティングスであったが、結局一日10キロぐらい歩いてなんだかちょっと、だいぶ疲れた。