愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

コンサート終了

コンサート、終わりました。遠くから聴きに来てくださった皆さん、本当にありがとうございました。

  • コンサート会場はホテルの大宴会場。残響のあまりのなさに愕然。オーケストラの音の切れの悪いところがあまりに明確になる。さらに温度も高く、空気も乾燥。ものすごく寒い、音響のいい場所で練習していたので、環境の違いに戸惑う。
  • 乾燥と緊張で練習中にピッコロの音が出なくなり、さらにあわてる。吹けば吹くほどスカスカになり、どうしようもなくなり、あきらめ、神に祈る。
  • 本番前の練習。マリンバ協奏曲、3楽章の出だしのクラリネットがもつれにもつれ、どうしようもなくなる。緊張しているらしい。ものすごくものすごく心配になる。
  • ゲスト指揮者のイゴールさんが本番前に、「あわただしくてちゃんとお話できなかったけれど、本当にみなさんとできて感謝している。なぜか今回はとても特別で、今のこの瞬間、みんなの顔は、本当に忘れないと思う。本当に私は記憶力がいいからみんなの顔を覚えているんですよ」と言ってくださる。本当に本当にいい人だ。
  • 常任指揮者のいいところは、わーわーとしゃべって空気を和ませるところなので、コンサート前にもそれをやってくれて緊張が多少ほぐれる。
  • 新世界は、最初「思ったよりも」なんとかいく。しかし・・・指揮を見ていない人がいて、3楽章の終わりのキメのところでとちったり、4楽章でホルンが1小節早く入ったりして、あちゃー・・。まああら捜しばかりしてもしょうがないけど、ハラハラドキドキは本番でも変わらなかった。断片的にいいところもあったけれども。空中分解しないでよかった。
  • 大人げない会の皆さんが見に来てくださる。ありがたし!あみちゃんのコントラバス、きいてみたい。
  • 後半はサルミエントスさんが振る。こっちのほうが大事。タキシードでびしっと決めておられる。コロンのにおいが、遠いフルートセクションまでにおってくる・・・!
  • フルートは全員がファーストをローテーションしているので、曲ごとに移動が大変。またあまりに空気が乾燥していて、途中で咳をしたくなるのがつらかった。口がからからだと音も出ないので、こまめに給水するが、水の残量とにらめっこ。とにかく暑い。
  • シンフォニエッタは、パパであるホルヘ・サルミエントスさんの弟子が作曲したもの。グアテマラのフォークミュージックが織り込まれた曲。それこそグアテマラ観光局のプロモーションにでも使えるかもしれない・・。ソロは、手に汗をかいてしまい、自分的にはまあまあ。もっとのびのびやりたかった。
  • マリンバコンチェルト。このマリンバ奏者のおかげでこのコンサートは持ちこたえたようなもの。ああやっぱり「今日の料理」に聞こえる・・と思いながらも、完璧な演奏。さすがプロ。めちゃめちゃ格好いい。この曲も、色々なグアテマラフォークソングが織り込まれている。すごく好きになった。
  • マリンバのアンコール曲も素敵だった、けれど、マリンバの低音に反応して、弱っている左耳がちょっと痛くなる。何か反応する周波数とかあるのかな。
  • そして最後のブッダフォニア。後でプログラムを見てわかったことだけれど、指揮をした息子のイゴールさん、仏教徒なんだそうな。最後の練習中、打楽器の人に、「父は歳をとって体は弱っているけれど、精神はものすごく強靭な人で、これは彼のそんな部分を表しているから、ものすごい勢いでやってください」といったのがとても印象に残った。グアテマラといえば、つい最近まで内戦があって政治状況は最悪だったところ。また後でプログラムを見たら、パパのホルヘさんは若かりし頃は政治運動をして投獄されたこともあるらしい。強く、アツい人なのだ。
  • ピッコロは奇跡的に大丈夫だった。
  • 最初はなんだこりゃぁ、と思った曲だったけれど、イゴールさんの重く、きりっとしてこれまたアツい指揮にのせられて、なんだかんだいって、演奏する側としてはとても気持ちがよくなる曲だった。本当はこの曲、ちゃんとしたところで演奏すると最後のところの残響がものすごーく格好いいのだけれど、今回は残念。
  • 演奏が終わって、パパのホルヘさんが両脇を抱えられながら指揮台にあがって、息子よ、ありがとう、みたいな感じで抱擁しているのを見たらちょっと泣きそうになった。何かこの二人を見ていると、なんとなく小説「百年の孤独」を思い出す。多分ホルヘさんの若いときの姿とかを先に見ちゃったからか。
  • 大人げない会のみなさんから、ディスプレイ用のお花をわざわざ交渉して買ったというお花をいただいた。笑。でもそういうことができちゃう勢いはすごい。そしてお心遣いがありがたい。
  • 終わってからサルミエントスさんにご挨拶。お話できて嬉しかった。ぎゅーっと手を握って、「練習期間が3日しかなくてごめんね。でも本当にありがとう」といってくださった。なんというか、本当に音楽や、こんなオケでも、演奏者であるということをリスペクトして、真摯に指導してくださる方で、私はすっかりサルミエントス親子のファンになってしまった。そしてスペイン語でがなっていたパパは、実は英語も話せるのであった!(爆)
  • 帰ったらもう精根尽き果てたように疲れていた。背中がばりばりに凝って痛かった。
  • アマチュアであっても、細々と音楽をやっていたおかげで、へぼオケであっても入れてもらって、色々な経験をつませてもらう機会があったのはやっぱりありがたい。そしてそこで思いがけず、音楽に真摯に向き合う人たちに出会えて、直接何かを学べたのは本当に幸せな経験だったと思う。色々言うも聴くのも易し、しかし実際にやるのは難し。もっともっと色々なところでチャンスがもらえるように、もっと勉強しよう、練習しよう、耳目を広げよう、謙虚になろうと思った。