愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

不実な美女か 貞淑な醜女か 通訳悲喜こもごも

ひとり米原万里まつり。ロシア語通訳第一人者だった米原万里さんの、通訳という仕事に関する流儀、通訳珍プレー好プレー、言葉を伝えること、というコミュニケーションや言語そのものについての話などをまとめた文章を何年かぶりに再読した。


プロで通訳をやっている方とは比べ物にならないが、私も学校を卒業して最初の仕事が日本企業や政府機関を相手にするものだったため、業務の一環として現場に同行して通訳をする、という機会がかなりあった。

とはいっても、通訳の訓練を受けたことは一度もない。初めての現場にはメモ取り係として同行し、上司がサラサラと通訳しているのを眺めていただけ。なのに、次の現場では通訳もお願いね、とほぼムチャぶりをされ、泳いだことが無いのにいきなり海に突き落とされた。上司に言われた唯一のアドバイスというか言葉は、「あなたなら、出来る!」。

そんな精神論にさえならないようなお言葉を頂き、後はとにかく沈まないようにもがき続け、そのうち自分なりに通訳業をこなすというか、やり過ごす方法をほぼ直感的に身につけた感じである。

通っていた大学では、言語科に通訳の授業もあり、生徒達がLL教室で、諜報機関の訓練よろしく、色んな機材を使って学んでいるのを、他学科だった私は横目で見ていたものだったが、そんな特殊訓練も受けず、他の通訳者の仕事ぶりを見て学ぶ機会もないまま、自己流すぎる通訳をやってきたので、自分がやっていたのはちゃんとした通訳だったのかも自信はない。

会議の通訳は、やっている最中はアドレナリンが出て、変な快感もあったりするのだが、会議前は気が重いし、2時間ぐらい喋り続けた後は全身打撲のような疲労が体を襲い動けなくなったりと、やはりあまり好きにはなれない業務ではあった。さらに通訳者として雇われているわけではなく、プロジェクトの一環として通訳をやってるだけなので、その後自分で議事録も作らないといけなかったとか、今考えるとほんと酷い仕事の振り方や・・・。

そんなこんなで、米原万里さんの書く通訳という仕事そのものに関するエッセイは、読んでいて色々フラッシュバックが起きて、初めて読んだ時はちょっとしんどかった記憶がある。がそんな昔の仕事のトラウマ(笑)も薄れて再度読み返してみると、滅茶苦茶自己流の通訳をやっていた私でも「あるある」と共感できる点が多いというか、100%共感しかないのに笑ってしまうばかりだった。

相手が話すことをいちいちノートに取るなんて無理なので絵や記号やフローチャートで効率化してみたり、と思ったら自分のメモが読めなくて意味がわからなくなったり(笑)。要点を得ないであーうーごにょごにょ言っている部分はバッサリ端折ってしまったり、言っていることが分からず慌てるも、文脈から推測してそれがドンピシャで事なきを得たり。

用語がわからなすぎる話は専門用語ではなくて、その用語で説明される事象そのものをペラペラと喋ってごまかしてみたり・・・全部、やったことある。のちのち形に残る「翻訳」ではなく、通訳は言葉は発した先から時間とともに消え去ってしまうこと、通訳をしている時間さえやり過ごせば(笑)なんとかなるというのも実際有難かった。

私の場合は、自分が担当しているプロジェクトの一環で現場に行くので、プロジェクトそのものが通訳の事前勉強みたいな感じになるため、客が資料を出してくれず、内容がわからず困る、という経験はあまりなかった。それでもプレゼン資料が当日いきなり登場することもあり、やはり通訳ができる位にその案件に詳しくならなければいけない、というのは、自分は専門家じゃないのに・・と割に合わない気持ちでいっぱいになることは多々あった。

ある日はITセキュリティ、ある日は核廃棄物の処理方法、ある日はバイオ燃料としてのトウモロコシについて。現場にぱっと行って、自動翻訳機みたいに右から左に言葉が出てくるものではないからいっぱい情報を詰め込む必要がある。でもどこまで知っておけばいいのか、目途がつけにくくて困ったのも、米原さんの文章の通りである。無礼な日本側の発言を、直訳すると大変なことになるので、オブラートに包んで穏便に運ぶために心を砕くし、日米双方の会話を通訳するので数時間自分だけずっと喋りっぱなし。通訳者の労力とストレスは、実は想像を絶するものがある。

その割に、通訳は軽視され、時にはお使い係のような扱いを受け、その労力の割に感謝されないと感じることが多かったのも、トラウマの一環かも。海外に出張に来るものの、通訳がないと全く機能しない日本のおじさん集団のふるまいや仕事ぶりに、がっかりしたり嫌な気持ちになることも多かったのもトラウマなのかも。思えば当時の仕事でリスペクトできるような仕事相手がいなかったのは不幸すぎた。

知らない世界を垣間見られるのは興味深い部分もあったけど、自分が本当に知っていること、言いたいことを自分の心の底から話しているわけではない、どんなに頑張っても当事者になれないという点も私にはちょっとしんどくて、それ以降は通訳業や日本のおじさんとやり取りが必要な仕事にはつかなくなり、だいぶストレスが軽減されたのも事実(苦笑)

・・・と読書感想というより自分のなんちゃって通訳経験談になってしまったが、それくらいフラッシュバックが凄かった本でした。この本は27年前に書かれているけれど、オリンピックやら何かのイベント毎に通訳無料ボランティア問題が話題になったり、今も通訳という仕事に関する理解はあんまり深まっていないんじゃないかなあという気がする。

また、ノウハウが無いまま通訳をやっていた私も同じような経験をしたり、共感できたり、似たようなことを考えたことがあるなあ、と思いながら読んだ点が多いということは、通訳という技術は実際どれくらい体系だって学べるものなんだろう、という点も疑問に思った。米原さんの文章を読んでいても、通訳という技術は、教科書から学べるものというよりは、ある意味、個人のセンスだったり、人のやり方を見てなんとなく感覚的に覚えたりするような、職人技的技術の域をなかなか超えられていないような気がしてならない。世の中にある通訳スクール的な所ではどんなことが教えられているのかも、ちょっと興味を持ったのだった。

通訳者の壮絶な事前勉強。言葉、文化、ニュアンスに思いを馳せ心を砕くさま。一方で限られた時間に不実な美女(原文に忠実ではないが心地よく聞こえる訳)を生み出すか、貞淑な醜女(原文に忠実だがぎこちない訳)を生み出すか、スピードとアドレナリンラッシュのジェットコースターをある意味叫びながらも楽しむさま。それぞれの仕事にはそれぞれの大変さがあるのは承知だけれど、ちょっとでも通訳をやったことのある者としては、もっと沢山の人に、通訳というのは翻訳機以上のものなのだ、ということを少しでもわかってほしいと願ってしまう。

おまけ:

この本の「師匠の目にも涙」という文章の中で、米原さんは通訳が話者のジェスチャーや言葉の調子、エモーショナルな部分をそのまま再現していくと、笑劇以外のナニモノにもならない、という話を書かれていた。ちょうど最近銭衝さんが、サンシャイン池崎のギャグの「通訳」をするアメリカ人というコントをポストされてたのを思い出して笑ってしまいました。まさにこれは通訳が全てを再現したことが、お笑いになっている!

qianchong.hatenablog.com

一方、同じ文章の中に、被爆者が会議で語る被爆体験を通訳していたベテラン通訳が感極まってしまい、涙で通訳できなくなったエピソードもありましたが、先日ゼレンスキー大統領のヨーロッパ議会での通訳が、やはり感極まって涙声で通訳をしていたのも思い出します。米原さんの文章では、このベテラン通訳者さんが、話し手が訥々と感情を抑えた話し方で辛い話をされたことで自分が逆に感情移入してしまったことを後悔し、抑制された演技で笑いや涙を誘う一流の役者を引き合いに出し、訳者も役者同様、抑制を利かせることが大事、と語っていました。ゼレンスキー大統領の場合は逆に、通訳者の涙が情勢の深刻さ、辛さを引き出したようで、通訳としてこれが正解なのか不正解なのかはわからないですが、聞いた者としてはよりウクライナにより心を寄せることになる、とても印象深い通訳だったとおもいます。

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物語を通じて理解する世界情勢

最近本棚にあった米原万里さんの著作を読み返し始めた。ひとり米原万里まつりといったところです。

数多くあるエッセイの他に、チェコソビエト学校時代の彼女や周囲の人をモデルにして書かれたこの小説も久しぶりに再読。

主人公が通ったソビエト学校にいた謎の舞踏教師オリガ・モリゾウナの過去について、成人してロシア語翻訳者になった主人公が、ソビエト崩壊後のロシアを訪れ、昔の資料や同級生との再会を通じて、謎解きのように真実に迫っていく話。

ロシアのウクライナ侵攻が始まり、ロシアの内情が見えにくくなりつつあるけれど、国内でも戦争に反対するものが大勢逮捕されているという。実際投獄された人の話も聞こえて来るし、実際声を上げることにどれだけ勇気がいるのかと戦慄する。そんな状況の中読んだこの本の主軸は、スターリン時代の激しい政治的弾圧と、それによって人生を大きく変えられてしまった人達の物語。

以前も読んだ話のはずなのに、話の内容は全く記憶から抜け落ちていたのにも驚いたが、とにかくナチスユダヤ人迫害とやっていることは大して変わらない、滅茶苦茶な連行、移送、強制収容、思想的締め付けにKGB(の前身機関)の取り締まりはあまりにも凄惨すぎる。

物語はそんな中をサバイブした女性達の話ではあるのだが、昔読んだ時には気にも留めることが無かった地名や固有名詞も、今はより現実味と色彩を持って認識される。ああこういうことだったのか、こういうものの延長線上に今のロシアがあるのかと、色々な記事や歴史・政治の本を読むのとは違う形で、また目が開かれる思いであった。

家にあるのは単行本なのだが、その最後に米原万里池澤夏樹の対談も収められている。そこで彼女が語っていたこと

エリツィンチェチェンで失敗したのは、ジャーナリストを野放しにしたせいだ。敵の兵士を殺すより前に、ジャーナリストを殲滅せよ、とKGB出身のプーチン大統領は檄を飛ばした。それで男性の書き手はどんどん弾圧されて、今、女性の書き手ががんばっているんですよ。

ちょうどロシア政府が「フェイクニュース」を流すメディアは取り締まる、という規制を敷き始め、それを口実に海外メディアが弾圧されることを恐れて、特派員の引き上げが始まったところで読んだ。そして国営メディア以外も閉鎖が続く。ちなみにこの対談は2004年。ここで頑張っていると紹介されていた女性の書き手、アンナ・ポリトコフスカヤも2006年にアパートのエレベーターで射殺されている。これもまた戦慄。当然ながら色々なことは今に始まったことではない。



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もう数週間前になるけれど、今のウクライナ情勢について、「ロシアの視点に立って」ロシアの歴史観、安全保障観を解説し、なぜ彼らがウクライナを攻撃するのかを解説した、テレビ東京豊島晋作さんのニュース解説YouTubeにあがってきて、とてもとても良かった。

内容も分かりやすくて良かったのだが、なにが良かったといって利用した参考文献やソースをしっかり提示してくれたところ。おかげで、色々なものを読み込んでの解説だというのがよくわかるし、自分でソースに当たることもできる(こういう姿勢を持って発信してくれる日本のマスコミがちゃんと存在するという発見も嬉しいものであった)。

そしてさらに良いなと思ったのは、最後の最後に、一般の人達が、こういう状況になったからといきなり難しい専門書を読んだりして、理解をしようとするのは時間的にもエネルギー的にも難しい、ということを理解した上で、おすすめ文献として、ロシアを舞台にした(この場合は独ソ戦争)小説も紹介していたところ。

小説自体は日本人によるライトノベル系であるようなのだけれど、考証がちゃんとしていて、良く書かれているものらしい(読んでないからわからないけど)。いずれにせよ、新書的なものを読むよりは、とっつきやすいだろうし、そこから興味が広がることもあるでしょう。そういう点で、すごく良いサジェスチョンだと思った。

誰が発信したのかよくわからないツイッター情報やネットの情報など、細切れの情報を自分でうまくつなぎ合わせられないままなんとなくアップデートを追うだけではやはり危険。それはどう頑張っても土台になりえない。色々なものに多角的に目を通し消化することの大事さを思う今日この頃。

小さいさん、英語でアジアの歴史にふれる、その1

イギリスに来てイギリス史にすっかり詳しくなってしまった小さいさん。学校では当然ながら英国史をがっつり勉強中です。歴代のイギリス王の名前も全部言えちゃうほどはまっておりますが、イギリスの中高のカリキュラムを見てみると、日本史をはじめとするアジア史は全くやる予定はなく、アメリカ史は公民権運動などについてはやるようですが、かなり限定的。

日本人と中国系アメリカ人の血が流れる小さいさん、自分のアイデンティティのためにも、また将来アメリカに帰ることがあっても困ることのないように、アメリカ史・アジア史は親がフォローしないといけないエリアでもあります。

歴史といえば、私が子供の時は漫画でも随分覚えたなあ

ただ漫画をすらすらと読み進めるほど日本語が得意ではない小さいさん。日本語レベルが追い付くまで待っていては日が暮れてしまいそうなので、日本史を学んでもらうにも、日本語の教材はあまり使えないのがちょっと残念なところです。でもこの機会に、色々と日本史に限らず、アジアの歴史や文化を学べそうな英語のコンテンツを探すことにしました。

英語で三国志

結構戦もの、が好きな小さいさん、じゃあ三国志なんかどうだ!と探したらありました。

マンガ三国志英語版。

三国志って、今もゲームになったりしているし、意外と若者の間でもそれぞれのキャラがよく知られているというのは、なかなかすごいことだと思うんですが、どうでしょう。だからこそ、子供にもある意味当然のこと?として、知っておいて欲しい話でもあります。

これは中国人による作品で、1冊1冊が薄めで全13巻ぐらいあります。Kindleだと1冊3ポンドちょっとだったので、早速ダウンロード、「ピーチツリーの下で3 brothersが云々・・」などと言いながら、読み進めています。

私はアメリカで学生をしていた時に、中国の近代史を英語で勉強したんですが、中国の地名、人物名や固有名詞、漢字表記は知ってるけれど、日本語での読み方しか知らないものが多くて、英語での資料や論文を読むのにちょっと苦労したことがありました。英語だと中国語の音をローマ字表記しますからね。

当然英語での三国志も、登場人物や地名は全部中国語読み。日本だと劉備は「りゅうび」ですけど、英語表記だとLui Bei。呂布は「ろふ」じゃなくてLu Bu、字面だけ見てるとちょっとだけ混乱。曹操Cao Caoでなんとなくわかる(笑)。

さすがにローマ字表記だと四声は滅茶苦茶ですが、子供は中国語名をちゃんと覚えているのだなあと思うと、なんだか感慨深い。ただ子供の話を聞いていると、時々どの場所の話をしてるのか、誰の話をしてるのか分からなくなってしまいます(苦笑)

マンガの三国志といえば、日本人にとっては横山光輝バージョンですが、こちらも今バイリンガル版が、今少しずつ発表されているみたい、ただ値段がべらぼうに高いのでちょっと諦めました。

あと私にとって三国志といえばNHKの人形劇!あれも格好良かったですよねぇ~。

フィギュア、ちょっと欲しい気も・・・

YouTubeでも、三国志の話をアニメーションで15分ちょいに面白くまとめたのがありました。子供はとりあえず、こんな感じのものが足掛かりになれば、いいんじゃないかな~と。

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子供向けの英語版日本の歴史本はまだまだ探し中・・

ということで、続く。

子供にばなな、英語のばなな

4-5年生になった頃から大人の本もボチボチ読むようになった小さいさん。ただ好きなジャンルが推理小説とちょっと偏り気味なので、折を見て他の世界も見て欲しいなぁとは思っている。いや、好きなものをどんどん掘り進めてくれるのは全く構わないんですが。

しょっちゅう日本に帰れていないし、補習校にも通っていないし、内外でそれほど日本の歴史や文化に多く触れる機会が無いため(アニメ以外は・・・苦笑)、日本やアジアの歴史にしろ文学にしろ、親がちょっとずつ日本語じゃなくてもいいから、差し込んでいかないといけないなぁと思っているところ。

そんな時、本屋にあった吉本ばななのキッチン英訳本。つい掴んで買ってしまった。海外で一番(英語で)手に入りやすい日本文学といえばやはり村上春樹さんで、私も随分彼の作品は英語版で読んだのだが、吉本ばなな東野圭吾、他にも最近では私が知らない最近の小説家の作品が結構英訳されて、アマゾンで買わなくても地元の本屋で売っていることに気が付いた。ハードカバーの新着本みたいな感じで、夏川草介の「本を守ろうとする猫の話」という本も山積みされていた。

そんななかで吉本ばななを選んだのは、私がちょうど中学生の時に読んだからなのだが、当時読んだのは「キッチン」ではなくて「つぐみ」だったことに買ってから気付き、こちらは結局アマゾンで購入。

子供に渡す前に自分でも読んでみた。「つぐみ」を読むのは10代、20代後半、40代とこれで3回目。英語で読むのは初めて。

「つぐみ」を初めて読んだ中学生の時、なぜか病弱なつぐみの破天荒な行動に励まされて、ものすごく元気がでた記憶がある。これは周囲の目を気にせず、自分の好きなようにふるまっているつぐみが羨ましかったのかもしれない、つまりは自分はそうすることはできない抑圧された気持ちを持っていたのかもしれないなあ。

大人になって読んだ時は、そんなつぐみの言動を「痛い」と感じ、さらに中年(!)になって読んだ今回は、特につぐみの言動に関してエクストリームだとも思わず、ああこんな子もいるよな、位にしか感じなかった。

もしかしたら英訳で読んだので、色々なニュアンスがそれこそLost in Translationしてしまったからなのかもしれない。つぐみの荒っぽいもの言いも、英語に訳してしまうとちょっとSassyな感じの女の子にしか感じない。汚い乱暴な日本語って、どっちかというと使う単語というよりも語尾で決まったりしてしまう、それは英語に訳すととたんにスッと消えてしまう感じがする。

当時の東京の雰囲気も、どこかの海辺の小さな町の旅館の感じも、英語になると何かが消える。あとは以前読んだ時の自分の知識と記憶で補完するしかなくなる。何語であれ、翻訳されたものというのはそういう部分があるのは仕方ないのかもしれない。

そのせいなのか、加齢(!)のせいなのかわからないが、今回読んだ吉本ばななは、話の筋は一生懸命追うものの、昔のように何かがぐっと残る感じがあまりしなかった。翻訳のせいなのか、年を取って感受性が擦り切れてしまったのか、今はこの物語を必要とする時期じゃなくなったのか。

でも今回はつぐみ本人よりも、語り手であるいとこのまりあや周囲の人がどこまでも優しいんだなあ、という部分が心に残った。しょうがないなあ、といいながら受け入れてくれる、そんな優しい世界が今は羨ましいのかもしれないかな。

キッチンは初めて読んだ。ここでも、孤独で寂しげな世界の中に、分かり合える人達が出てくる。ちょっと悲しいけれど優しい世界。

11歳の子供はどう読むか、子供部屋に置いてきたけれど、まだまだ他の推理小説に夢中なので、部屋に積み上げてある状態。いつか読んでねー。

Kitchen

Kitchen

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2021ロックダウン日記第5週

2月に突入。先月の目標は「仕事でストレスをためない」。で結構ゆるっと仕事できた。じゃあ今月は「仕事に(全)集中」と決めていたら、いきなり会社でトラブル案件発生。4日間、毎日10時間以上デスクに座り続ける日々となってしまった。毎日根を詰めながら、色々な感情が沸き起こったのは言うまでもないが、座りっぱなしなのでとにかくお尻と太ももの裏が痛くて痛くて仕方なかった。

その間子供はほぼネグレクト状態だし、家事も必要最低限で後は旦那に丸投げ(そこはあまり悪いとは思っていないふしもあるw)。もうこれ以上は無理ーと夜10時頃には全部投げ出すのだが、その後は全然目がさえて午前3時頃まで眠れず。でも朝はスッキリと目覚め、また黙々と仕事を続ける・・の繰り返しであった。

毎日頭はかなりスッキリしているし、体も疲れず、でも脳内が変にハイになっている感覚があり、仕事の途中で全速力で何度も廊下を駆け抜けて耳の横で風がシュッと切れる音を楽しんだり、坂田師匠歩きで何往復もしてみたり、ちょっとおかしかったと思う。座りっぱなしだったから、体力は余っていたのかもしれない。

バーチャル誕生日会

子供の友達の誕生日会、バーチャルで開催。Zoomでみんなを繋げて、「Among Us」というオンラインゲームをえんえんとやっていた。

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いまいち私はルールをわかっていないのだけれど、各プレイヤーが、時間内に与えられたタスク(決められた場所にいって何かのボタンを押すとかそういうの)をする。ただその中に一人裏切り者が混じっているので、それが誰かをあてるゲーム、らしい。裏切り者役のプレイヤーは、偽タスクをやりつつ、他のプレイヤーのタスクの邪魔をしたり、殺したりできるらしい。

皆がZoomをミュートにして(時に表情を見られないようにカメラをオフにして)タスクをやる。時間が来たらディスカッションタイム。お互いの行動を観察して、誰が裏切り者だと思うかを話し合い、最後にみんなで投票する。

まあその議論が喧嘩してるの?というくらいヒートアップしていて、一瞬大丈夫かと心配になったが、子供はケロっとしていて「これ滅茶苦茶楽しい」と。結局3時間ぐらい遊び続けていた。

ケーキも無ければ、ハッピーバースデーの歌もないけど、こうやってみんなでわいわいギャーギャーやる機会さえ今の子供には貴重・・って本当に酷な話だ。

ロックダウンになってほぼ1年。子供が大きくなって、あの頃1年ちょっとだけ、コロナだロックダウンだって、変わった時期があったよね、と言える位の程度で終わるといいんだけど。

キャプテントム亡くなる

去年の4月ごろに、100歳のお爺ちゃん「キャプテン・トム」が、ひっ迫する医療機関を支援するため、歩行器を使って家の庭を100回往復する、というキャンペーンを始め、47億円の寄付を集めてものすごく話題になった。

その功績が称えられ、女王様からナイトの称号を与えられたり、誕生日には自宅の上を戦闘機が飛ぶなど一躍ヒーローとして時の人となったのだが、なんとコロナに罹患して、2月に入り亡くなってしまった。半旗が掲げられ、首相が水曜日6時に彼の功績をたたえるためにみんなで拍手をしましょうと呼びかけていたが、我が家の周辺は静寂のままであった。

コロナ対策にしろ何にしろグダグダな政府、なんだかなぁ。彼の功績は素晴らしいけれど、100歳の老人をこんなにもちあげ、こんなに寄りかかっていいものなのかという気持ちは無いわけではなかったし、そして最後は国の宝みたいに称えていたお爺ちゃんを、コロナから守れずに、亡くしてしまうとは。

イギリスに来てまだ数年、なんとなくこの国で起こっている色んなことはまだまだ他人事な気分でいたのだが、ここに来て初めて、イギリス政府に対するいら立ち怒りをはっきり自覚した感じがした。

ロックダウンも1回目の時は、毎週医療スタッフをたたえるために決まった時間にバルコニーに出て拍手をしよう!というキャンペーンがあり、みんな結構一生懸命やっていたのだけれど、ロックダウン2回目以降はもう誰もやらなくなった。なーにが拍手しようだ、国民に拍手させるよりもしなきゃいけないことがあるでしょう、とでもいったところだろうか。

植木に癒される

エアプランツでさえ殺してしまうほど植木の世話が苦手な私であるが、ロックダウンになって、家の中に植木を少しずつ買い足し始めた。会社の同僚でこういうのが凄く好きな人がいて、家の中には60ほどプラントがあるらしい。写真を見せてもらうと、緑がいっぱいのインテリアがそれはそれは素敵で、それに感化されたのもあり。

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この週も、2つ追加。

ガーデニングとか植木に対するイギリス人の思い入れって、すごい。ロックダウンでも2回目以降、ガーデニングセンターは、エッセンシャルなビジネスとして店を開けてもいいことになった位。医者で検診を受けたときも、普段どんな運動をしているか申告するチェック欄に「ガーデニング」があったw

植木に対する知識がほとんど全く無い私は、まずどのプラントを買ったら良いかもわからなかったので、インスタで広告が出てきたオンラインショップを使っているのだが、このサービスがなかなか良い。このビジネスについては、また別に書こうかな。

しかし植木を買ったーと嬉しそうにインスタストーリーに写真をあげたら、アメリカにいる知り合いから「そんなに植木買って、アメリカに戻ってくる気ないんじゃないか」と指摘されてしまい、うっ・・(苦笑)。実際素敵な植木に大満足なのだが、いざアメリカに戻る事になったら、持ち帰れないな・・と思っていたところだった。まあ、その時が来たら、鉢は持って帰るよ・・。

今週の、食に走る

冷凍食品に頼る。

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これはパパがロシアのスーパーで見つけてきた、小籠包ではなく、ジョージアグルジア)のヒンカリ。ジョージア料理、シュクメルリとか、日本では流行ってますね。

ミールキットに頼る。

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YouTubeで一躍有名になったUncle Rogerに登場したことでもおなじみの、バラマーケットにあるシンガポール料理屋台MeiMei. 大好きなナシレマやラクサのペーストなど注文してみた(このサイト、他にもバラマーケットの色々なベンダーの商品を配達してくれる!)。ご飯はココナツミルクで炊き、後はパックのものを温め・・・

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フイヨ~、久しぶりのこの味。レンダンのミックスも買ったので、今度は自分で牛肉を煮込むところからやってみる(時間が取れますように・・)

勘に頼る。

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出来心で買ってしまったタイのもち米、冷凍庫に残っていたイカ、買ったはいいが全然使っていない麺つゆ。これを適当に合わせてイカ飯もどきを作成。というかイカ飯。もち米は浸水させていたのだが、途中仕事が地獄になってしまい、料理をする時間がなくなってしまったので、冷蔵庫に2晩ほど放置せざるを得ず。特に問題なく出来て良かった。

今週のコンテンツ消費

子供、進撃の巨人にはまる。色々グロい描写もあるしなにより巨人キモチワルイ~のだが、話についつい引き込まれて私も一緒に見てしまう。Netflixでイギリスでは期間限定で見れていたのだが、期間が終わってしまったので、今では日本で配信されているものを見る。しかし英語字幕がないため、子供がいちいち何を言ってくるのか聞いてくる。ちゃんと理解したければ、もっと日本語勉強しようね~。

今年はちゃんと本を読みたいな、せめて1ヶ月に1冊は・・と思っていたところにブッククラブのお誘いがあり、飛び乗る。それで久しぶりに小説を読んでいる。トルコの女流作家によるこの作品、よくあるハードモードな人生を送った女性の一生を振り返る物語で、宗教や社会による構造的女性差別、貧困、マイノリティ、性的虐待と搾取など、今のところそこに出てくるポイントも取り立てて新しいものではないように思える。

レイラの最後の10分38秒

レイラの最後の10分38秒


・・・のだけれど、話のプレゼンテーションというか、フォーマットの妙に引き込まれている。主人公が殺されゴミ箱に捨てられ、既に死んでいるのだけれど、その細胞活動が止まる10分ちょっとの間、彼女の脳細胞はまだうごめいていて、走馬灯というとなんだか語弊がある気がするのだが、1分毎に彼女の人生の色々な出来事がフラッシュバックしていく。

自分も死んで全てが止まっても、突然スイッチがオフになるのではなく、こうやってじわじわと人生のことを思い出しながら消えてくのかな、あんまりこんな形で振り返るのやだな、自分はパッと電源落としたいな。この話、主人公が完全に死んで終わるのかまだわからないけれど、久しぶりに物語の世界に引き込まれる、という感覚を楽しんでいる。


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コロナが始まった去年は本当にバタバタしていて余裕が無く、お雛様も出せずに終わったのだけれど、今年は頑張って2月中に引っ張り出した!!そして週末は冷たい粉雪!!今月もあっという間に過ぎそうな気がするけれど、少しでも深く、楽しく。