愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ポルトガルは良いその⑤:リスボンで激ウマブラジル

リスボンに行ったのに、まだポルトガル料理のエントリーが無い!(笑)初日のディナーは、リスボン在住のブラジル人同僚と旦那さんと合流して、ブラジル料理

本当は彼女のおススメのところに行こうとしていたのだけれど、どこも予約がいっぱいで入れず、適当に探して行ったところがなかなか良かった。ちなみにリスボンではThe ForkというTripadvisorがやっているオンライン予約サイトを使うとお店を探しやすい。フランスでも使ったけど、時々すごい割引ディールがあるので結構使えます。

行ったのはこちら。

comidadesanto.pt

本場ブラジル人のおススメに従って色々頼んでみたよ!

f:id:Marichan:20220321003251p:plain

おなじみ、ポン・デ・ケイジョ、つまりはチーズパン。ここではポン(pão)、じゃなくてポンジーニョ(pãozinho)と呼ばれていました、ちっちゃいパン、的な意味のようです。なんかカワイイ。そういえばロナウドじゃなくてロナウジーニョ、もこの法則だな!

このパン、ミスドポンデリングのヒントになったとかならないとかいう話も聞いたことがあるけど、タピオカ粉とチーズなどが原料で、モッチモチです。箱入りのミックスを売ってたりするので、家でたまーに作ることもあります。

f:id:Marichan:20220321003811p:plain

ボリーニョ・デ・フェジョアーダ(bolinho de feijoada)、ブラジルの代表的な豆とお肉のスープ、フェジョアーダを、コロッケ状にしてあります。ブラジルの有名シェフ、Katia Barbosaという人の発明なんだとか。

f:id:Marichan:20220321005220p:plain

そして今回意外に美味しくてびっくりしたのはこちら、Sopa Cremosa de Mocotó。モコトーのクリームスープ、つまりは牛の脚のスープです。鶏の脚なら食べたことあるけどな~。ちょっとゲテモノ好き?な旦那が頼んでみたのですが、これが予想に反してとっても美味しかったです。すごく上品で深い味のスープ。

本場で食べると、コラーゲンがタップリついた骨と関節がどん!と入っていたりするようですが、このお店のは綺麗に処理して細かくしたものが入っているので、初心者にも食べやすい。

f:id:Marichan:20220321010513p:plain

Escondidinho de Carne de Sol。エスコンジーニョというお料理。これはメニューを見て同僚がわ!と喜んで頼んでいた。当然ながらブラジルでも地方によって食べるものが違って、彼らの地元料理だったみたい。

いわゆるシェパードパイというかグラタン的なものなのだけれど、ここで使われているCarne de Sol(太陽の肉!)というのは、天日干しされた牛肉だそう。このお肉や炒めた玉ねぎ、キャッサバのピューレと、カトゥピリというブラジルのクリームチーズ的なものが層になっています。

f:id:Marichan:20220321012749p:plain

子供が頼んだのはミックスグリル的なもの。ソーセージ、ポークチョップに、焼いたプランテーン(バナナみたいの)。付け合わせに小さなフェジョアーダ、フライドポテトそしてケールの炒めたのがついてきます。ボリュームたっぷり。

f:id:Marichan:20220321012943p:plain

そして今回一番のヒットは、Bobó de camarão、ボボ・デ・カマラォン、エビのボボ!写真ではわかりにくいですが、エビのチャウダー的なものです。エビ、玉ねぎ、パームオイル、キャッサバのピューレ、そしてココナツミルクで煮込んだもの。表現が難しいのだけれど、初めて食べる味なのになんだか懐かしい感じ。アフリカにルーツがあるお料理だそう。これは家で作ってみたいなあ。

これだけ食べてデザートも行っちゃう。

f:id:Marichan:20220321013758p:plain

O Melhor Quindim da Europa、ヨーロッパいち美味しいキンジン、とメニューにあったので、なら頼んでみよう!と注文したこちらのケーキというかカスタード的なもの。リング状になっているのを切り分けてくれます。砂糖、卵黄、シュレッドしたココナッツが材料。卵黄がメインなので、結構密度があり、甘い~。底にたまってるのがココナッツと思われるが、なんとなくケーキの底っぽい感じの食感になっている。ヨーロッパいちかどうかは、他を食べたことが無いので謎です(笑)

f:id:Marichan:20220321020556p:plain

あとはさっぱりと、パッションフルーツのムースもいただきました。

今回同僚が色々とポルトガル語で注文してくれたのもあったからか、お店の人達もみんなフレンドリーで色々冗談言い合ったり、和気あいあいと楽しいお店でした。皆が喋るポルトガル語、何か聞き取れる部分あるかなぁ、と一生懸命聞き耳を立ててみたけど、コンテキストが分かっていれば、なんとなく他の欧州の言語と似た単語を拾ってわかる部分もあったり(これみんなで分けたいんだけど、とか)。個人的には、YesがSimっていうのが聴いててカワイイなぁと思った次第でした。

ブラジル料理というと、どうしてもロンドンでもシュラスコ料理屋とかばかりになるんだけど、食べたことの無い料理を色々試せて、とても良かった!

ポルトガルは良いその④:ツナといってもマグロじゃない

リスボンの街をフラフラと歩いていたら、黒装束に身を固めギターを抱えた団体に遭遇しました。

f:id:Marichan:20220314075411p:plain

ギターやマンドリンを弾きながら次から次へと伝統的なポルトガルの歌を歌っています。タンバリン捌きもお見事。

anTUNia という名前のこのグループ、ヌエバ・デ・リスボン大学のサイエンス&テクノロジー学科の学生さんだったよう。このグループのポルトガル語のウェブサイトを見つけたものの、翻訳にかけるとこんな結果が・・

ポルトガル語
f:id:Marichan:20220316043832p:plain

英語
f:id:Marichan:20220316043739p:plain

日本語
f:id:Marichan:20220316043657p:plain

・・・科学技術マグロ!!!

彼らはギターを抱えたマグロなのか。何か隠れた意味があるのか。科学技術で持って水産業をどうにかしようとしている人達なのか。・・などと色々混乱してしまいましたが、「Tuna」とはスペインやポルトガルなどで、伝統的な音楽を演奏する学生バンドのことを指すようです。しかもその起源は13世紀にまで遡るそうで、当時学生たちが食費などを工面するために音楽を演奏したのが始まりなんだとか!こういう格好なのも、昔からの伝統を踏襲してのことだそう。

観客の中から女性ばかりを集め、彼らが肩にかけていた布をそれぞれにかけてくれた思ったら跪いてのセレナーデ・・・!

f:id:Marichan:20220316045643p:plain

私も布をかけてもらったんですが、ウールなのか結構重くて暑かったです(笑)


この伝統的な学生音楽グループ「Tuna」、各大学にあるようで、このグループのYouTubeチャンネルを見てみたら、色んな大学のTunaが集まって演奏する大会があったり、路上での演奏だけでなく、オーケストラも入れてのなかなかクオリティの高いリサイタルを開いたりと、色んな活動をしているみたい。ポルトガルの大学の、部活というかサークル活動、初めて知った世界!練習は週2回、夜9時からだそうですよ!

ポルトガルは良いその③:リスボンの素敵な高低差

リスボンは、なんとなくサンフランシスコを彷彿とさせる風景や特徴がいくつかあったのが非常に興味深かった。リスボンはサンフランシスコもびっくりな、高低差の激しい坂の町でもあります。

f:id:Marichan:20220311230330p:plain

あんまり平らなところがない!

f:id:Marichan:20220227035143p:plain

サンフランシスコのケーブルカーは、道路の下で回っているケーブルに車両をかませて走るスタイルだけれど、こちらはパンタグラフから電力とって走るスタイル。

f:id:Marichan:20220227035329p:plain

でもその高低差はもっとダイナミックで、ちょっと向こうを見ると建物がどんどん積み重なって見えて、ものすごくいい感じです。

f:id:Marichan:20220227035434p:plain

そんなダイナミックな風景を高みから見物することができる、サンタジュスタのエレベーター。これ、日本で言ったら明治末期に建てられたもの、って考えるとなかなかです。

f:id:Marichan:20220227035547p:plain

このエレベーターは高台に連れて行ってくれるのですが、観光客で混むし料金もそれなりなので、別に歩いて上までいってもすぐだよ、というリスボン在住の同僚の助言をもとに、坂を上ることにします・・って急なので坂というより階段の部分も多し。随分高いところにショッピングモールもどん、とありました。

f:id:Marichan:20220227035627p:plain

これくらいの傾斜は、サンフランシスコにもいっぱいあって、住んでいるとそれが坂と認識されなくなり、ほぼ平地の感覚で歩いてたな・・・。当時はかなりフィットだった思います。そんなに大変な坂ではないという認識はまだ残っていた。

そういえば、リスボン滞在中はこういう坂道も含め、毎日10キロ以上は歩いていたのに、全然疲れなかった不思議。足が痛くなるとか、筋肉痛になるとかも全くなく、気持ちよく眠れたのが凄く良かった。平地を歩くより、坂に応じて違う筋肉を使うから一か所に疲れがたまらなかったのかもしれないし、石畳で足つぼ効果があった・・?!かはわかないけれど、リスボンの石畳は冷たくなく、なんとなくリノニウムのような柔らかさもあったような。何だかはわかりませんが、とにかく坂は多けれど足には優しい街でありました。

f:id:Marichan:20220227035705p:plain

高台からの眺め。城、モニュメント、海、なんだかジブリに出てきそうな

f:id:Marichan:20220227035756p:plain

f:id:Marichan:20220227035824p:plain

f:id:Marichan:20220227035908p:plain

f:id:Marichan:20220227040022p:plain

Wicked

先日ミュージカルWickedを観に行ってきた。なぜかこのミュージカルについては今まで全く気にも留めていなかったのだが、実は数あるミュージカルの中でもずいぶん成功している作品のひとつなんだそうである。そして住んでいるとつい忘れがちではあるけれど、こういうものを思い立ったらふっと観に行けるのは、やはりロンドンならではという気もする。さすがパリ・ロンドン・ニューヨークというだけありますね。ちょっとお金を出せば、いや時には全く出さなくても、世界最高峰の芸術に簡単に触れることができるのだから。

f:id:Marichan:20220308030858p:plain

オズの魔法使いで悪者役である緑色の西の悪い魔女が、実はそんなに悪い人じゃなかった、本当はもっと状況は複雑で・・という、オズの魔法使い裏話というか外伝的というか、緑の悪い魔女と、良い魔女の友情物語的な内容。

・・とここまで書いたのは良いのだけれど、なぜだろうこのミュージカル、あまり刺さらなかった。この数日かなり睡眠不足だったこともあるのだが、歌が始まるとどんどん眠気が襲ってきて睡魔と戦うのが大変だった。お芝居になるとそれなりに話には引き込まれるものの、肝心のミュージカルナンバーになると、いつもと違いほとんどメロディが頭に残らなかったのが(眠かったからというだけでもなく)逆に印象的だった。

とはいえ、ハミルトンやレミゼなど、好きなミュージカルは一生懸命歌詞を覚えてみたり、学生時代に実際に舞台でやったりと、随分見る前から前勉強していた部分もあるのに比べて、今回はあまりに興味が無さ過ぎたかな。原作は小説で、この舞台と少し内容が違うようでもあるのだけれど、どうしてこういう外伝的な話を作ろうと思ったんだろう、その部分にはちょっと興味を持った。実はオズの魔法使いという物語そのものも、当時のアメリカの資本主義社会を批評したものだった、らしい。思えばオリジナルも子供の時に映画を見た切りで原作も読んだことが無いな、機会があれば読んでみたい。

それでもこのミュージカル、セットも良かったし、1幕の終わりに主人公が空を飛ぶナンバーは一番ぐっと来たし、最後のカーテンコールで、2人の主人公がお互いを抱きかかえながら、転がるように走り出てきたのがすごく良かった。ブロードウェイでの西の魔女の役のオリジナルキャストは、フローズンのエルサ役だったイディナ・メンゼルで、ロンドンのキャストも似たような声質の人だった。良い魔女、グリンダ役の人はちゃんと声楽のトレーニングを受けた人のように見受けられた。

舞台装置、衣装もなかなか良かったです。

f:id:Marichan:20220311025441p:plain

ふと思い出したが、以前子供が夏休みにミュージカルのサマーキャンプに参加した際のインストラクターのひとりが、西の魔女役のスタンドバイ経験者だった。イギリスでの習い事、アメリカでこういう演劇キャンプに参加するより、ずいぶん格安な上にクオリティが高くて驚く。ロンドンの芸術への懐は深い。

物語を通じて理解する世界情勢

最近本棚にあった米原万里さんの著作を読み返し始めた。ひとり米原万里まつりといったところです。

数多くあるエッセイの他に、チェコソビエト学校時代の彼女や周囲の人をモデルにして書かれたこの小説も久しぶりに再読。

主人公が通ったソビエト学校にいた謎の舞踏教師オリガ・モリゾウナの過去について、成人してロシア語翻訳者になった主人公が、ソビエト崩壊後のロシアを訪れ、昔の資料や同級生との再会を通じて、謎解きのように真実に迫っていく話。

ロシアのウクライナ侵攻が始まり、ロシアの内情が見えにくくなりつつあるけれど、国内でも戦争に反対するものが大勢逮捕されているという。実際投獄された人の話も聞こえて来るし、実際声を上げることにどれだけ勇気がいるのかと戦慄する。そんな状況の中読んだこの本の主軸は、スターリン時代の激しい政治的弾圧と、それによって人生を大きく変えられてしまった人達の物語。

以前も読んだ話のはずなのに、話の内容は全く記憶から抜け落ちていたのにも驚いたが、とにかくナチスユダヤ人迫害とやっていることは大して変わらない、滅茶苦茶な連行、移送、強制収容、思想的締め付けにKGB(の前身機関)の取り締まりはあまりにも凄惨すぎる。

物語はそんな中をサバイブした女性達の話ではあるのだが、昔読んだ時には気にも留めることが無かった地名や固有名詞も、今はより現実味と色彩を持って認識される。ああこういうことだったのか、こういうものの延長線上に今のロシアがあるのかと、色々な記事や歴史・政治の本を読むのとは違う形で、また目が開かれる思いであった。

家にあるのは単行本なのだが、その最後に米原万里池澤夏樹の対談も収められている。そこで彼女が語っていたこと

エリツィンチェチェンで失敗したのは、ジャーナリストを野放しにしたせいだ。敵の兵士を殺すより前に、ジャーナリストを殲滅せよ、とKGB出身のプーチン大統領は檄を飛ばした。それで男性の書き手はどんどん弾圧されて、今、女性の書き手ががんばっているんですよ。

ちょうどロシア政府が「フェイクニュース」を流すメディアは取り締まる、という規制を敷き始め、それを口実に海外メディアが弾圧されることを恐れて、特派員の引き上げが始まったところで読んだ。そして国営メディア以外も閉鎖が続く。ちなみにこの対談は2004年。ここで頑張っていると紹介されていた女性の書き手、アンナ・ポリトコフスカヤも2006年にアパートのエレベーターで射殺されている。これもまた戦慄。当然ながら色々なことは今に始まったことではない。



***


もう数週間前になるけれど、今のウクライナ情勢について、「ロシアの視点に立って」ロシアの歴史観、安全保障観を解説し、なぜ彼らがウクライナを攻撃するのかを解説した、テレビ東京豊島晋作さんのニュース解説YouTubeにあがってきて、とてもとても良かった。

内容も分かりやすくて良かったのだが、なにが良かったといって利用した参考文献やソースをしっかり提示してくれたところ。おかげで、色々なものを読み込んでの解説だというのがよくわかるし、自分でソースに当たることもできる(こういう姿勢を持って発信してくれる日本のマスコミがちゃんと存在するという発見も嬉しいものであった)。

そしてさらに良いなと思ったのは、最後の最後に、一般の人達が、こういう状況になったからといきなり難しい専門書を読んだりして、理解をしようとするのは時間的にもエネルギー的にも難しい、ということを理解した上で、おすすめ文献として、ロシアを舞台にした(この場合は独ソ戦争)小説も紹介していたところ。

小説自体は日本人によるライトノベル系であるようなのだけれど、考証がちゃんとしていて、良く書かれているものらしい(読んでないからわからないけど)。いずれにせよ、新書的なものを読むよりは、とっつきやすいだろうし、そこから興味が広がることもあるでしょう。そういう点で、すごく良いサジェスチョンだと思った。

誰が発信したのかよくわからないツイッター情報やネットの情報など、細切れの情報を自分でうまくつなぎ合わせられないままなんとなくアップデートを追うだけではやはり危険。それはどう頑張っても土台になりえない。色々なものに多角的に目を通し消化することの大事さを思う今日この頃。