愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

アメリカにおける日本人問題


大学の同窓会のネットワーキングイベントがあるんで冷やかしに行ってみた。学生時代は特に愛校心があるわけでもなく、たいしたことを学んだわけでもなく、ただただ雪深い田舎ぶりがいやでしょうがなかったけれど、学生時代よりも、卒業した後のほうがこの学校に行ったことによる恩恵を色々受けているような気がする。私の学校は東海岸にあるけれど、各地にUniversity clubと呼ばれる同窓会の建物みたいなのがあって、そこで同窓会イベントが色々あったりする。サンフランシスコでは、いくつかの大学が共同で使っているクラブがあって、そこで「20−30代の若い同窓生が集結」する「ネットワーキング」イベントが開催される・・はずだったんだけど・・・ふたを開けてみると若者の出会い系パーティーだった(笑)胸に名札をつけた若者たちがお酒片手に獲物を狙ってきょろきょろギラギラ・・・。ま、ネットワーキングっちゃネットワーキングね。


古臭い建物の中には、こんな書斎が・・・。しかし古臭すぎて、なんだかクサかった。


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昔はここに男の人しか入れなかったりしたのかも・・・。そしてここでパイプをくゆらせてお酒を飲みながらビジネスや政治の取引がされていたりしたのかも。昔読んだフィッツジェラルドの本の中にも、こういうクラブにたむろっているシーンがいっぱいでてきたような。でも今見ると、ただの古臭い時代の残骸にしか見えん。


そして今回のヒットは、そんな古臭い書斎にあったこんな本。


「The Japanese problem in the United States」


!!!アメリカにおける、日本人問題。タイトルだけ見ると、畑における、虫の問題、みたいな感じ。出版は1915年、日本でいうと大正4年。ぎぇ〜!こんなタイトルの本があるとはなんとアナクロな。「今のアメリカにおける日本人問題は、お前だ!」と友人たちに突っ込まれ、本と一緒に記念撮影したりもしてみた。私のお土産にこの本を盗もう!という友人もいたがそれは丁重にお断りして。


てっきり、日本人移民は害だ!という本だと思っていたのだけれど、オンラインでも読める(http://www.questia.com/PM.qst?a=o&d=61512208)ので、後でもう少しよく見てみると、そういうものでもなく、アメリカにいる日本人移民の実態調査から始まって(やはり農業が多い)、色々な州にある日本人差別の話、日本人の「性格」、そして日本人が、アメリカに同化できるのかどうかを考察した本でした。ちょっとだけ読んでみたけれど興味深い。


日本人はやはり勤勉、清潔で、英語を勉強しようという意欲がとてもある。気性も荒くなく、法も守る。売春に対しても厳しい(もちろん無いわけではないが、中国人やギリシャ人に比べるとなんぼかまし、だって!笑)、特にギャンブルを嫌う(へー)、云々。そんなわけで、日本人移民を差別する理由は無い、と。


差別の背景には、西洋人の受け止め方、日本人が「有色人種」であり、やってきた環境、背景、文化があまりに違うために無意識に起こりうること、先に移民してきた中国人に対する差別感情が尾を引いていること、などなどがあげられた上で、面白いのは、「中国人に比べて、日本人は契約をきっちり守らない」という項目が。ビジネスなどにおいて、中国人は契約をしっかりして、それをものすごくきっちり守るので有名らしい。それに比べて日本人は、ダメダメだったらしい。でもその背景には、日本人はものごとを「フォーマル」ではなくて「パーソナル」に捉える傾向があるからだと・・。あとは「日本人ばっかりで群れる」のが問題とされていたり。


日本人がアメリカに同化できるかどうかは難しいとしながらも、日本人は外のものを受容するキャパシティーは高い(英語を学ぶ意欲とか、実際にアメリカに来てからの生活スタイルとか)との考察が。その後アメリカの移民政策に関する提言が続きます。アメリカの中に残っている日本町が、サンフランシスコと他のどこかにしか残っていない(強力な日系コミュニティはなくなりつつある・・)ことや、私の周りの日系人が日本語まったくわからなかったりするのを考えると、なんだか皮肉な感じもするけれど、これも日本人の長い移民の歴史の結果なのでしょう。


面白いのは、調査とはいえ、結構直感的というか、今だったらもう少し証拠となるデータを出せ!といわれそうな部分も、さらっと書いてあるところ。ちょっと面白そうなので、もう少しじっくり読んでみようか・・・