愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

 生MTT

以前なつみさんとかぶりつきで見たMTTが、今度は会社に講演に来た!!!MTTとは、マイケル・ティルソン・トーマス、サンフランシスコシンフォニーの常任指揮者というか、音楽監督でございます。会社にたまにこういう人が来て講演していくのですが、サンフランシスコ・シンフォニー、サウスベイのファミリー向けにこれからもっとシリコンバレーでも公演活動をするんだそうで、その宣伝もかねていた模様。MTTのほかに、コンサートマスターのおじちゃん、そして指揮者見習い君がやってきました。


早く席を取ろうと、早めに行った会場では、MTTがピアノ弾いてるし!それもかなりうまい!!うきゃー!!やはり指揮の出来る男は、ピアノ弾けたりバイオリン弾けたりしちゃうんですね・・(のだめ)。MTT、コンマスのおじさんと、モーツァルトバイオリンソナタの打ち合わせ中。打ち合わせといっても、ほとんど普通に演奏してるんですが・・・至近距離2メートルで聴くアンサンブル。早く来て、なんだか得した気分!


コンサートマスターであるアレクサンダー・バランチックさんが使っているバイオリンは、俗に「ダビッド・バイオリン」とよばれている、「ガルネリ・デル・ジェス」という、なんかすごい楽器なんだそうです。1742年に作られたのだとか。日本で言うと、徳川吉宗の時代。まずバッハの無伴奏曲を弾いてくれました。音はもっと深みがあるのかなぁと思ったけれど、結構さっぱりした感じの音色。


バランチックさん曰く、いい楽器だから、弾けばいい音が出るというわけでもなく、それなりに気難しい楽器みたい。しかしいい楽器だからこそ、文句が言えないのが欠点といえば欠点デスネー、とのことでした。そしてMTTとモーツァルトバイオリンソナタも演奏。


コンサートで見たMTTの指揮、パワフルでスマートな感じでしたが、実際のトークもそんな感じ。和音の展開についての話、若い音楽家を育てるため、彼が作ったオーケストラの話(マイアミにある、ニューワールド・シンフォニーというの)など、色々してくれました。


サンフランシスコ・シンフォニーには、付属のユース・オーケストラがあって、10代の子供達がオーケストラで演奏する機会もあります。中には8歳、10歳ぐらいのコドモもいたりするらしい。そんなに若くしてMTTの指導を直接受けられる・・なんてうらやましすぎる。そんなユース・オーケストラ出身のお兄ちゃんもやってきて、若者にこういう勉強の機会を与えてくれることのすばらしさ、そして最高峰の音楽家達が、プロになるということ、そして音楽をやることでどんな可能性があるかを示してくれるということがどんなに大事かを力説。このお兄ちゃんも10歳ぐらいから、クラリネット奏者としてユースオーケストラに在籍したのだそう。その後音大にいって、今はMTTが新しく始めた若者向けオーケストラの、指揮者見習い?(フェロー)をしているんだそうです。ちっちゃい兄ちゃんなんだけど、ゆるぎない才能から来る、自信とオーラがまぶしいぜ!って感じのお兄ちゃん。


MTTの伴奏で、ガーシュインが書いた映画音楽をクラリネットで演奏。映画の題名は忘れたけれど、ある女の人に一目ぼれした主人公が、毎日犬の散歩をしているその女の人の気を引くために、犬をいろんな人からとっかえひっかえ借りて、毎日散歩をする・・というシーンで使われた音楽なんだそうで、演奏が始まってしばらくしたら、客席の間を縫って犬を散歩させる人たちが急に登場・・・!!これはMTTが自分の犬3匹を連れてきて、仕込んでおいたらしい。笑。大小3匹のグレーのプードルでした。


MTTはこの兄ちゃんに、ピアノももっと勉強しないといけませんよ、と指導しているようで、このお兄ちゃんピアノもすごくうまい。最後には二人でプーランクの連弾を演奏。二人で微笑みながら演奏しちゃって、なんか心が通じ合っている師弟って感じで、すごかったです。


このほかにも、MTTさんが進めているKeeping Scoreというプロジェクトの紹介もありました。これはクラシック音楽を、もっといろんな人にアクセスしやすいように、いろんなメディアを通じて紹介するというプロジェクトだそうで、すんばらしいウェブサイトもあります。曲ごとのテレビドキュメンタリーもあって、ストラビンスキーの「春の祭典」の一部を見せてもらいました。作曲家や曲の背景だけでなく、オーケストラでそれぞれのパートを演奏する人にもインタビューして、このパートを演奏するのはどういう感じか、という話をしてくれる、なかなか面白そうなドキュメンタリー。


春の祭典」は、当時あまりにセンセーショナルすぎて、初演の時はけが人が出るほどの大騒ぎになったことで有名な曲。このあとQ&Aセッションで、彼が春の祭典を初めて振ったとき、この曲をどうやって勉強したんですか?どうやって消化したんですか?という質問が出たのですが、MTTさん、「彼がこの曲を最初に書いたとき、バレエ曲なので、バレエの練習用にまずはピアノ譜として書かれたんだけれど、若いときにバレエの練習の時にピアノの伴奏係をした。そのときに、ストラビンスキーに直接教えてもらった」んだそうです。このすごいお答えに、会場からは「こ、これは失礼しました・・」的な笑いが。笑。MTTさん、ロサンゼルス生まれの結構な音楽一家のお坊ちゃまで、MTTさんのおじいちゃんはイェディッシュ劇場の創始者、そして「ガーシュインはお父さんのピアノの先生」だったんだって。ひょー!どんだけー!


Q&Aセッションではクラシックおたくみたいな人たちが、かなりマニアックな質問ばかりしてましたが(なぜか男の人ばかり)、質問の前に「僕もピアノをやってまして・・・」「僕は若いころからトランペット吹きで・・・」とか、自分の音楽キャリアを、全員が全員一生懸命アピールしてるのが何か面白かったです。笑。それにしてもMTTはサンフランシスコの宝。近くで話を聴けただけで嬉しかった!彼が振るSFシンフォニーはなかなかエキサイティングです。


Keeping Score: Revolutions in Music [DVD] [Import]

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