愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

アメリカの町内会


同じアパートに住む兄ちゃん、Jさんのお誘いで、会社帰りに初めて「町内会」に参加した。店主の好意で近所のカフェが会場になり、4−50人ぐらいが集まった。


「町内会」と訳していいのかわからないけれど、一応ここにも地域ごとに「Neighborhood Association」と呼ばれるものがあって、週に1回ぐらいのペースで会合が開かれる。内容は、地域の安全やごみ捨てや街灯のことなど、日本の町内会とあまり変わらないかな?ご近所さん同士の親睦会として、道をしめきってバーベキューをしたりする「ブロックパーティー」があったりもする(これはまだ未経験)。


私が住む地域は、色々な観光スポットにも近い住宅街。ショッピングやレストラン街も隣接していて、外部からの人の出入りもそれなりにある。前から「坂の上」「坂の下」など細かいエリアごとにこの「町内会」はあったらしいのだけれど、ちょうど「坂の真ん中」にある我がエリアをカバーする町内会は無かったみたい。でもここ半年から1年ぐらいの間、朝になると道路にゴミが散乱していたり、車のガラスが割られていたり、建物に落書きがあったりと、なんかちょっと治安が悪くなって来ているかな?と思われる事象が色々あったところに(id:Marichan:20060828)、最近立て続けに発砲事件が2件起きたりしたことで、これではいかん!とご近所さんたちが立ち上がった模様。


私もこのエリアに住むものとして、近所とのつながりは持ちたいし、何とかせねばなぁと思っていたので、これはちょうど良い、と会社を少し早めに切り上げて参加したのだった。たっちーがお世話になった?角の酒屋のご主人も来てたよ。


そんなこんなで、話題はなによりも地域の治安のことに集中して、地域の親睦を高めるというよりは、「みんなで犯罪と戦おう!」みたいな感じの集まりになった。日本の実家の町内会だと、そんな犯罪がしょっちゅうあるわけではないし、せいぜい近所の人が集まってごみ捨て当番を決めたりするゆるーい感じだったと記憶しているけれど、ここの「町内会」は、市政、警察、防犯専門の非営利団体、ホームレスの支援団体とも連携していて、そういう関係者が来て色々話をしていった。


みんなガンガン手を挙げて、それぞれの担当者に地域の現状を訴えていたのだけれど、実際私が近所を歩いていて目にしてきたものと全く一緒のことを言っていた。結局みんなおんなじ現状を見てきて、あー、これはちょっと・・・と思ってはいたものの、911に電話するほどのことでない場合、それをどこの誰にレポートしたらいいのかわからないし、近所と交流もそれほどあるわけではないから、周囲と話し合うこともなく、それぞれ個々の胸にしまわれてきてたんだな、という感じ。この日だけで、色々な担当部署の電話番号をたーくさんもらった。


警察からは、このエリアを管轄している警部補(刑事ドラマに出てきそうな、スーツを着たおばさま)のほかに、制服の警官のお兄ちゃんと、私服の刑事さんもやってきた。なんやこの怪しいおっさんは!と思ったら刑事さんだった(笑)だって野球帽にもさっとしたジャンパーを着て、白人なのに火野正平似、なんですよ〜。


今このエリアで問題になってるのは、売春。売春を手引きするPimp(ポン引き、とでもいうのか)の縄張り争いが激しくなっているせいか、今まで平和だったうちのエリアにも夜中に売春婦がうろうろするようになったのです。そしてちょっと離れたところから、Pimpが彼女たち(または彼ら)を見張っている。麻薬取引の温床にもなるし、うちの近所で起きた発砲&殺人事件はだいたいこの縄張りを巡る争いだったりする。ある意味内輪の揉め事でランダムに住人が襲われるわけではないから、まぁ殺人に入らないという考え方もできるんだけど、やっぱり流れ弾にあたったりするのはイヤダ。我が家も夏に、旦那のトライアスロン会場に向かうために朝4時半に外を出たら、すけすけの衣装を着たミニスカートの姉ちゃんたちが家の数ブロック先をうろうろしていてびっくりしたことがあり、住宅街の境界線を越えてとうとうここまでやってきたか!という感じであった。


私たちができることととしては、売春婦やPimpを見たら通報すること。でもただうろうろしているだけだと911に電話しても仕方がないので、この場合はこの問題に特に力を入れているという警部補に直接連絡してくれ、とのことだった。警察も、四六時中うろうろしているわけではないので、売春婦でもホームレスでも、「ああ、この場所にいつもいるよね」と私たちが普通に知っていることが、実は彼らにとっては新しい情報だったりするらしい。やはりそこにいつもいる住人の目が一番ものをいうということなんでしょう。あとは、「売春婦は明るい光がきらいなので、明るい街灯をつけるといいと思います」と言っていた。なんか害虫除けみたいな感じに聞こえてちょっと笑ってしまったが、遠くからでも私服警官に顔が見えてしまうのがいやなのだそうだ。


警官のお兄ちゃんは、過去3ヶ月にした逮捕のファイルをどかーんと持ってきてくれたが、ものすごく分厚かった。そしてほとんどが売春関係。特に15歳以下の子供が搾取されたいたりするらしく、これは大きな問題。ただ売春以外に生活の手立てがなかったり、薬物中毒だったりする上に、更正プログラムが有効ではなかったりして、一人で何十回も逮捕される人もいるそうな。テレビドラマだと、悪い人を逮捕してめでたしめでたしで終わるけど、実際はそのあと起訴立件できないとどうにもならない。売春婦は被害者の部分もあるので、やはりそこらへんが難しいところらしい。Pimpの場合は更正なんて甘いことをいわず刑務所行きだそうだけど。ヒップホップの歌手がPimpは大変だぜ、なんてラップをよく歌っているけど、冗談じゃない。買春の人たちがどこから来るのか知らないけど、そっちも取り締まってほしい。


このほかにも、グラフィティーアーティストによる落書き(これはビルの所有者が消さないと罰金を取られる)もひどい。アーティストとか呼ばれていい気になって変な字体で落書きしてるけど、これはキタナイだけだしムカつく。だいたい落書きのパターンとかが似てるから同じ人がやってる。これは市の行政課の人が夜回りをして取り締まっているらしい(ご苦労様です…)が、スプレー缶をポケットに忍ばせて、しゅーっとやってさっと逃げるので、1年で2人捕まえればいいほうらしい。こういうことは自分の部屋の壁でやってほしい。


あとは車上荒らし。私服の刑事さんは「車上荒らしを捕まえるのが大好き」なんだそうだけど(一人捕まえると30件ぐらいのケースが一気に片付くから)これはもうサンフランシスコだったら高級住宅街だろうがどの地域でも起きるので、自衛が必要。とにかく、たとえ野球帽でも運動靴がはいったバッグでも、車に何も置かないのが賢明。ゴミも、市が管理する公共のゴミ箱の横にソファとかの粗大ゴミを置いたり、ホームレスの人がゴミ箱を漁ったままぐちゃぐちゃにしたりしている。これはそのたびに電話して片付けてもらうしかないみたい。ホームレスは、道で寝ているだけだとなかなか取り締まれないらしく、取り締まるといっても、非営利団体の人たちと協力して、支援施設に行くよう促すだけだから、いつも決まった場所に陣取っている人たちも多い。


ビルの駐車場に入って住人の車を荒らした犯人がいて、防犯ビデオにも写ってるのに911に電話したら「何もできない」といわれたと怒っている人がいたけれど、やはりこれだけ問題が多く、取締りのリソースも限られているのでは、警察も対処する優先度をつけていかないとやっていけないんだろうな、と思った。通報にいちいち対応できないから、売春婦があそこに立ってました!とかいう住民の情報をとにかく蓄積していって、それが一定の量になったら対処していく、という感じになるんだろうと思う。ちょっと今の自分の仕事にその点は似てるなぁ、なんて思ったりもした。


このほかにも、犯罪を目撃したときに、どんなことを通報すればいいかを書き込むカードとか、色々な情報をもらった。って、何か犯罪地帯に住んでいるように聞こえるけど、そんなことはないよ〜。とりあえずは、色々情報ももらえたし、これからご近所にもっと顔見知りが増えると、何かというときに安心かな、という気はするので行ってよかった。


↓犯人が使用した凶器(ライフル、ショットガン、オートマティック、レボルバー・・・って、違いがよくわからん!)

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