愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ムスメサン・セミリンガル


「美しい日本語」台湾に生きる 勉強グループ設立12年目「子や孫に伝えたい」・・という記事がインターネットに出ていた。この際歴史的背景は置いておくとして、私が今までに聞いて一番美しい!と感動したのは、台湾の総統選挙だったか、韓国の大統領選挙だったか(あああ、なんてこと、台湾か韓国だったかさえも覚えてないなんて!ダイブ前でコドモのときだったからということで許してください)の候補者の一人が日本のTVインタビューで話していた日本語だった。どこがどうキレイだったのかはうまく説明できないのだけれど、あんなに知性的で上品な日本語はいまだに聞いたことがない。


外国にいる人の日本語はタイムカプセルでもある。こちらで出会った、収容所に入っていたという日系人のおじいさんの話し方は昭和初期の男子学生風で、「君、○○してくれたまへよ」みたいな感じであった。台北に住む友達と、彼女の親戚を尋ねて台中をうろうろした時、日月潭で地元なんとか族のオジサンにボートに乗せてもらい、湖の真ん中の島まで連れて行ってもらったのだけれど、そのオジサンはどうしても日本語を使って説明がしたいと、小島に建つ「月下老人」の像を指差し、私に向かって


「ムスメサン、あれは月下トシヨリというものですヨ」


ムスメサンとは、わたしゃおとぎ話の登場人物かい、と心の中でつっこみながらも、オジサンの日本語能力に感嘆した次第・・・。


しかし逆に外国に長く住む日本人の日本語はあやしくなりがち。何か言おうにもボキャブラリーがおいつかなくなり「あれが、あれなのよ」となったり、妙に英語交じりになったりするのは、本当に美しくないし、カシコクナクキコエル。


この間大使館に用事があって行った時、パスポート交付の窓口に並んでいたおばさんがNHKニュースに出てくる同時通訳みたいな、R音交じりの鼻にかかった早口で:
「あれよ、あのね、私、パスポート、パスポートなのよ、あの、紙ないかしら」
正解:「パスポートの申請用紙を下さい」


もともと母国語である日本語があやしくなると、反比例して別の言葉がうまくなるかというとそうでもない。パスポートおばさんも然りであった。そういえば学生時代、帰国子女が多い学校に行っていたけれど、中途半端な帰国子女ほど英語も日本語も中途半端だった。友達の中には外国で生まれて日本には4年ちょっとしか居なかった、という子も何人かいるが、彼らの日本語は逆に完璧。セミリンガル=言葉だけでなくきちんと思考ができていない、ということを自分に言い聞かせ、色々な本を読み、色々な文章をかいて、色々な人とお話をするようにこころがけよう。