愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

一晩で違う世界になってしまったアメリカ

選挙から今日で一週間。Facebookにポストした文章(多少改訂)

選挙から1週間もたたないうちに、子供が通う小学校の建物に誰かが人種差別的落書きをする事件が起きました。選挙の後、各地でヘイトクライムが起きている状況を見て心を痛めつつも、ベイエリアにいる限りは安全だと勝手に思っていましたが、そんな幻想はあっという間に打ち砕かれました。

 

アメリカに住んで20年弱。頭のおかしい人に差別的なことを言われたことは一度あったけど、こういう経験をするのは初めてです。ただラッキーだったのかもしれないし、バブルの中にいたかもしれない。でもまさかこんな目の前で、子供が通う学校という子供・家族にとってコミュニティの中でも一番大事な場所でこういうことが起きたことは衝撃でした。

 

見た目からはっきりマイノリティである我が子(ベイエリアでアジア人はマジョリティなんだけど)、いろんな肌の色や見た目の人がいることは知っていても、その裏に何か意味があるということはまだ知らない娘に、差別について、自衛について、どこまで話すべきなのかも悩みました。なにより政治が理由で子供の日常に支障や不安が出る・・という状況は日本で暢気に育った身には経験したことがなかったのでとても戸惑い悲しくも思いました。

 

幸いコミュニティがあっという間に立ち上がり、今朝は学校の周りに保護者やコミュニティの人たちが「みんなここでは仲間、誰もが歓迎される場所」というメッセージを持って子供達を迎え入れてくれました。

 

実は差別的な言葉の中には日本人に対するものもありました。恐らく本気で日本人を攻撃したいというより、ありとあらゆる差別的用語を使ってみたかったような印象ですが、誰が書いたかは知らんが、こういう行為を許す余地はゼロ。そして次期大統領に決まったオレンジハゲ隠し野郎が人種差別を解禁したと思った輩の仕業であると思ったら、悲しいとか怖いとかの感情を通り越して怒りで頭から水蒸気がシューシューでている状態です。

 

これから子供達が住む世界が一体どうなっていくのか、手をこまねいて見ているだけではいけなくなってきました。メラメラ・・燃えてきたぞ。

今まで黒人やヒスパニック、ムスリムの人たちへのヘイトクライムを見てきて、酷いとは思いながらもやはりどこか他人事だった。また自分達に影響があるとしても、それはカリフォルニアでも田舎のほうか、州の外に出た時だと思っていた。しかし選挙があけた瞬間、まさかここ、ベイエリアで、自分のコミュニティで、しかも自分も対象になるような攻撃を受けることになった。

子供の学校の壁に日本人差別の言葉が書かれていたことへの衝撃。ヒラリーが必ず勝つとは思っていなかったので、選挙後の世界は今までのものとは違うものになるかもしれない、とは思っていたけれど、まさかこういう形であっという間に起きることは予想していなかった。

今回の件ではPTAや教育委員会もすぐ動き、学区の全ての家庭に、学校として人種差別やヘイトクライムは断じて許さないという内容のロボコール(音声を既に録音してある)がかかってきた。またコミュニティの人たちが学校に集まって、静かに見守るイベントも行われた。

誰がやったかは知らないが、その前の週にはトランプ支持の言葉の落書きもされていたらしい。新しく国の長になるあのおっさんの言動にインスパイアされた輩による人種差別が多発して、それを地元のオフィシャルが必死に止めようとしていることからして異常すぎる。

選挙が終わってからは連日オークランドでもプロテストが起こっている。ここのところ社会的政治的問題が起こると略奪焼き討ちはよくあること(!)になっていたが、家にいてもヘリやサイレンの音が毎晩聞こえてくるような状況だった。ここ数日は平和裏な集まりも増えていて、地元の高校生が授業をボイコットしたり、地元の市役所にろうそくをもって集まったり、オークランドにある湖を人の輪で囲む、などという活動も起きている。

あのおっさんが当選した後はとにかく怖いという感情、これからどうなるかという不安にさいなまれたが、この事件が起きてからはそれがものすごい怒りに変わっている。また同時に、このコミュニティの中にもある色々な違いや格差についても異様に敏感になってしまっている。

子供の学校はこのエリアでも白人がかなり多いので、私も親として、必ずしも完全に馴染んでいるとも言い難い。そんなところで起きたこの事件。他の親たちは、こんな事件が起こったことをもちろん懸念はするし、落書きを消したり、皆で集まったりしても、結局は攻撃対象ではないのでやはり衝撃度や引きずり度が違うんではないか?という自分の中での変な疑念まで持ってしまっている。なんだか誰もが敵になる可能性があるような、トゲトゲした感情が芽生えている。イベントも終わったら皆あっという間に帰ってしまい、誰とも話すことはなかったので、なんともスッキリしない気持ちで帰宅した。

後で数少ない日系人のクラスメートの親にばったり会えたので、2人で涙目になりながら抱擁して、ようやく色々な話をすることができた。

選挙直後は恐ろしいと思いながらも、これからの動きに目をそらさないよう、しっかり見ていこうと、選挙結果に衝撃を受けすぎて全てをシャットダウンしてしまっている旦那を尻目に一生懸命ニュースを読んだりしている。そこにきて今回のこの事件が起きて、少しというかだいぶ参っている。頭がシューシューしている。これからどうなるかわからない大統領府というものとはまた別の恐ろしいものが開いてしまったことを身をもって感じてしまった。

人種差別や女性差別の件は、トランプのレトリックだ、これから色々手腕を発揮してくれるかもしれない、と希望的観測を述べる日米のメディアや有名ブロガーやコラミストの文章や発言にあたってもしたり顔で何を言う、と怒りばかりがこみ上げてくる。少しでも自分の子供の安全や人権を踏みにじるような状況を作り出して生み出すグレートなアメリカって何なんだ。そんなものはくそくらえ。

なんだか歴史的悲劇映画の冒頭部分にでもいるような気分である。

この1週間こんな感じで先週とは世界が全く違うように見えるようになった。まだ感情的に収まっていない部分が多いというか、まったく収まっていない怒り心頭中であるので、まずは落ち着く必要がある。また自分の中で色々処理して、家族とも話し合い、これからどうしていくのか定めていくことになるだろう。とりあえずは、今の状況はこんな感じということで。