愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

 出産クラス


【妊娠28週目】


ここらへんになってくると、自分が何週なのかあんまり気にしなくなってきた。最近の小さいさんはどんどん存在感を増している。16週ぐらいの時には、気をつけないと気がつかないぐらいの強さでぽこぽこ蹴っていたのに、それがどんどん軽いジャブになり、ストレートパンチになり、今ではぐおん!とフックいれてません?という位な勢いで蹴り込んでくることも多数。


お腹の下のほうでずーっとしゃっくりをしていることも多い。しゃっくりの時は、定期的にお腹がびくん、びくんとなる。今はへその緒を通じて栄養も酸素も取っているけれど、出てきたら肺呼吸することになるので、その練習なんだそう。こればっかりは、わっ!と驚かせても止まるものでもない。


この週は、出産クラスに参加してきた。出産予定の病院でやっているもので、週末に、朝9時から4時ぐらいまで。こんな長いクラス、聞いてられるだろうか・・・と心配になったが、「インタラクティブなクラスなので、動きやすい服装で、まくら2個とブランケットを持ってきてください」とのことであった。結論からいうと、このクラスは行ってよかったし楽しかった。大学院時代も含めて、これだけ今の自分のニーズと興味に即したクラスで、全く飽きずに、全ての情報を吸収できたクラスって、人生で初めてかもしれない。


クラスには多分7組ぐらいのカップルが参加。先生は新生児専門でナースをやっていた人で、今は主にこういうクラスを受け持っているのだそう。参加者の名前を一度で全部覚えちゃったところからして、コミュニケーション能力の高い人だということがわかる!


立会い出産が普通のアメリカだけれども、旦那さんは出産の瞬間を見ていればいいというものでもなくて、出産に至るまでの長い陣痛のあいだ、奥さんをどうサポートできるのか、チームとしてどうやって出産を乗り切るのか、「戦略」を一緒にたてていかないといけない。これは日本でも同じだとは思うけれど、陣痛が始まったところですぐ病院に行けばいいわけでもなく、破水したか、陣痛の間隔が5分おきにならないと病院は受け入れてくれないし、病院に入れても、子宮口が完全に開くまでは何もできないので、病院の人がつきっきりで手厚く看てくれることはまーったくあてにできない。出産までの時間をどれだけ快適に過ごせるかは、旦那さんのサポートにもかかっているのであった・・・。


私も、出産のプロセスや多少の細かいことについては、本やインターネットである程度わかっているつもりだったけれど、もっと大きな全体像・流れについてはきちっと把握していたかどうかといえばそうでもないし、なによりも自分はわかったつもりでも、旦那にそれをきっちり共有してこなかった。また男の人って、奥さんに出産の時のことをあれこれ言われるよりも、お医者さんとか、「オーソリティー」に言われたほうが、意味もなく納得したりするもの。そういった意味でも、このクラスはとっても有益だった。


最初は陣痛のことや、赤ちゃんがどうやって出てくるかの話。赤ちゃんは通常頭が先に出てくるのだけれど、これが凄い。どういう自然の摂理になっているのか、せまい産道を通れるように、まずは自分の顔を下に(つまりお母さんのお尻の穴を見るような形で)顔を出し、でも次の瞬間に、くるっと向きを変えて、肩を横にして全身が出てくるのだそう。


その後、実際の出産シーンも含めたビデオ。出産した3人の人のケースを取り上げて見せてくれたのだけれど(麻酔を全く使わずに出産した人、麻酔じゃないけれど痛み止めを使った人、全くの無痛分娩をした人)これがやっぱりすごかった!出産シーンももちろんなのだけれど、なぜか登場する人みんな恐ろしいほど肉感的な人で、そんな人達がもう全部全開でいきんだりしているので、そっちのほうがビジュアル的にトラウマになったかも。笑。後で思ったのだけれど、やっぱりあまりアトラクティブな人をモデルとしてしまうと、ちょっとポルノ的要素が入ってしまうからだろうか・・・(笑)


先生が説明してくれた通り、どの赤ちゃんもまずは顔を下にして出てきたと思ったら、ものすごい勢いでぐるっと回って肩を横にして出てくるのには感動した。うへぇーと思って見ていても、最後に赤ちゃんがばーっと出てきた瞬間は、3回とも全部勝手に涙が出てきてしまった。他のカップルを観察していたら、奥さんはみんな同様にこっそり涙を拭き、旦那さんは初めてみる出産シーンを前に奥さんにしがみついている人も数人(笑)


それにしても鼻からスイカとは良く言ったもので、本当にあんな大きさのものをひねり出せるのかなぁ・・・。出産の痛みもだけれど、私が一番ビビっているのは、出口が裂けること!!10年ほど前は、会陰切開といって、裂ける前にちょっと切っておくということもしていたそうだけれど、リサーチの結果、自然に任せたほうが裂けた後の治癒が早いことがわかったり、人によっては先に切ったよりも多く裂けてしまうことがあったりするらしく、今ではやらないんだそう。裂けるのだけは、絶対イヤー!でもかなりな確率でそうなるらしい。ううむ・・・。対策としては、オイルなどでマッサージをして皮膚の伸びをよくしておく、出産の時もそういうマッサージをしながらゆっくり出す、そして出産の体勢も色々あって、横向きに寝ての出産にのぞんだほうが、重力がそっちにいかないので裂けにくい・・・・などなど。でもこればっかりはストレッチマークと一緒で、どうがんばってもなる時はなるらしい。ううむ、ううむ。


授業の半分は、床にマットをしいて、旦那さんと二人で寝っ転がり、色々な体勢で陣痛の痛みを乗り切る呼吸方法を習ったり、お互いにマッサージをする練習。陣痛がピークになっても、実際に痛みがぐわーっと来るのは1分間で、その後次の陣痛が来るまでにはまた少し間隔が開くので、とにかくこの1分間の痛みをやり過ごして、そしてしばしの休息の間に気持ちをリセットする・・という作業が大事になる。とにかく自分が気持ちよく過ごせるような準備をしておくことが大事で、ビデオで見た人達も、旦那さんにマッサージしてもらったり、暖かいタオルをあてたり、ジャグジーに入ってみたり・・・と色々していた。目・鼻・耳・口・体全体など、五感にうったえる色んな方法を準備しておきましょう・・・ということで、我が家ではポカリスエットを凍らせてかき氷にしたものや、GSP(私がハマっている男前の格闘家)が戦っている写真(弱気になったときに闘志を忘れないため)、iPodに出産用リミックスを用意しておく、お気に入りのアロマオイルを持っていく、などを準備することにした。


実際にこういう対策を講じるのと、講じないのではどれだけ違うかを比較するため、先生がみんなに氷を配ってくれた。これを手に持って、一分間、特に何もせずに耐える。結構ひりひりじーんと痛い。次に、バックグラウンドミュージックをかけ、電気を少し暗くして、好きな体勢をとり、習った呼吸法で息をしながら、また氷を持って1分間耐える。面白いことに、この一分間はあっという間で、途中で意識が痛みとは別のところに行くのがわかった。しかも実は先生、みんなを騙して今回は一分ではなく二分間私たちに氷を持たせていたらしい。


妊婦は陣痛に七転八倒して大騒ぎするもんというイメージがあったので、こういうことを旦那と二人で実践して、少しでもコントロールしたり乗り切る方法があるんだ、ということがわかっただけでもすごく安心した。旦那も最初はビジュアル面でびっくりしていたみたいだけれど、私がこれから乗り切ろうとしていることがどういうことが、よくわかってくれたみたいだし、最初は怖いと思ったけど、今はしっかり立ち会いたい、と言ってくれたのでよかったっす。あ、あと忘れてはいけないのは、出産の間中、病院は妊婦に対しては色々世話をしてくれるけど、旦那さんは患者ないのでほとんど何も出てきません。なので、事前に旦那さんの食料を確保しておくことが大事!我が家はおにぎり用意しておいて持っていこう!


クラスでやったことを全部は書かないけど、他にも麻酔のこと、帝王切開になった時のことなども(帝王切開の出産ビデオも見た!)。私は痛みにはものすごいビビりなので、絶対無痛!と思っていたのだけれど、不思議なことに今回のクラスをとったあと、少しその気持ちがゆらいでしまった。でもこれは、見せられたビデオがちょっと意図的だったかもしれない・・・。麻酔無しで出産した人は象みたいにデカイ白人の女の人だったのだけれど、やはりそれなりにちゃんと準備をしていて、色んな体勢をとったり、陣痛の間も色々な対策を講じたり、病院のスタッフともきっちりコミュニケーションを取っていたのだけれど、無痛分娩の例として登場したのは黒人のシングルマザーで、バスを乗り継いで病院に行き、あまり準備も知識もないまま麻酔を使い、立会う予定の妹ともちゃんと段取りをつけていなかったので、妹が渋滞に巻き込まれて遅刻、痛み対策も特にとらずに、結構いきあたりばったりで色々やっている感じがあり、そういう余計な部分でネガティブなイメージがついてしまったかも。クラスでも、自然分娩については何も言わないのに、麻酔をすることによる利点と欠点についてはとうとうと述べられたし。


実際に麻酔が必要になるか、自分がどれだけ痛みに強いのかはその時になってみないとわからないし(スピード出産だと麻酔がきかないうちに出てくることもあるし)、出産後の体力温存を考えるとやっぱり無痛だとは思うけど、ちょっと考えてしまった。しかしそれにしても、だんだん現実的になってきたぞ!