愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

How Soccer Explains the World by Franklin Foer


中国で開かれたサッカーの試合で日本チームにブーイングの嵐、政治的な問題になるかも云々、という話があったけれども、サッカーほど自分達のアイデンティティや所属を強く意識するスポーツはないかもしれない。アメリカでもオリンピックでイラクのチームが頑張っている、というのはかなり感動的なトーンで報道されていたし。そんな時にタイミングよくダンナが見つけてきた本。


ベルスコーニ首相がオーナーであるACミランの話、ウクライナに売り飛ばされたナイジェリアサッカー選手の話、グラスゴーに根深く残るカトリックチームへの偏見、歴史のかなたに忘却された伝説のユダヤ人サッカーチームの話、イランの民主化と女性のサッカー観戦の話、何人であろうとチームに入ればカタロニアの仲間となるFCバルセロナの話などなど、サッカーを通じてグローバル化の理論を論じるという難しい本というよりは、色々な国を著者が回って取材してきたエピソードが満載で気楽に読める感じの本。


一番興味深かったのは、セルビアイスラム教徒迫害にサッカーと軍隊的組織となったフーリガンが使われたという意外と知られていないエピソードの部分。最後にはサッカーチームのオーナーに納まるカリスマ犯罪者アルカン氏の話がとても衝撃的で面白い。そしてもとナチス将校とユダヤ人の看護婦さんの間に生まれるという複雑な背景を持ち、軍隊での経験も生かしてプロフェッショナルにケンカを組織すると思えば、グラフィックデザイナーとしてシリコンバレーでも働いちゃったり、小説も書いちゃったりする元祖フーリガンのおっちゃんの話も非常にAmusingであった。


グローバル化が進み世界はボーダーレス化されているんだよ〜、なんていわれている。確かにそのおかげで、ベッカムさんがスペインに行ったり、ナカタさんがヨーロッパに行ったり、優秀な選手が世界中のいろんなチームに散らばってプレイするようになったりしている。うちの実家にもJリーグのチームがあるのだけど、うちの近所をブラジル人の有名プレイヤーがママチャリで爆走していたり、ご近所に監督一家が越してきてお友達になったりしたこともあった。そして地元の小学校に通いだしたそこの子たちは完全に日本人になってしまい、「私は日本人だから、いちいちただいまのキスなんかしないの!」といってママを困らせたりしていた・・・。これもグローバル化の影響といえばそうなのかも。でもグローバル化というのは、みんながみんな仲良くおんなし価値を共有しましょうね〜♪ということにはならなくて、サッカーチームそのものは色々なアイデンティティを代表するものになっている。それは国家を代表するもの、だけでは無く、宗教や文化を代表するものであったり、または異なる階級を代表するものであったり。そしてその傾向は無くなるどころかどんどん強まっているのですよ〜、ということを楽しくわからせてくれる本でした。読みやすいのでオススメです。