日もだいぶ斜めになってきてから、えいやっと冷房の効いたアクロポリス博物館を出て、アクロポリスの丘を目指す。
が、入り口に向かって歩き始めた時点で、暑い中歩くのが苦手な小さいさんの雲行きがずいぶん怪しい。白い砂利道への照り返しは確かに夕方に近くなったとはいえ、あまり気持ち良いものではない。ペットボトルの水を頭や背中にザバザバかけて、休んでは歩きを繰り返す。
丘のふもとにある「ヘロディス・アッティコス音楽堂」は今でもコンサートに使われている。創業紀元161年と老舗劇場もいいところだ。この日はオーケストラの演奏があるらしく、オケの面々がフニフニと音出しをしているのが外にも聞こえてきた。私たちが滞在中には、フー・ファイターズも来てコンサートをしていたらしい。
結構急なところを登っていく。西日と上り坂で小さいサンは文句タラタラ、この近辺で撮った写真はどれもすごい顔で写っていた。
アクロポリスの階段とも言えるのかわからない階段は、素材がどれも大理石のようなツルッツルの石。意図的なデザインか、何千年と言う人の上り下りで勝手に磨耗された結果なのかはわからないけれど、ものすごく滑る。時々おしゃれして日傘にピンヒールなんていでたちの観光客もいて、何かの神話みたいにアクロポリスの丘から真っ逆さまに落ちやしないかと期待ヒヤヒヤする。
いくらギリシャ神話にハマったからと言って、アテナの神殿というだけでは上にあがるモチベーションが保てない子供のために、ここはナイアンティックの神様にすがることにして、ポケモンGoを起動する。世界遺産だから珍しいポケモンいるかもしれないよ、と聞き奮い起つ6歳児。
たどり着いたパルテノン神殿は工事中。工事中というか、改装中。いや修復中か。
しかもこれ1975年からやってるそう。ガーディアンの10年以上前の記事でも、あと20年はかかるよと言っているので、多分あと30年ぐらいはかかるんではないだろうか。
行ったら工事中でガッカリ、なんてブログ記事もずいぶん見たけど、戦火や地震や爆破や略奪や、その長い歴史でずいぶん痛めつけられてきたんだから、それくらいは許してやったらどうや!(吉本新喜劇、茂造風に)
法隆寺の柱もこのスタイルを取り入れているという話は、小学校の社会の時に習って、夢殿で見つかったペルシャ伝来の獅子狩文錦とともに衝撃的だった。本物が見れて本当にラッキー。
丘からの眺めも美しい。古代ここからみおろせる風景はどんなだったんだろう。
しかしここ世界遺産はインスタ映えするセルフィーの聖地。命の危険を冒してまで、ピンヒールでこの丘を登るのは、この美しい廃墟を背景にゴージャスフォトを撮るため。立ち入り禁止のロープを乗り越えポージングする観光客には、容赦なく係員のホイッスルが鳴り響く。
ポケモンは、さすがに丘の上だからか電波状況が悪かったが、結構いた、けどレアなものは出てこなかった。ちなみにアテネの街中では、「ガーディ」がよく採れた。「バリヤード」も実は珍しいらしいが、そこらへんにふらふらしているのを2個捕まえた。でもポケモンより、アクロポリスの丘の上にいたこっちの方が、子供も大人もフィーバーした。そう、アテネの街にはポケモン以上に猫がいっぱいいたのでありました。