愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

岸恵子、お巴里と離婚の本

アメリカの図書館にある日本語の本を適当に掴んで読むシリーズ。

 

アメリカの図書館にある日本語の本は、地元の日本人が寄付したものが置いてあることも多いので、海外生活や国際結婚についての本が結構な割合である。前回紹介した本も多分そんな感じで長い間ここに置かれていたんだと思う。

 

今回も掴んだ本は、国際離婚のぼやきやら、海外生活をしている人にありがちな、ああ私はさすらう日本人、的な高揚感や感傷やらが書き散らされたエッセイであった。

 

書いたのは女優の岸恵子

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 特定の年齢層には「君の名は」のマチ子さん。大女優であらせられるが、私の年代だと髪の毛がいつも外巻きにパーマになってた人、位の印象しかない。

 

フランス人の映画監督と結婚しパリに住み、日本とパリを行ったり来たりの生活をされているらしいが、夫が浮気して離婚。そこら辺のことも色々書いてあったが、やはり場所がパリ、相手は映画監督、自分も日本じゃ大女優。なので出てくる固有名詞や環境が豪華でオシャレに聞こえるボーナス付き。前回読んだ80年代ニューヨークのモラハラ変態夫との離婚話と比べると、ニューヨークの話が余計に気の毒に思えてくるのだった。

 

何せ御本人もテンパーメンタルな女優なので、その言動もちょっとプリマドンナだし映画のオファーを受けた話だの、彼女に言い寄ってくる男性の話だの、実際どこまで心を通わせたかはわからないが邂逅したフランスの有名人の話だの、お、おお、そうですか・・・!と思わせるような話もたっぷり。

 

まだ日本人が海外渡航が容易ではない時代にフランスに渡り、日本人も少なかったパリにもで孤軍奮闘した気負いもきっとあるのかなぁ、フランスや自分のバカンス先にやってくる日本人観光客のディスりも所々に入っており、逆に時代だな〜とも思ったり。

 

 日本で女優として培ったものを置き、パリにやってきた彼女。ヨーロッパでも仕事のオファーがあるのにそれはなぜか断り、日本での仕事にこだわる。一方日本人女優を妻に持ったものの、あまり彼女の文化に寄り添う感じではない夫。そんな夫にフラストレーションがたまると、言葉は通じないのに、啖呵と言うか、何かの口上のような芝居がかった日本語を酔ったように浴びせかける彼女。

 

そういうあたりの心の荒れ模様は良いとして、時に荒れるに任せて心のままに書かれるちょっと陶酔的な文章はうぅ、うぅぅ、でもまあこういうのもパリ在住の女優が書くと許されるのかなぁと思ったり。でもそういうのも合わせて、当時の読者は色々興味を持ったんだろうか。手に取った本は版を重ねたものだった。

 

巴里の空はあかね雲 (新潮文庫)

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