世界各国の色んな都市を舞台にした、ノワール小説のシリーズがAkashic Booksという出版社から刊行されています。
残念ながら東京はまだ無いみたいだけど、アジアだったらマニラとかムンバイとか。イスタンブール、ロンドン、もちろんニューヨークやロサンゼルなんかが舞台のシリーズもあります。その数なんと80都市以上。
そんなシリーズの最新版の舞台は、なんとオークランド。
オークランドを始めとする、我が地元イーストベイが舞台となった短編小説集です。
ちょうど地元の本屋でこの本の編集者がやって来ての朗読会をやっているところに遭遇し、ちょっと立ち寄ってみたのですが、朗読している内容が子供の耳にはかなり毒だったので早々に退散(笑)
でもしっかり本は手に入れました。
ノワール小説って、日本語だと暗黒小説とか言われているようですが、イメージとしてはハードボイルド、ミステリー、ミステリーじゃなくてもまあ誰かが死んじゃうような、ちょっとダークな話、といえばいいんだろうか。
私も定義がよくわからない・・・。
この本では現代、そして色々な時代のオークランドとその周辺が舞台となっており、自分がよく知っている通りや街角、お店の名前がじゃんじゃん出てくるので、とにかく読んでいて情景をかなりリアルに思い浮かべることが出来るのがとても楽しかったです。
短編集第一話の舞台は、わが町アラメダとオークランドをつなぐ橋のひとつ、フルーツベールの橋。ここから自殺しようとしているシングルマザーと、橋の管理人との緊迫したような、しないようなやり取り。
そして最終話の舞台がこれまたアラメダで、この街に越してきたカップルが、ベトナム人のお婆さんが大家である、とても素敵な家を借りたことから始まる、人生の崩壊話で終わります。
この他にも、一昔までどれだけLGBTの人達が虐げられていたか、ギャングも多いこの街オークランドを取り締まるOPD(オークランド警察)がどれだけ一筋縄ではいかないか、2YK問題をきっかけに危機を煽ろうとする学生達の話から、今も脈々とイーストベイに続くオキュパイ運動の人達やアナーキスト問題を考えたり。
また私も運転中よく見かける高速道路の高架下に住むホームレスが立ち直ろうとして失敗する話は、実際にホームレスの支援活動をやっていた人が書いただけあって、かなりリアル感たっぷり。
実際にイーストベイ在住の作家達が執筆したこの本、文章のクオリティはまちまちではありますが、この街の背景や歴史、人々のことをより理解することも出来て、一気に読んでしまいました。
とりあえず気に入ったエピソードは、「Waiting for Gordo」という話。Hegenberger Roadを舞台にしたこの話は、警察が極秘に録音したイーストオークランドのヒスパニックのギャング達の会話を書き起こした書類、という体になっていて、車の中で繰り広げられる彼らの会話が、お下劣でありながらかなりウィットに富み、時にはかなりインテレクチュアルなことを言っているのが面白い作品でした。もちろんギャングの会話なので、最後はいい終わり方はしないのですが・・・。