愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

2分だけ見る秘宝

南北朝か唐の時代に描かれた絵巻物「女史箴圖」、大英博物館が所有していて、一年に数週間だけ公開される。日本だったら飛鳥時代、いやそれ以前のものなので、滅茶苦茶古い。そして絹の上に描かれていて、非常にデリケートで光に弱いらしい。なので本当に期間限定でしか見られないらしい。

エジプトのミイラやモアイ像やロゼッタストーンなど、たいてい大英博物館内で混雑している場所は決まっていて、最上階にあるアジア文化の展示などはそんな場所と比べるといつも閑散としたものだけれど、まあ展示エリアに行ってみるとそこだけ長蛇の列が出来ていた。

虫食いも多くて状態は必ずしも良いとはいえず。太古の昔に描かれたこの絵巻物は、各時代の皇帝や商人など色々な人の手に次々と渡り、最後は義和団の乱のゴタゴタに乗じてイギリス軍が略奪。某兵士がイギリスに持ち帰り、絵巻についていた翡翠に価値があると思って博物館に持ち込んだのだそうだ。

実際は絵巻そのものがものすごかった訳だが、大英博物館はそれを25£でお買い上げ。これ今の値段だと3500£ぐらいだそうですよ。今のレートで日本円に換算すると56万円。滅茶苦茶歴史的価値のあるものを、随分安く手に入れたもんだ・・。

大英博物館、我が家では略奪品展示博物館なんて呼ぶこともあるんだけれど、まあふらっと電車に乗って博物館に行き、無料でふらっと入ってささっとこういうのを見ることができるのは貴重ではある。しかし80人近くは並んでいたと思う列の98%は若い中国人(多分学生さんだろうか)ばかりで、本来は自国にあるはずのものを、その国の人達がこぞって見に来ているのはやはり複雑な気持ちになった。

あまりに人が多いので、見ることができる時間は2分までと学芸員に言われ、皆薄暗い部屋で、ガラスケースの向こうの巻物を必死に鑑賞。学芸員があと1分30秒!あと30秒!とかカウントダウンするのもなんともいえず・・。

時代時代で変わっていった所有者がそれぞれ印を押している。

清の乾隆帝が書いたといわれる書。皇帝が絵巻について書いたこういうコメント的書も、巻物の一部として追加されている。1700年代なんてそんなに古くないね、なんて思ってしまう(笑)

特にこの展示は代々的に宣伝もしていないと思うけれど、これだけ人が来たというのも、多分私が想像するより歴史的文化的に重要な位置を占める作品なのかもしれない。耳にブルートゥースのイヤホンを付けて中国人ガイドの説明を聞きながらぞろぞろとやってきた学生風グループも何組もいた。同じガイドさんを2度見かけたので、もしかしたら2分じゃ足りないともう一度並んで戻ってきたのかもしれない。