愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ベルギー旅③ ベルギーのミートボール

あまり下調べせずに向かったベルギー、それでも少しは行ってみたいレストランに目星はつけてはいたものの、寒い、腹減った、子連れ、となるとお目当てのところまで遠征するなんていう贅沢は夢のまた夢。そうでなくてもこう人混みのある場所にいると、もうどこでもいいから入って座りたい、となってしまう。

結局子供の希望もあり、広場近くにあった「ベルギーのミートボール屋さん」に入りました。

Ballekesと言うお店。ブリュッセルに3店舗あります。後から確認してみたらなぜかウェブサイトも何もかも英語なのは、もしかして観光客向けなのかな??

www.ballekes.be

小さめのお店ですが、二階席もあります。まずはカウンターで注文すると、席まで持ってきてくれるシステム。

この料理、正式にはBoulets à la Liégeoiseと言うようです。ベルギーの都市、リエージュ風のミートボール。でもフラマン語ではミートボールはballekes。ボール!って感じで良い響きだ。

このお店では、合挽き肉、チキン、ベジタリアンの3種類から選び、そこに何種類かあるソースを選びます。ミートボールは子供のげんこつぐらいの大きさで、ソースをかけて小さなスキレットで温めて出してくれます。

ソースはトマトソース、ラパンソース(ウサギソース・・と言ってもウサギ肉が入っているわけではない。後述)、ベルギーのビールを使ったソースや、マッシュルームのクリームソースなどから選べます。お店の人が一つずつとても丁寧に説明してくれました。

子供はトマトソースのミートボール、サイドにはもちろん、ベルギー名物フリッツを。

大人はマッシュルームのクリームソース、そしてベルギーのトラピストビールを使ったソースを選びました。そのままシチューとして食べても美味しそうな、他のソースと迷ったのですが、このビールのソースがすごく美味しくて驚きました。見た目もサラサラだし、エンダイブがぺろっと入ってるし、もっと水っぽい味を想像していたら、見事に裏切られました。マッシュルームも香り高く、どれもお味は複雑で深い。

ミートボール自体は、ちょっとパサっとして固めかな、と思いましたが、とにかくこのソースがどれも美味しくてとても感動。イギリスのご飯もまずくはありませんが、やはり大陸ヨーロッパには勝てないわ!なんて勝手に思った次第。

ベルギーなので当然ベルギービールが置いてあります。あまり飲めないので、パパのを少しかすめ取るだけですが、これも美味しかった。

うさぎのソース

リエージュ風のミートボール、ミートボール二つに、「うさぎソース」をかけるのがオリジナルのレシピのようです。玉ねぎ、ブラウンシュガー、お酢、カラント(干しぶどうみたいなもの)、そしてリエージュシロップと言う、ジャムやデーツを煮詰めて作った濃いシロップを混ぜて作る甘酸っぱいソース。

うさぎ(lapin)と名前がついているけれど、これっぽっちもうさぎの肉(?!)は入っていません。これは単に「ジェラルディン・ラパン」さんと言う人の名前をとってつけられたからだとか。

彼女はリエージュ郊外で税収官をしていた、アーネスト・ラパンと言う人の奥さん・・と言う説明はネットに出ていたのですが、なんだか詳細は不明です。彼女が考案したソースってことで、いいのかな?

ちなみに夫のアーネスト・ラパンさんは1922年まで存命だったと言う記述があるので、そこまで大昔の人ではない。この人のことについても、ミートボールと言うキーワードを除いて調べてもパッと情報は見つかりませんでした。が、「オペレーション・クロンシュタッド」と言う本の脚注に、アーネスト・ラパンと言う名前が出ていました。

この本は、第一次大戦も終わる頃の1919年、ロシアで囚われの身となったイギリス人スパイを、MI6(007の勤務先!w)が救出すると言う、映画さながらの出来事をまとめた本なのですが、この本のある脚注にぺろっと、「この(どの?)資金の大半をユダヤ人の金貸し、アーネスト・ラパンから借り入れたようだ」という記述がありました。税収官、金貸し。うーむ、同じ人かな?

この本、Google Booksに目次と脚注の一部などが掲載されていたのが検索に引っかかっただけなので、実際のコンテクストは全然わからないのですが、これがミートボールのラパンさんと夫だとすると、彼は1922年、54歳で亡くなっているので、ありえなくはないですね。ベルギーを通過してロシアに向かうことも十分に考えられますし。

あとふと思い出したんだけれど、家にあるシリア系ユダヤ人の料理本に、タマリンドや砂糖、ダークチェリーを使った甘酸っぱいミートボールのレシピがありました。Kebab Garazと言うもの。このレシピに限らず、ミートボールの甘酢ソースがけ的なレシピ、各地のユダヤ系料理として食べられています。

この本の注釈通り、ラパンさんがユダヤ人だったなら・・ベルギーの名物料理も、ユダヤ系のレシピが下敷きになってるってことなのかもしれません。わー!

話も面白そうだし、このスパイ救出作戦本、ちょっと読んでみたくなりました。

話がミートボールからずいぶん飛びましたが、このミートボールの友愛団体もあるそうで、よりオリジナルに忠実なレシピを再現しているレストランを表彰したり、色々しているようです。

面白いのは、これ、本当にフリーメーソン的な友愛団体に仕立て上げているところで、グランドマスターとかがいたり、ぎょうさんな中世風の衣装を着て活動しているよう。よかったらウェブサイトを見てみてください。レシピも載っていたので、試してみようかしら。

www.gayboulet.be