愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

世界一うらやましい職業も楽じゃない


我が家の中で、「世界一うらやましい職業を持つ人」と言われているアンソニーボーデンさん。元シェフの彼が、世界中を旅し、そこのものを食べ、色々な人に会い、自分の経験を文章にする・・・旅も食べるのも好きなので、できるものならそんなお仕事をいただきたい、と思ってしまいます。この本は、そんなボーデンさんが、以前フードネットワークでやっていた旅番組「A Cook’s Tour」のエピソードを文章にしたもの。


A Cook's Tour: Global Adventures in Extreme Cuisines

A Cook's Tour: Global Adventures in Extreme Cuisines


日本に行ってふぐを食べてみたり(毒があるというのでもっとガツンとマッチョな味を期待してたみたいだけれど、あまりにあっさりしていてちょっとがっかりしたらしい)、子供のころ夏休みを過ごしたフランスの田舎を弟と再訪してみたり(なつかしさでいっぱいになると思っていたらそうでもなく、なんだか逆にむなしくなった・・それはそこに、死んでしまったお父ちゃんがいなかったから、ということに気づいて、Fuck, I miss him、というところはなんだかちょっとほろっときた)、恐ろしい思いをしていくカンボジアの辺境、フレンチランドリーでの至福の経験、そしてこの本の中で3回もエピソードが出てくる、ベトナムなどなど・・・(本当にベトナム好きなのねー。ベトナムに家も買うらしいし)。


自分の旅の経験を、ちょいと毒舌に、ちょいとシニカルに書きつらねることで生活が成り立つなんて、うらやましすぎるけれど、やはりそこはお仕事。テレビカメラが入っているので、「番組的に面白くするため」、プロデューサーから行きたくもないところに行かされたり、食べたくもないものを食べさせられたり、カメラに向かって何度もシーンを取り直したり、しゃべったり、食中毒でひどい目にあっているところも、カメラに撮られたり・・・と、「テレビに出るのがいやな理由」みたいなエピソードもあって、そりゃやっぱり仕事だし、テレビというフレームワークの中での旅だから、そりゃ好き勝手にのんびり旅するのとは違うのは当たり前でしょう、とは思うものの、そんなことまで素直に書いてある、ボーデンさん2作目のエッセイ。


常にどこかに行ってしまいたい衝動と、ひとつの場所に落ち着いてそこに根を張りたい気持ちと、非日常の興奮と、日常の心地よさとのバランスがたまに崩れてうわーっという気分になるときがある。いつもどこにいても、なんとなくいつも傍観者の目で物事を見てしまうので、いつもふわふわした気分で生活している気がする。でもそんなのを文章にして生活できる人は、やっぱりいいなぁ。