愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

タイの本


Bangkok 8: A Royal Thai Detective Novel (1) (Vintage)

Bangkok 8: A Royal Thai Detective Novel (1) (Vintage)


タイといえば、微笑みの国、元義理姉の出身国、そしてid:akuninさんが住む国(笑)。タイ料理はよく食べるけれど、行ったこともないし、実際のところは知っているようでぜんぜん知らない国。


こちらは、そんなタイ、バンコックを舞台にした小説。タイトルのとおり、バンコックが舞台で、主人公はタイ人・アメリカ人のハーフのタイ警察の警官、ソンチャイさん。彼と、彼の親友のもう一人の警察官は、賄賂を受け取らない、この界隈では唯一「クリーン」な警官。といっても、別に彼は正義の味方というわけでもない。彼の生い立ちはとっても複雑で、ドラッグもやるし、何かいつもメランコリックな感じのキャラクター。


バンコックでアメリカ人の海兵隊員が、蛇まみれになって殺される(!)という事件が起こり、英語も堪能なソンチャイさんも捜査に参加、FBIやら何やらもまきこんで、てんやわんやの大騒ぎ・・・というのがお話(かなり適当なまとめ)。話に登場するのは、売春で生計を立てる人たち、腐敗した警察、そこに群がるガイコク人、性転換した人たち、少数民族カレン族・・・と、なんとなくステレオタイプ的ではある。


読んでいて面白いなと思ったのは、実際そうなのか、これが小説だからからなのかはよくわからないけれど、この小説に出てくる登場人物達、いろんなバックグラウンドの人が出てくるんだけど、彼らの考え方とか、行動とか、彼らが住む世界や社会に、とても不思議な形で仏教の考えとか、スーパーナチュラルなものが隣り合っているということ。日本でも生活の中で色々縁起担いだりお参りとかしてそうだけど、そういう形式っぽいものとも、ちょっと違う感じ。


例えば、主人公はある登場人物のひとりを見たとき、その人が前世で自分の双子の兄弟の片割れだ・・ということを「思い出し」たり、相手もそれを「思い出し」たり、生きている人と死んでいる人の境界線もあまりない感じで、普通に死んだ人と会話したいたり、幽霊が出てきたりする。といっても、そういうオカルト的な(?)ものがこの小説の主軸になっている、というわけでもなくて、それは当たり前みたいな感じでさらっと書かれている。


まあこれは小説だから、もちろん実際にはこんなやりとりが普通にされているとは思わないけど、そういえばタイ出身の元義理姉のお父さんが、亡くなった奥さん(元義理姉のお母さんね・・)と今でも一緒にご飯を食べたり、普通にそこにいるものとして会話をしているっていう話を思い出した。結構そういうのが普通なんだよーって。


作者はイギリス人なんだけど、香港で長年弁護士をやっていた人らしい。香港を舞台にした小説もあるそうな。タイは知らないところなので、読んでいてもふーん、って感じだったけど、香港版のほうを読んだ旦那が、なんとなくむずむずするなぁといっていたので、もしかしたらこれもそんな感じなのかもね。メモワール・オブ・ゲイシャみたいな感じ?