愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

音楽とカラダの関係


音楽家のための「ボディマッピング」のクラスに週末2日かけて参加した。スポーツ選手と同様で、楽器を演奏するのも、歌を歌うのでも、ステージで演技をしたり踊ったりするのも、すべて自分の体を酷使する作業であることには変わりない。長時間不自然な格好をしたり、体の一部に無理な力をかけたりすることが原因で、歌手の人が急に声が出なくなったりすることもあるし、ピアニストが腱鞘炎になったり、フルーティストが腕の感覚をなくす、なんてこともある。


ただ、そういうことって、ゲイジュツをやる上では避けられないリスクなのかなぁと無意識に思っていて、演奏と心・体の関係なんて、ほとんど考えずにきていた。でも、人によっては痛みがひどくて音楽家としてのキャリアが閉ざされてしまうことだってある。


私は慢性的な痛みはないけれど、コンチェルトとかを演奏すると、長いものでは30分以上フルートを吹きっぱなしになるわけで、そうすると首から腕から手首から、下手するとあちこち痛くなったりする。指を早く動かさないといけない曲になると、気分もわぁぁーっとなって、変なところに力が入ってしまって、演奏し終わったら体がガチガチに痛い、なんてこともある。


あとはステージに立って、緊張してしまって、手が震えたり、呼吸が浅くなったり、最悪の場合どこかに力が入って音さえちゃんと出なくなる、ということもたまにはある。練習の時には完璧だったのに〜!何が違うの?と思うこともあったりする。それを精神力の問題とかで片付けちゃう先生とかも昔はいたけれど、練習の時のベストな状態と、ステージの上で緊張したときの状態では、体のどの部分の何が違うのかを認識して、その違いを意識的に直せるようになれば一番いいわけで、そのための手法として、「アレクサンダーテクニック」というのがある。アメリカでは特に演劇学校では必須なんだそうで、元ミュージカル女優の友人Lちゃんも昔やったといっていた。


私が参加したクラスは、このテクニックの流れを汲んだ、「ボディマッピング」というもので、『演奏による怪我や故障』を防止すると同時に、「自分の体を正しく使ってベストな演奏するためには、自分の体を正しく理解することが大事なのです!」という点に焦点を置いているので、2日間、演奏そのものよりも、人間の骨格から筋肉、神経の構造、呼吸のメカニズムといった、人体の構造について、そしてこれらを意識しながら体を動かしたり、使ったりすることについて、みっちり教えてもらった。


クラスは先生のお宅にて。お邪魔したお宅のリビングには、ヨガマットやバランスボールのほかにも、人間の骨格標本がどかーん!と陳列されていて、これだけ見ると誰も音楽のレッスンだなんて思わないだろうなぁ、という感じ。


こちらがいただいた教科書・・・・これは音楽というよりは、ちょっと医学の授業っぽい?? このクラスは2人の先生が教えてくれたのだけど、そのうち一人は実際に解剖学の授業を取ったりしたんだそう。ひょー!


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このクラスに参加したのは、私以外は全員音楽を何かしら仕事にしている方々で、特に大学で教えている人が多かった。中には中西部からわざわざ飛んできた人も。フルート3人、声楽1人、バイオリン1人。そしてみんな私の両親かそれ以上の御歳の方々ばかり・・・むむむ。実際に膝が痛い、腰が痛いと訴える方も数名いたが、ここで学んだことを自分の授業にも取り入れたい、という方々ばかりで、何だか私一人浮いていた気もしないではない・・・・。質問も、教える側に立ったものばかりだったので、私はなんとなく場違いな感じもした・・・。でもオハイオからやってきた講師の先生がとてもパワフルでナイスなおばちゃまで、私にもいろいろ気を使って、話をふったりしてくださったので感謝。


自分の関節にシールを貼って動きを確認してみたり、自分が考えている背骨の絵を描いてみて、実際とどれだけ違うのかを見てみたり、いろんな呼吸方法を試してみたり。特に呼吸は、吸うことにばかり気を使っていたけれど、体から空気がなくなるまでじっくり吐くことにも気を使うようになったら、すぅーっと空気が体に入っていった。おお!


実際にフルートで曲のフレーズを演奏してみると、確かに習ったことを意識して体を使うと、よく言われる「腹筋のサポート」=「下っ腹をふんじばる」をしなくても、どこに力を入れることもなく、高音がフォルテで出た。おお!


実際に自分の体を常に意識して、良い状態に体を矯正していくのは、長年の習慣もあるからなかなか難しいかもしれないけど、なかなか面白い経験だった。歳をとっても、演奏はし続けていたいしね。意識してリラックスしていこう!