愉快的陳家@倫敦

ロンドンで、ちょっと雑だが愉快な暮らし。

ロンドンの小学校のこと。

家探しの次は、学校探しの話。

子供がいると、どこに住んでもいい、というわけにもいかないのが辛いところである。やはり公園があったり環境がいいところ、他にも家族連れが多く住んでいて、子供向けの色々なアクティビティも充実しているところ、そして何より、学校が良いところ・・と色々条件が出てきてしまう。

ベイエリアでロンドン出身のイギリス人と話をした時には「ロンドンの公立はどこもひどいから、私立に入れるの一択でしょう」とかなりの極論をいただいてしまったが、そういえば「良い学校」って、どういう学校を指すんだろう、と考えてしまう。

テストの点数がいいところ、勉強以外にもいろんなアクティビティがあるところ、いろんな文化や背景の子供たちが集まり、みんなで相互理解を深めながらやっているようなところ・・・。一体何を「良い」とするのか、これは思いがけず自分たちの価値観や教育観が試されることにもなる。

イギリスにはOFSTEADという学校の監査評価をする政府機関があって、子供の学力や施設、プログラムなどを4段階評価している。とりあえずそこの評価が一番高い"outstanding"の学校に、みなさんこぞって子供を入れたがる。まあ一番わかりやすい指標ではある。

あと面白いのは、イギリス国教会カトリックなど、宗教系の公立校が結構あり、そこも人気が高いこと。これは学区内に住む信者がまずは優先されるが、信者じゃなくても入れる枠もあったりして、ムスリムだけどイギリス国教会の学校に行ってました〜、なんていう人もいたりする。

結構こじんまりしていてアットホームなこと、勉強もきっちりやる感じのところが多く、地元の不動産屋さんは「教会系の学校はやはりモラルが高いからね」と言っていた。そんな感じなので、私達の地元でも教会系の人気はすごく高い。そんなに熱心な信者じゃないけど、子供の学校のために教会に頑張って通う人もいるらしい。

ロンドンはboroughと呼ばれる「区」的な自治体に分かれているので、学校に空きがあるかどうかも、そこの教育委員会に電話をして確認する。当然ながら評価の高い小学校も宗教学校も全部いっぱいで、今空いてるのはここですよ、と教えてもらった学校はどれも評価が2番目の"good"のところばかりであった。

入学申し込みは、とりあえず第4希望ぐらいまで書けるので、とりあえず評価の高いところを優先的に書いておいたが、結局我が家から一番近いが評価は"good"だった学校に、9月から小さいさんは通うことになった。宗教系の学校は、今のところウェイティングリストの2番目ぐらいらしい。

この"good"と"outstanding"の学校の差は実際どれだけあるのか。今回学校選びについてはイギリス人ママが集まる掲示板などでも色々質問してみたのだが、どうもハッキリしなかった。イギリス人ママ達とのやりとりも面白かったので、また別に書いてみようとは思うが、OFSTEADの評価が高いともうそれで手放しで安心して子供を通わせている感じもあった。子供が通うことになる学校についても、あまり良くないという話も聞いた、という人もいたが具体的に何が、となると何も出てこなかったり。

で実際にイギリスの学校が夏休みに入る数日前に学校見学をする機会があり、子供と行ってみてびっくりした。

評価がAだろうがBだろうが、イギリスの学校、アメリカより全然良い。

まずは施設が素晴らしい。外からみると築100年以上のドロドロのお化け屋敷かホグワーツのようにも見えた校舎だったが、中はモダンに改装されていて明るくとても綺麗。外から中が全然見えなかったのは、セキュリティがそれだけしっかりしているからで、門はがっちりしまっていて誰でも入れるわけではない。変な話、イギリスで学校内での銃乱射を心配する必要がないのも嬉しいが、子供が通っていたアメリカの学校よりもそこらへんはしっかりしていた。

保護者が学校内に入るときも、顔写真をとりサインをしバッジを発行してもらうのだが、シリコンバレーの会社で使ってるのと似たようなシステム。

校庭も外からは想像できないほど広く、イギリスらしい素敵な庭もついていた。休み時間になるとスピーカーを出して先生が音楽をガンガンかけ、走り回りたくない子のためにアートや手芸のテーブルも用意される。

授業はクラスごとだけれど、数学特別ルームがあり、進み具合が早い子、遅い子はそこに行って個別指導を受けている。実はカリフォルニアの算数、イギリスのカリキュラムより遅れているので、小さいさんも多分ここにお世話になるのではないかと思われる。

他にも庭に出て、iPadを前に先生とマンツーマンで何かをやっている子もいた。

カウンセラーも常駐していて、この部屋に行けば家のことでも学校のことでも、何か心配ごとや嫌なことがあったらなんでも吐き出していい、という部屋もある。

クラスは担任と副担任の2人体制で教室に必ず先生が2人いる(!!!!!)

学年によってクラリネットやバイオリンなど、一つの楽器をマスターする(!)。放課後にピアノなどのレッスンを受けることもできる(!!!)。

体育でプールの授業があり、泳ぎ方も覚えられる(!!!!!)。

日本でいうところの3年生から、フランス語の授業もある(!!!!!)。

放課後のクラブが色々ある。学期ごとに先生が自分の興味に合わせて、スポーツやダンス、読書やアートなどのクラブ活動を受け持ってくれるそうな(!!!!!)。

プールの授業や放課後のクラブなどは日本の学校では普通にあるかもしれないが、アメリカの公立校ではまず考えられなかった。小さいさんがアメリカで通っていた小学校は、地元でも一番評価の高い学校ではあったが、いかんせんアメリカの教育予算の問題や教師のサラリーの低さの問題は深刻で、そんなことができる余裕など一つもない。まず先生が授業時間以外に何かする、ということが考えられない。

色々足りない分はPTAが資金を集めておぎなっていて、例えば勉強が遅れている子のための補助の先生を雇うための資金も、PTAが出していた。さらに図画工作や体育の一部の授業は親がボランティアで教えていたりもする。毎年色々ファンドレージングイベントがあって、そこで数百万円単位のお金を集めていたから凄かった。逆にそういう経済的余裕がない家族が多い学区になるとそういうわけにもいかず、学校間の格差は広がるばかり。うちの学校のPTAは集めたお金の一部をそういう学校に回してあげたりもしていた・・。

と話は飛んだが、そんな環境から来た我が家にとっては、イギリスの小学校はものすごくパラダイスに見えて、うわー、ふわー、すごーい、ととにかく感心感動して帰ってきてしまった。イギリスの学校も教育資金難などの問題はあるのかもしれないが、それでもこれだけ出来ている。まあアメリカという国の仕組みからして、政府が色々手厚くやるような感じではないのもあるが、それにしてもアメリカの教育問題は根が深いのかもしれない・・・。

来週からここに通うことになった小さいさん。制服もそろえ、準備は万端。また通い始めるとわかることも多いと思うので、小さいさんの感想も楽しみである。