アメリカの図書館にある日本語本を掴んで読むシリーズ。
マッカーサーの秘宝に関するミステリーと思いきや、悲しき戦争ヒロイン的要素も満載の小説だった。
終戦直前、帝国陸軍がマッカーサーから奪った時価二百兆円に上る財宝が極秘裏に隠匿された。それは、日本が敗戦から立ちあがるための資金となるはずだった。そして五十年後、一人の老人が遺した手帳がその真相を明らかにしようとしていた―。終戦時の勤労動員の女生徒たち、密命を帯びた軍人など、財宝に関わり、それを守るために生き、死んでいった人々の姿を描いた力作。(Amazonより)
この悪役と闘うのだなと思ってずっと読んでいた登場人物の立ち位置がくるっと変わったり、 色々なキャラクターが出てきてとっ散らかった感はあったものの、これは映画になっていそうな話だな、と思ったら実際になっていた。
私が子供のころは、まだ戦後40年ぐらい。中国残留孤児が人民服を着て来日して、孤児の親もまだ生きている人が沢山いて、語られる戦争の話もまだ生生しく、とにかく戦争関連の話は残酷で恐ろしく悲しかった。
学校で見せられた映画「ガラスのうさぎ」は今でもかなりトラウマ。
でも戦後ももう70年近く、戦争の記憶もどんどん遠くなる。そのせいなのか、この本も読んでいて、舞台は終戦間近の日本ではあるけれど、昔の記憶にある、戦中を題材にした作品特有のおどろおどろしさのない、何となくツルッとした空気感が印象に残った。
これはもしかして、戦後生まれの世代が、戦争という題材を扱うようになったからなのかもしれない。
それが悪いという意味ではなくて、この小説のような話って、やはり戦中を生きた人は書けないんじゃないかなという気がする。
子供の頃に見た戦争を題材とした話特有のオドロオドロしさは、戦争を経験した人の個人的な思いや後悔やトラウマやいろんなものが実際噴出していたのだと思う。
でもこの話は、戦時中ならではの悲劇風味はあるものの、その視点は「戦争は悲惨、戦争ダメ」ではなくて、終戦前だがすでに日本の復興、という先の部分に向かっている。
しかし勤労動員の女生徒達の結末は、読んでいて涙が出るというよりは、あーあ・・時代だからとはいえ、あーあ・・・と思ってしまった。
「そういう時代だからこうなった」という理由の結末って、これからの時代にもまた出て来ると思うから、そこらへんは美化したくないし怖いなと思うばかり。